Craif、東京医科大学病院が2つの共同研究を開始

Craif株式会社のプレスリリース

 Craif株式会社(所在地:東京都文京区、CEO:小野瀨 隆一、以下Craif)は、学校法人東京医科大学(所在地:東京都新宿区、理事長:矢﨑 義雄)と共同研究契約を締結しました。本契約の締結により、Craifと東京医科大学 泌尿器科学分野(研究責任者:平澤 陽介 講師)は、「尿路上皮がんにおける尿中マイクロRNAのプロファイリングの探索」および「尿中マイクロRNAを用いた尿路上皮がんの微小遠隔転移検出バイオマーカーの開発」にむけた共同研究を開始します。

■2つの研究概要
1.尿路上皮がんにおける尿中マイクロRNAのプロファイリングの探索
 転移を有する進行性膀胱がんの予後は不良であり、5年生存率はわずか5%程度です(*1)。そのため早期発見・診断により、膀胱がんが進行性・転移性に至る前に治療介入することが重要とされています。しかし、現在診断に使用される尿細胞診は、特異度が90~100%と優れている一方、感度が40~60%と低く、特に低悪性度の膀胱がんの検出は困難です(*2)。そのため、実臨床では膀胱内視鏡設備を有する大病院で、局所麻酔のみで膀胱鏡検査を行うほかなく、羞恥心に加えて痛みを伴う侵襲の大きな検査であることが長年問題とされています。近年、様々な遺伝子の発現調節機構としてマイクロRNAが注目されています。現在マイクロRNAは、ヒトで2600種類以上同定され全遺伝子の約60%を制御しているとも言われており、がん患者の腫瘍組織においてもマイクロRNAの発現が変化し、がん細胞の増殖能や生存能が変化することが報告されています。本研究では、尿路上皮がん患者、健常者等の尿中マイクロRNAを解析・比較することにより、がん特異的に発現が亢進もしくは低下するマイクロRNAを探索し、膀胱がんを検出する高精度の尿バイオマーカーの開発を行います。

2.尿中マイクロRNAを用いた尿路上皮がんの微小遠隔転移検出バイオマーカーの開発
 筋層浸潤性膀胱がんの標準治療は膀胱全摘除術ですが、その5年生存率は約50%程度にとどまり(*3)(*4)、術後1年以内に約25%程度が再発もしくは転移を来します(*5)。転移性の場合、5年生存率はわずか5%程度と予後不良です(*1)。特に、術後1年以内に転移を来す症例は、CTなどの画像所見では同定し得ない微小な遠隔転移が存在しているためと考えられています。現在は、シスプラチンベースの術前化学療法(ネオアジュバント療法)で治療後、膀胱全摘除術を施行することが標準になりつつあり(*6)(*7)、複数のランダム化比較試験において生存期間延長を有することが証明されています。ただ、術前から微小な遠隔転移を有している場合には、侵襲の大きい膀胱全摘除術を回避して、化学療法などの全身治療を優先するべき症例もある一方で、それを予測する検査、バイオマーカーなどは存在しないのが現状です。この問題を解決するべく、本研究では、筋層浸潤性膀胱がんもしくは高リスク/超高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対する、根治的膀胱全摘除術前の微小遠隔転移を検出するバイオマーカーの開発を行います。

■Craifについて
 Craifは、2018年5月創業の名古屋大学発ベンチャー企業です。日本が誇る素材力を用いて尿からマイクロRNAを網羅的に捕捉し、AI(人工知能)を組みあわせて医療に応用することで、がん領域を中心に、疾患の早期発見や個別化医療を実現するための次世代検査開発に取り組んでいます。医療・ヘルスケア領域において世界をリードする企業・組織との協業を通じて、当社のビジョンである“人々が天寿を全うする社会の実現”を推進いたします。詳細については、https://craif.com/をご覧ください。

<参考文献>
(*1)SEER. Cancer Stat Facts: Bladder Cancer. https://seer.cancer.gov/statfacts/html/urinb.html.
Accessed January 2020.
(*2) Raab SS, Slagel DD, Jensen CS, Teague MW, Savell VH, Ozkutlu D, Lenel JC, Cohen MB.Low-grade transitional cell carcinoma of the urinary bladder: application of select cytologic criteria to improve diagnostic accuracy [corrected] Mod Pathol. 1996;9(3):225-32.
(*3)Stein JP, Lieskovsky G, Cote R, et al:Radical cystectomy in the treatment of invasive bladder cancer:long-term results in 1,054 patients. J Clin Oncol 19:666–675, 2001
(*4) Gore JL, Litwin MS, Lai J, et al:Use of radical cystectomy for patients with invasive bladder cancer. J Natl Cancer Inst 102:802-811, 2010
(*5)Bukhari N, et al. Update on the Treatment of Metastatic Urothelial Carcinoma.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6011065/. Accessed January 2020.
(*6) Wang, Y.; Ma, D.L.; Yu, C.H.; Sha, K.F.; Zhao, M.J.; Liu, T.J. MicroRNA-370 suppresses SOX12 transcription and acts as a tumor suppressor in bladder cancer. Eur. Rev. Med. Pharm. Sci. 2020, 24, 2303–2312.
(*7) Griffiths G, Hall R, Sylvester R, et al:International phase Ⅲ trial assessing neoadjuvant cisplatin, methotrexate, and vinblastine chemotherapy for muscle-invasive bladder cancer:long-term results of the BA06 30894 trial. J Clin Oncol 29 :2171–2177, 2011

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