独自のゲノム編集技術により作出した「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」を活用して、パラミロンがユーグレナの免疫調節機能の主成分であることを確認しました

株式会社ユーグレナのプレスリリース

 株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充、以下「ユーグレナ社」)は、東京医科歯科大学安達貴弘准教授との共同研究において、微細藻類ユーグレナ(以下、「ユーグレナ」)に含まれる特有成分パラミロン※1が、ユーグレナの免疫調節機能の主成分であることを示唆する研究成果が得られたことをお知らせします。具体的には、パラミロンが、免疫応答を担うリンパ球の一種であるT細胞やB細胞を活性化することを確認しました。さらに「パラミロン高含有ユーグレナ」と、独自のゲノム編集技術を活用して作出した「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」※2を比較検討することにより、「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」では免疫調節機能が顕著に低下していることが明らかになりました。これまでにも、パラミロンの免疫系への関与について、様々な研究を通して確認してきましたが、今回の結果によりパラミロンがユーグレナの免疫調節機能に必要であることが強く示唆されました。なお、本研究成果は、2022年3月15日~18日開催の「日本農芸化学会2022年大会」にて発表しました。

※1 パラミロン:微細藻類ユーグレナ特有の成分で、きのこなどに含まれるβ-グルカンと呼ばれる細胞内貯蔵物質として生成される多糖類であり、食物繊維の一種
※2 2019年6月17日付のリリース https://www.euglena.jp/news/20190617-2/

 ユーグレナ社はこれまでの研究を通じて、ユーグレナの継続摂取により、主に、ユーグレナに含まれるパラミロンを関与成分のひとつとして、免疫バランスを保ち、インフルエンザウイルス感染症状を緩和する可能性※3,4や、関節リウマチの症状を緩和する可能性※5,6等を明らかにしてきました。また、その作用メカニズムのひとつとして、パラミロンが腸管内の免疫細胞に直接作用する可能性※7を発表してきました。今回の研究では、さらに新しい角度からのアプローチとして、ユーグレナ社が2019年に発表した独自の高効率ゲノム編集技術を活用して作出した「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」が免疫系に及ぼす影響を調べることで、パラミロンの免疫系への関与のさらなる考察を行いました。
 なお、当社は東京医科歯科大学ジョイントリサーチ部門に参画し、同部門末病制御学研究部門にて東京医科歯科大学と免疫系―神経系―腸管上皮に関する多角的な解析を共同で行っております※8。
※3 2015年2月9日付のリリース https://www.euglena.jp/news/n20150209/
※4 2017年11月1日付のリリース https://www.euglena.jp/news/20171101-2/
※5 2015年11月16日付のリリース https://www.euglena.jp/news/n20151116/
※6 2018年2月2日の付のリリース https://www.euglena.jp/news/180202-2/
※7 2020年3月30日付のリリース https://www.euglena.jp/news/20200330/
※8 2021年7月9日の付のリリース https://www.euglena.jp/news/20210709-3/

■研究の内容と結果
マウス由来脾臓細胞へのパラミロンの添加により、パラミロンが濃度依存的にT細胞やB細胞を活性化することが確認されました。

 樹状細胞※9などからの抗原提示※10で活性化されるT細胞やB細胞へのパラミロンの影響を確認するために、マウス脾臓より調製した細胞にパラミロンを添加し、48時間培養しました。そして、T細胞活性化マーカーであるCD69、B細胞の活性化マーカーであるCD86を蛍光抗体で染色し、フローサイトメーターで活性化マーカーを細胞上に発現している細胞の割合を測定しました。その結果、パラミロンの添加濃度依存的に活性化マーカーを細胞上に発現している細胞の割合の上昇が確認され、パラミロンが、脾臓中のT細胞およびB細胞を活性化することが示唆されました(図1)。
※9 免疫細胞の一種であり、侵入した異物を取り込み分解して、他の免疫細胞を活性化させるために指令を出す細胞
※10 マクロファージや樹状細胞などの抗原提示細胞が、細菌などの外来性および内因性抗原を細胞内へ取り込んで分解を行った後に、細胞表面へその一部を提示する免疫機構のこと。提示された抗原はT細胞などにより認識され、細胞性免疫及び液性免疫を活性化します
 

図1:マウス脾臓由来細胞中のT細胞とB細胞の活性化

マウス脾臓由来細胞への「パラミロン高含有ユーグレナ」の添加ではT細胞やB細胞の活性化が見られましたが、「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」の添加ではT細胞やB細胞の活性化がほとんど見られませんでした。
 前述の通り、ユーグレナ社ではこれまで、ユーグレナの免疫への関与が、主にパラミロンの寄与によってなされることを様々な角度から検証・確認してきました。その結果をさらに新たな角度から検証するために、ゲノム編集技術を活用して、「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」を作出し、T細胞やB細胞の活性化を指標として、免疫系への関与を確認しました。具体的には、マウス脾臓由来細胞へ、「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」、「パラミロン高含有ユーグレナ」をそれぞれ添加し、次世代シーケンサーを用いて、48時間培養後の細胞の遺伝子発現を解析しました。その結果、T細胞の活性化マーカーであるCD69とB細胞の活性化マーカーであるCD86の遺伝子発現において、「パラミロン高含有ユーグレナ」では、サンプルを何も添加していないコントロール(対照)と比較して発現が高くなりましたが、「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」では、その発現に変化が見られませんでした(図2)。
 

 図2:マウス脾臓細胞におけるT細胞の活性化マーカーCD69とB細胞の活性化マーカーCD86の遺伝子の発現

 「パラミロン高含有ユーグレナ」添加では、T細胞とB細胞の活性化がみられ、免疫系への関与が確認された一方で、ゲノム編集で作出した「パラミロンを蓄積しないユーグレナ」添加ではT細胞とB細胞の活性化はみられず、免疫系への関与が確認されませんでした。この結果により、これまでの研究を通じて得られた成果に加え、ユーグレナの免疫調整機能の主成分がパラミロンであることが、さらに強く示唆されました。
 当社では、からだが本来もつ「つくる・はたらく・まもる」のサイクルを支えるユーグレナの可能性のさらなる解明と、ユーグレナおよびその含有成分の健康食品、医療分野等での利活用や食材としての付加価値向上を目指し、研究開発を行っていきます。

<微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)について>
ユーグレナは、ワカメや昆布、クロレラと同じ藻の一種で、動物と植物の両方の特徴を持っており、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類の栄養素をバランスよく含んでいます。なお、ユーグレナ特有の成分でβ-グルカンの一種であるパラミロンは、近年機能性についての研究が進み、食品や化粧品などのヘルスケア分野などでの活用が期待されています。

<株式会社ユーグレナについて>
2005年に世界で初めて石垣島で微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功。石垣島で生産したユーグレナ・クロレラなどを活用した機能性食品、化粧品等の開発・販売を行うほか、バイオ燃料の生産に向けた研究、遺伝子解析サービスの提供を行っています。また、2014年より行っている、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」の対象商品を、2019年4月より化粧品を含む全グループ商品に拡大。2012年12月東証マザーズに上場。2014年12月に東証一部市場変更。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、事業を展開。https://euglena.jp

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