ザクロ由来エラグ酸の腸内代謝物「ウロリチンA」の摂取が皮膚の細胞活性を高めることを示唆

株式会社ダイセルのプレスリリース

株式会社ダイセル(本社:大阪市北区)は、九州大学大学院農学研究院(福岡県福岡市)と共同で、当社が開発した健康食品素材「ウロリチンA」の皮膚に関する機能性についての研究結果を、2022年6月10日~12日に開催される「第76回日本栄養・食糧学会大会(兵庫県神戸市)」(一般演題:2P-09p)で発表します。

 ■研究の背景、目的
ザクロの果皮に含まれるエラグ酸の腸内代謝物であるウロリチンAは、損傷したミトコンドリアを選択的に除去するマイトファジー(※1)を誘因する効果が報告されています。本研究では、ウロリチンAの経口摂取を想定した時の皮膚への効果を検証するために、腸管細胞モデル(Caco-2細胞)及び皮膚細胞モデル(HaCaT細胞)を組み合わせた研究を行い、腸管を介した皮膚への機能性を評価しました。
※1 マイトファジー:細胞の自浄作用系の1つであるオートファジーを介し、損傷したミトコンドリアを選択的に分解・除去する機構のことで、古くなったミトコンドリアの代謝に関与している

■研究の内容と結果
腸管上皮モデルであるヒト結腸腺癌由来株化Caco-2細胞をウロリチンAで処理し、その培養上清を、ヒト表皮角化細胞HaCaT細胞に添加、培養後、RNAを抽出し遺伝子発現の変化について追跡しました。また、同様にHaCaT細胞を蛍光染色し、ミトコンドリア数及び活性の変化をイメージングサイトメーターを用いて測定しました。その結果、SIRT1(※2)及びPGC-1α(※3)の遺伝子発現が増大することが明らかとなりました。さらにミトコンドリアへの効果の解析を行った結果、ミトコンドリア数の増大と活性化が認められました。以上より、ウロリチンAは腸管を介し、皮膚細胞でSIRT1を活性化し、ミトコンドリアの生合成及び活性化を引き起こすことが確認されました。
これらのことから、経口摂取したウロリチンAは、腸管を介して皮膚へ作用し、皮膚の細胞活性を高めることが期待できます。

※2 SIRT1:長寿遺伝子とも呼ばれるサーチュイン遺伝子の1つで、ミトコンドリアの生合成に関与。
※3 PGC-1α:ミトコンドリアの生合成に関する転写制御因子。

 

■今後の研究開発について
今後は実際に経口摂取した際に肌へ与える影響やその有効量を評価するため、実験動物モデルやヒトを対象に効果検証をしていきます。また、ウロリチンAをはじめとする腸内代謝物の機能性についてさまざまな視点から研究を続けるとともに、エビデンスを重視した健康食品素材の拡売に努めます。

<参考>
■第76回日本栄養・食糧学会大会 (  https://www2.aeplan.co.jp/jsnfs2022/  )
開催日時:2022年6月10日(金)~6月12日(日)
神戸ポートピアホテル(6月10日)、武庫川女子大学(6月11日、12日)

■発表演題名
ウロリチン A による腸管を介した皮膚活性化

■発表者
九州大学大学院 生物資源環境科学府(1)、
株式会社ダイセル ヘルスケアSBU事業推進室(2)、
九州大学大学院農学研究院(3)
○片倉 喜範 (1),(3)、平江 衣絵 (1)、工藤 眞丈(2)、卯川 裕一(2)

■発表要旨
【目的】 ウロリチンAは、ザクロ果皮由来エラグ酸の腸内代謝物であり、 損傷したミトコンドリアを選択的に除去するマイトファジーを誘引する効果を有することが報告されている。本研究では、ウロリ チンAの、腸管を介した皮膚への機能性を評価することを目的に、 腸管上皮のモデルであるヒト結腸腺癌由来株化Caco-2細胞及びヒ ト表皮角化細胞株であるHaCaT細胞を用いて、皮膚関連遺伝子の発現量変化及びミトコンドリアの変化について調べた。

【方法】 ウロリチンAで処理したCaco-2細胞の培養上清(UA処理Caco-2 sup)をHaCaT細胞に添加し、培養後、RNAを抽出した。 このRNAを用いて、RT-qPCR法により遺伝子発現変化について追跡した。また、同様にUA処理Caco-2 supで処理したHaCaT細胞を蛍光試薬で染色し、IN Cell Analyzer 2200を用いてミトコン ドリア数及び活性の変化を測定した。

【結果・考察】 UA処理Caco-2 supをHaCaT細胞に添加し、培養を行うと、 SIRT1及びPGC-1αの発現が増大することが明らかとなった。この結果から、ミトコンドリアへの効果が期待されたため、イメージングサイトメーターを用いた解析を行った結果、UA処理Caco2 supで処理したHaCaT細胞において、ミトコンドリア数の増大と活性化が認められた。さらに、解析の結果、ミトコンドリアの面積も増大していることが明らかとなった。そこで、ミトコンドリア形態制御に関わる遺伝子発現について解析した結果、ミトコ ンドリアユビキチンリガーゼであるMITOLの発現は増大し、ミ トコンドリア分裂因子Drp1の発現は減少しており、ミトコンド リア面積の増大に対応した遺伝子発現変化が認められた。以上の結果から、ウロリチンAは腸管を介して皮膚細胞でのSIRT1の活性化とそれに伴うミトコンドリア生合成及び活性化を引き起こすとともに、ミトコンドリア制御因子の発現制御を通じてミトコンドリアの形態調節を誘導しているものと考えられた。

■ウロリチンの研究について
第76回日本栄養・食糧学会大会では、本題の他に、3演題のウロリチンAの機能性評価に関する研究発表をします。発表タイトルと共同研究先は次の通りです。
・ウロリチン A の摂取がアレルギー性鼻炎に 与える影響(城西大学との共同研究)
・エラグ酸代謝物のウロリチン A は破骨細胞の分化を抑制する(城西大学との共同研究)
・ウロリチン A による血管内皮細胞におけるエンドセリン 1 産生抑制作用(摂南大学との共同研究)

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