グアーガム分解物は 透析患者の腸内細菌叢を改善し尿毒症物質を低減する  ~第24回・25回 日本病態栄養学会年次学術集会で発表~

太陽化学株式会社のプレスリリース

兵庫県立大学(学長:太田 勲)環境人間学部 田中 更沙助教、太陽化学株式会社(本社:三重県四日市市、代表取締役社長:山崎 長宏)らによる研究グループは、グアーガム分解物は透析患者の腸内細菌叢を改善し尿毒症物質※1を低減することを明らかにし、1月28日~30日に国立京都国際会館およびWEBのハイブリッド形式で開催される第24回・25回 日本病態栄養学会年次学術集会で発表します。

1月30日(日) 一般演題口演o-317
発表演題:「透析患者における尿毒素物質に着目した水溶性食物繊維摂取の影響」
田中 更沙1) 2)、井貫 雅子2)、橋本 渚1)、安部 綾3)、小関 誠3)、坂上 元祥4)、伊藤 美紀子1) 2)

1) 兵庫県立大学 環境人間学部 食環境栄養課程
2) 兵庫県立大学大学院 環境人間学研究科
3) 太陽化学株式会社 ニュートリション事業部 研究開発グループ
4) 神戸松蔭女子学院大学 人間科学部 食物栄養学科
https://www.eiyou.or.jp/gakujutsu/index.html

1. 研究背景について
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease; CKD)は腎機能が徐々に低下していく病気で、進行して末期腎不全に陥ると透析治療が必要になります。日本では2019年時点で透析治療を受ける慢性腎臓病患者数は344,640人(国民366.1人に1人)であり、有病率は台湾に次いで世界2位と多く、国民の健康に重大な影響を及ぼしています。腎臓病の主な発症リスクは糖尿病、高血圧、脂質異常症、加齢などですが、近年、腸内細菌の関わりにも注目が集まっています。透析患者において腸内細菌叢の乱れであるDysbiosisがみられることや、腸内細菌は尿毒素(※1)、慢性炎症、免疫制御などを介して、CKDに影響することが報告されており、腸内細菌叢を対象とした治療介入が必要であるといわれています。
腸内環境を改善する食品の一つに水溶性食物繊維がありますが、これまでに、水溶性食物繊維グアーガム分解物の摂取により、腎機能低下ラットにおいて食事性リン(※2)誘導による腸内細菌叢の変化が抑えられ、尿毒素物質であるインドキシル硫酸(※3)の血中濃度が低下することが明らかになっています。そこで本研究では、透析患者に対するグアーガム分解物の効果を検討しました。

2. 研究方法について
外来透析患者13名を対象とし、通常の食生活に加えて、毎食前にグアーガム分解物を5gずつ、1日あたり15g摂取していただきました。摂取前後で身体計測、採血(一般生化学項目、尿毒素物質)、便調査、腸内細菌叢解析を行いました。

3. 主な研究結果について
水溶性食物繊維の摂取順守率および膨満感や軟便傾向により中止した被験者を除き、8名を解析対象としました。対象者は男性、年齢67.5 ± 1.2歳、透析歴は6.9 ± 1.4年でした。グアーガム分解物の摂取により、一部の被験者では便通の改善がみられましたが、全体としては排便状況の変化はみられませんでした。グアーガム分解物の摂取により、腎機能の低下に伴い上昇する血中尿素窒素(※4)濃度の有意な低下がみられました。また、腸内細菌叢に変化がみられ、有用菌であるビフィドバクテリウム科が有意に増加しました。血中尿毒素物質を測定した結果、フェニル硫酸(※5)は有意に減少し、トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)(※6)は有意差がみられないものの、8名中7名で減少しました。その他の尿毒素は個人差が大きく、有意差はみられませんでした。

4. 考察と今後の展望
透析患者において2週間のグアーガム分解物の摂取は、腸内細菌叢を変化させ、血中尿毒素物質を低減させたことから、腸内細菌叢への作用を介して腎機能を改善する可能性が示されました。しかしながら、排便に対する効果も含め、摂取による影響には個人差があると考えられます。さらに、本研究は対象者数が少ないことから、今後人数を増やした詳細な実証試験が望まれます。

■用語説明
※1 尿毒素
腎臓の排泄機能が低下すると、本来尿から排泄すべきさまざまな老廃物が体内に蓄積する。このうち生体に悪影響を与えるものを尿毒素と呼ぶ。

※2 食事性リン
腎臓の排泄機能が低下すると不必要なリンも蓄積しやすくなる。リンが増えすぎるとカルシウムと結晶を作り石灰となり、骨以外に沈着する異所性石灰化を引き起こす。異所性石灰化は全身の臓器に起こり、血管では心筋梗塞や脳梗塞、心臓では弁膜症や心筋収縮力低下、肺では換気不全、筋肉や関節では筋肉痛や関節の運動制限、皮膚では皮膚のかゆみなどの症状を引き起こす。

※3 インドキシル硫酸
食事由来のトリプトファンが腸内細菌によりインドールに代謝され、さらに肝臓でインドキシル硫酸に代謝される。尿毒素物質の1つで、活性酸素を誘導し、腎障害の進行に関与する。

※4 尿素窒素
タンパク質が利用された後にできる老廃物で、腎臓の排泄機能が低下とともに血液中に溜まるため、血液中の尿素窒素の値が高くなる。

※5 フェニル硫酸
食事由来のチロシンが腸内細菌によりフェノールに代謝され、さらに肝臓でフェニル硫酸に代謝される。尿毒素物質の1つで、アルブミン尿悪化への関与が示されている。

※6 トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)
食事由来のL-カルニチンとコリンが腸内細菌により代謝されトリメチルアミンに変化し、さらに肝臓でTMAOに代謝される。尿毒素物質の1つで、動脈硬化や血栓形成を促進し、心血管疾患に関与することが示されている。

■太陽化学株式会社概要
商号  : 太陽化学株式会社
代表者 : 代表取締役社長 山崎 長宏
所在地 : 〒512-1111 三重県四日市市山田町800番
設立  : 1948年1月
事業内容: 乳化剤、安定剤、鶏卵加工品、機能性食品素材等の開発、製造。
資本金 : 77億3,062万円
URL   : https://www.taiyokagaku.com/

伝統的な天然素材から、最先端技術を応用した新規素材まで様々な食材・工業用途向素材を取り扱うと共に、研究開発型企業として、無限の可能性を秘めた機能性食品素材の創造に取り組んでいます。

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