ポーラのプレスリリース
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、脂肪由来幹細胞を皮下注入する再生医療を模した評価系で、施術後に起こる生体反応を研究し、以下を解明しました。
① 古い線維を壊し、新しい線維を作ることで、皮下組織の作り替えを引き起こす鍵因子を発見 ② 鍵因子の発現を高める作用がある複合エキスを開発 |
今回の鍵因子に関する発見は、皮膚の弾力維持に欠かせない皮下組織の線維構造に関する重要な知見です。本知見は今後、ポーラ・オルビスグループの商品・サービスに活用される予定です。
- 「線維の作り替え現象」の鍵因子は、炎症を制御するTSG-6だった
皮膚が老化すると、コラーゲンなど細胞外※1の線維の量が減るだけでなく、それらが変性した古い線維が蓄積することで、皮膚を支える力が衰えてしまいます。これまで、蓄積した古い線維を取り除くことは難しいと考えられてきましたが、一方で脂肪由来の幹細胞を皮下に注入する再生医療においては、古い線維が新しい線維に作り替わる現象が起こり、シワ・たるみ等の老化肌悩みが改善することが報告されています。
そこで、新鮮な皮下組織片を用いた実験系で、再生医療後に起こる生体反応を解明することで、線維の作り替えを起こす鍵となる生体因子を見つけ出すことにしました。その結果、脂肪由来幹細胞から分泌されるTSG-6という生体因子が、組織の炎症状態を改善することで、線維化※2を抑制し、かつ線維の作り替えを促すことを発見しました(図1、補足資料1)。つまり、TSG-6が線維の作り替えを引き起こす鍵として働いていたのです。
※1 組織の間を満たし、それらを結合・支持する結合組織
※2 変性したコラーゲン等の線維が過剰に蓄積すること
- 鍵因子TSG-6の発現を高める複合エキスを発見
脂肪由来の幹細胞を用いた実験でTSG-6の発現を高めるエキスを探索したところ、マグワ果実エキスとアーチチョーク葉エキスの複合エキスに効果を見出しました(補足資料2)。さらに、培養した皮下組織片に複合エキスを添加すると、コラーゲンの分解と新生が順に誘導されることが分かりました(図2)。
従来、加齢に伴う肌悩みに対しては「減った線維を補う」アプローチが中心でしたが、本知見により、「古い線維を作り替える」という新たなケアの可能性が開かれました。
- 【補足資料1】 鍵因子TSG-6の発見
再生医療で起こる生体反応を明らかにするため、新鮮なヒト皮下組織片を脂肪由来幹細胞と一緒に培養する実験系を構築しました。時間を追って皮下組織で起こる反応を解析したところ、ヒト皮下組織片を脂肪由来幹細胞と一緒に培養するとコラーゲンの分解と新生が順に誘導され、さらには線維化を促す仕組みが抑制されていることを発見しました。これらの結果から、新鮮な皮下組織片を脂肪由来幹細胞と培養すると、再生医療でみられる「新しい線維に作り替わる生体反応」が起きていることが推測されました。
この生体反応の鍵となる因子を探し出すため、一連の反応に伴い遺伝子の発現がどのように変化するのか網羅的に解析しました。その結果、線維が作り替わる現象のスタート時にはたらく生体因子として、TSG-6を見出しました(図3)。次に、TSG-6が一連の生体反応を導くことを確かめるため、TSG-6の機能を人為的に阻害してみると、線維の作り替えの抑制と、線維化の促進(図4)が認められました。このことは、TSG-6が線維の作り替えの鍵因子として重要な働きを担うことを示しています。
- 【補足資料2】 TSG-6発現に対する複合エキスの効果
さまざまなエキスを脂肪由来幹細胞に添加した結果、マグワ果実エキスとアーチチョーク葉エキスの複合エキスによって、鍵因子TSG-6の遺伝子発現が2倍以上に増えることを発見しました(図5)。