『ルナルナ』が協力する東京大学の妊産婦のうつ予防に関する研究にて、妊娠前の生理不順が妊娠うつと関連がある可能性が明らかに

株式会社エムティーアイのプレスリリース

 株式会社エムティーアイが運営する、妊娠週数や子どもの月齢に合わせた妊娠・出産・育児に関する情報配信アプリ『ルナルナ ベビー』は、2019年11月より東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野の西大輔准教授、佐々木那津院生らのグループが実施する「全自動化インターネット認知行動療法による妊娠うつ病・産後うつ病の予防」に協力しており、本研究成果の一部が、「Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology」に掲載されました(日本時間 2021年12月9日公開)。
 今回は、妊娠前の月経周期の変動(月経周期ごとの日数の差の平均)が6日よりも長い人は、変動が6日以内の人と比べて、妊娠期のうつの度合いが大きい傾向がある(エジンバラ産後うつ病自己評価票スコア(以下EPDSスコア)※1が妊娠期において有意に高い)ということが明らかになりました。

【本論文のポイント】

  • 3,473名の妊娠16週から20週の方を対象とし、解析を行ったところ、妊娠前に月経の周期長の変動が6日より長く不規則な周期になっていた人では、うつ症状の得点が高いという傾向がわかりました。
  • 月経1周期の長さが短い(25日未満)もしくは長い(34日以上)という傾向は、妊娠うつとの関連は見られませんでした。
  • プレコンセプションケア※2のひとつとして、月経周期を適切に整えるための支援を行うことが、周産期メンタルヘルスの対策につながる可能性があります。

【研究の背景・目的】
 月経周期が規則的であることは、妊娠可能性を高めるのみならず、心身の良い健康状態と関連があることが知られています。心理的ストレスや抑うつ気分と、月経周期異常との関連を指摘する研究はいくつか報告されていましたが、妊娠前に月経周期異常があることが周産期のメンタルヘルスにどのような影響を与えるかについては、わかっていませんでした。
 今回の研究では妊娠前の月経周期の特性(周期の変動幅と周期長)と、妊娠期のうつ症状との関連を調べました。

【研究の成果と意義】
 「全自動化インターネット認知行動療法による妊娠うつ病・産後うつ病の予防」研究に参加し、初回調査に回答した5,128人の妊娠16週~20週の人のうち、妊娠前から「ルナルナ」を利用しており、適切に入力されたと考えられる月経周期(14日~50日)の記録が3周期以上残っていた3,473名の人を対象に解析を行いました。具体的に月経1周期ごとの日数のばらつきは、対象となる人それぞれの各月経周期の日数の差と、その差の平均値を算出し、月経周期の変動幅が6日以内の人と6日より長い人に分け、月経1周期の長さは25日未満、25~26日、27~29日、30~31日、32~33日、34日以上に分けました。そして年齢、学歴、出産歴(初産、経産)、計画妊娠、パートナーの有無、不妊治療の有無を考慮した上で、解析を行いました。
 その解析の結果、月経の周期長の変動が6日以上という不規則な周期のグループで、EPDSスコアが有意に高くなっていました。また、EPDSスコアが11点以上を示す、妊娠うつの可能性のあるグループでは、月経の周期長の変動が6日以上という不規則な周期の人が、6日以内の人と比較して、約1.4倍多くなっていました。なお、月経1周期の長さ(短い:25日未満、長い:34日以上)は、EPDSスコアと有意な関連を示すものはありませんでした。
 本研究は、妊娠前の月経周期特性が周産期のメンタルヘルスに影響を与える可能性を示したものであり、月経周期を含めたプレセコンセプションケアが周産期のメンタルヘルスの対策につながる可能性を示しています。しかし、妊娠前の月経周期の乱れは妊娠前の精神的なストレスやストレス要因による影響を受けている可能性があり、それらが周産期にも影響を与えている可能性があります。今後は、妊娠前のストレス状況を考慮したさらなる研究が期待されます。

※今回の研究結果は月経周期が不規則な人全員に当てはまるものではありません。妊娠中・出産後の精神的不調を感じられた場合は、保健所、保健センター、精神保健福祉センター、精神科やかかりつけの産婦人科にご相談ください。

≪愛媛大学大学院 産科婦人科学 教授 杉山 隆先生のコメント≫
 今回の研究は、妊娠前の月経周期が周産期メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性を初めて示したものであり、とても興味深い成果と言えます。プレコンセプションケア、すなわち妊娠前のケアが周産期メンタルヘルスの向上につながる可能性があり、さらなる検討が期待されます。
 「妊娠うつ」は妊娠3か月以上の妊婦さんの有病率が14.0~16.3%(文献1)との報告もあり、妊婦さんの誰がなってもおかしくありません。特に不眠や食欲不振に加え、ご自身のメンタル状態の変化や不安を感じた場合はかかりつけの産婦人科にてお気軽にご相談ください。
 また今回の結果は月経不順の方全員に当てはまるものではありません。ただし月経不順の方は一度婦人科を受診されることをお勧めします。

≪東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野 西大輔准教授のコメント≫
 今回の研究では『ルナルナ ベビー』アプリを使用している約3,473人の妊婦の皆さんにご協力いただき、妊娠前に記録されていた月経周期をデータとして活用させていただきました。このようなデータは世界的にも貴重で、妊娠前から妊娠期、産後に至るまで切れ目ないメンタルヘルス対策を行っていくために、今後ますます活用されていくことが期待されます。
 また本研究の結果からは、ご自身の月経周期をセルフチェックして、必要に応じてセルフケアを行ったり、医療機関を受診したりするということは、プレコンセプションケアのひとつとしても重要といえるのではないかと考えられます。その際、月経周期の乱れは産婦人科的な要因だけでなく精神状態とも関連している場合がありますので、心身の両面からのアプローチを考えていただけたら幸いです。

【用語解説】
※1:エジンバラ産後うつ病自己評価票スコア(EPDSスコア):周産期のうつ病のスクリーニングを目的として使用される自記式質問紙
※2:プレセコンセプションケア:将来の妊娠・出産を考えながら、妊娠前から生活習慣や健康に向き合う取り組み

【参考文献】
1 Tokumitsu K, et al. Prevalence of perinatal depression among Japanese women: a meta-analysis. Ann Gen Psychiatry. 2020;19:41.

【掲載論文情報】
掲載雑誌:Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology
論文タイトル:Preconception menstrual cycle disorder and antenatal depression: A cross-sectional study with pre-recorded information
著者:Natsu Sasaki, Akiyama Hiroto, Norito Kawakami, Daisuke Nishi
 ★論文はこちら:https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0167482X.2021.2010699

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