~人へ、地球へやさしい化粧品の開発を目指して~ 環境中の7種の紫外線防御成分がサンゴの成育に影響しないことを確認 サンゴ養殖の金城浩二氏と連携し、独自のサンゴ実験系にて評価

株式会社コーセーのプレスリリース

 株式会社コーセー(本社:東京都中央区、代表取締役社長:小林 一俊)は、沖縄のサンゴ養殖の専門家である金城(きんじょう)浩二氏と連携して、造礁サンゴに対する化粧品成分の影響を適切に評価できる実験系を構築し、日やけ止めに汎用される7種類の紫外線防御成分は環境濃度において、サンゴの成育に影響を与えないことを確認しました。

図1 サンゴ実験系の様子図1 サンゴ実験系の様子

図2 紫外線防御剤7成分のサンゴへの影響評価図2 紫外線防御剤7成分のサンゴへの影響評価

  • 研究の背景

 日やけ止め料に含まれる一部の紫外線防御成分はサンゴの成育への悪影響が報告されており、米国ハワイ州などのサンゴ礁を有する地域で販売や持込み、使用が禁止されています。一方で米国パーソナルケア製品評議会(PCPC:Personal Care Products Council)では科学的根拠が十分でないと懸念しており、紫外線から人々を守る有効な手段である日やけ止め料の使用を控えることには慎重な姿勢をとっています。
 当社ではこのような状況を踏まえて、2009年から継続している雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトによるサンゴ保護の取り組みを研究領域にも広げ、2019年11月から「海に入る人の肌を紫外線から守りながら、サンゴにもやさしい化粧品の開発」を目指して金城氏との共同研究を開始しました(※1)。今回、造礁サンゴの代表格であるウスエダミドリイシに対する化粧品成分の影響を適切に評価する実験系の構築と、環境濃度における7種類の紫外線防御剤のサンゴ成育への影響がないことが明らかになりました。
(※1)2020年2月6日発行 ニュースリリース 
https://www.kose.co.jp/company/ja/content/uploads/2020/02/202002062.pdf

  • 適切なサンゴ実験系の構築

 サンゴへの紫外線防御剤の影響を正確に検証するためには、紫外線防御成分が均一に存在している海水環境でサンゴを飼育し、その状態を客観的に評価する必要があります。そのため、以下の2つの方法を新たに確立し、サンゴへの化粧品成分の影響を適切に評価できる実験系を構築しました。
①健全なサンゴ飼育方法の確立
 サンゴは非常に繊細であり、海水の入れ替えが難しい実験系で良好な健康状態を保つことは困難でした。そこで金城氏の知見に基づき、水槽の大きさやサンプル間の距離の設計、照度、水温、pH、適度な水流の管理を検討することでサンゴへのストレスを排除した成育環境を実現しました(図1)。この環境で1ヶ月間サンゴを飼育した結果、健康状態に問題は発生せず、飼育方法の妥当性が確認できました。
海水中への紫外線防御剤の均一な分散方法の確立
 油溶性である紫外線防御剤のサンゴへの影響を過小評価しないためには、これらを海水中に均一に分散して、常にサンゴに接する環境をつくる必要があります。そこで本研究では化粧品に用いられる界面活性剤による乳化分散を行うことで、均一な分散と実際の日やけ止めからの流出に近しい形で実験を可能としました。
 なお、サンゴの状態の評価方法については、専門家による外観評価に加え、クロロフィル蛍光測定法(PAM)による生化学的手法を採用しました。これは造礁サンゴと共生する植物プランクトンの光合成活性を測定する手法であり、高ストレス下ではこの活性が低下することから、目に見えない成育への影響を、サンゴを破壊することなく評価することができます。

  • 紫外線防御剤のサンゴへの影響評価

 上記の検討で確立した実験系を用いて、日やけ止めに含まれる代表的な紫外線防御剤7種類のサンゴへの影響評価を行いました。今回評価したのはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチノキサート)、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ポリシリコーン-15、オキシベンゾン-3、酸化亜鉛、酸化チタンとなります。実験濃度は、実際の環境濃度を担保することを想定し、沖縄近海で過去に検出された紫外線吸収剤の最大濃度に基づき、それを十分に上回る濃度に設定しました。検体には造礁サンゴのひとつであるウスエダミドリイシを用い、それぞれの紫外線防御剤の存在下で2週間の飼育実験を行いました。
 目視評価の結果、どの検体においても、サンゴの成育に異常は見られませんでした。また、PAMによる光合成活性測定においては、どの水準も実験前後で統計的な有意差は確認できませんでした(図2)。以上から、日やけ止めに汎用される7種の紫外線防御剤は環境濃度において、サンゴの成育に影響は及ぼさないことが確認できました。

  • 今後の展望

 本研究により、化粧品成分がサンゴに与える影響を高い信頼性をもって評価できる手法が確立できました。これを応用することで、日やけ止め製剤そのものや他の化粧品成分についてもサンゴへの影響評価が可能となります。本研究を活用し、「海に入る人の肌を紫外線から守りながら、サンゴにもやさしい化粧品の開発」を実現していきます。

  • 雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクト

  当社は、雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトを通じて、2009年より沖縄のサンゴを保全する、有限会社「海の種」(代表:金城(きんじょう)浩二、所在地:沖縄県読谷村)の活動を支援しています。毎年、夏期のキャンペーン期間中に販売した『雪肌精』ブランドの対象商品のボトルの底面積の合計に相当する面積の環境保全費用をサンゴ育成活動費用として寄附し、これまでに植え付けられたサンゴの面積は、13年間で、25mプール約30.8面分相当になりました。
 そうした中、金城氏が育てて海底に植えつけたサンゴの中から、海水温が上昇しても白化に強い「奇跡のサンゴ」が発見され、注目されています。水深の浅いところで育てられたため、紫外線や暑さに耐性ができたのではないかと言われています。
 2018年からは、プロジェクト10年目を機に、夏期の活動に加え、東北の森を守る冬期のキャンペーンも新たに開始。2019年春に、初めて東北エリアで広葉樹の植樹を行いました。また、『雪肌精』を販売している海外の9つの国と地域(中国・台湾・香港・韓国・タイ・シンガポール・マレーシア・インドネシア・アメリカ)にて、各エリアの独自性を活かした様々な活動を通じて、プロジェクトを盛り上げています。
◇雪肌精 「SAVE the BLUE」 Web サイト
http://www.savetheblue.sekkisei.com/
◇コーセー企業情報 サステナビリティ 雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクト
https://www.kose.co.jp/company/ja/sustainability/special1/

◇共同研究者 金城浩二氏 プロフィール◇

有限会社海の種  
 代表取締役  金城 浩二(きんじょう こうじ)氏
  〒904-0323 沖縄県読谷村字高志保915番地
 「さんご畑~陸上のサンゴ礁~」を運営
    http://www.sangobatake.jp/

(略歴)
    1998年   サンゴの養殖を開始。
            2004年   移植した養殖サンゴの産卵に成功
            2009年 「さんご畑」が読谷村にオープン。
                         コーセーが「SAVE the BLUE」プロジェクトを通じた活動支援を開始
            2010年 金城氏を主人公のモデルとした映画
                        「てぃだかんかん~海とサンゴと小さな奇跡~」が上映
            2016年 養殖サンゴの中から、海水温が上昇しても白化しにくいサンゴが発見される。

 

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。