月経前症候群(PMS)軽減に有用な成分についての研究成果を発表

大塚製薬株式会社のプレスリリース

・月経前の黄体期と呼ばれる期間に現れる「むくみ」や「イライラ」などの不定愁訴を、月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)と呼び、症状を自覚している女性は約7割いるとされる*1
・PMSの身体的症状(むくみなど)や精神的症状(イライラなど)に対して、γ(ガンマ)-トコフェロール(γ-Toc)、γ-トコトリエノール(γ-TT)、エクオール(EQL)およびカルシウム(Ca)含有食品の摂取が、症状軽減に有用であることが示唆された
・症状軽減の機序として、γ-Tocおよびγ-TTの代謝産物であるγ-CEHC*2の利尿作用(むくみの低減)やCaの血中intact PTH*3低下作用(イライラの低減など)が関与している可能性が示唆された

大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:井上 眞、以下「大塚製薬」)は、女性の健康分野をサポートする製品の研究開発を行っています。このたび、症状を自覚している女性が約7割とされる*1 PMSに対して、「γ-トコフェロール、γ-トコトリエノール、エクオールおよびカルシウムの4つの成分を含む食品」(γ-トコ複合食品)の摂取が、症状軽減に有用であることを示唆する研究論文が、7月30日発刊の一般社団法人 日本女性医学学会の学会誌「日本女性医学学会雑誌」に掲載されました。

■研究成果の概要■
【目的】 γ-トコフェロール(γ-Toc),γ-トコトリエノール(γ-TT),エクオール(EQL)およびカルシウム(Ca)含有食品(被験食品)摂取が黄体期の不定愁訴の軽減に有効であるかを検討した。

【方法】 卵胞期に比べて黄体期に24時間尿中ナトリウム(Na)排泄量が低下し,かつ水分貯留症状の発現もしくは悪化を認めた60名を対象者とした。無作為化二重盲検クロスオーバーデザインにて,黄体期に被験食品(1日あたりγ-Toc 90 mg,γ-TT 15 mg,EQL 2 mg,Ca 250 mg)もしくはプラセボを夕食後に7日間継続摂取させた。摂取1日目から4日目までは日常生活下で月経随伴症状の程度について回答させ,摂取5日目に実施施設に入所後,摂取6日目の朝から48時間にわたって,規定食下で蓄尿,採血,身体計測および自覚症状アンケートを経時的に実施した。

【成績】 試験完了49名中,35名が解析対象例となった。試験食品摂取開始からの自覚症状の変動について、「顔のむくみ」,「下腹部・お腹まわりの張り」,「イライラ・怒りやすさ」および「気分の落ち込み」の症状の程度がプラセボ摂取時に比べて被験食品摂取時で有意に低かった(p< 0.05)。また,24時間および48時間尿中Na排泄量,および24時間尿量は,プラセボ摂取時に比べて被験食品摂取時で有意に増加した(p< 0.05)。血中γ-Toc,血中γ-TT,それらの代謝産物である血中γ-CEHC濃度および48時間尿中EQL排泄量は被験食品摂取によりプラセボ摂取に対して有意に高く(p< 0.05),一方で,血中intact PTH値は有意に低かった(p< 0.05)。尿中カリウム排泄量,血中電解質値やヘモグロビン値に試験食品間で有意な差は認められなかった。

【結語】 黄体期の身体的症状や精神的症状に対して,γ-Toc,γ-TT,EQLおよびCa含有食品摂取は症状軽減に有用であることが示唆された。症状軽減の機序にはγ-Tocおよびγ-TTの代謝産物であるγ-CEHCの利尿作用やCaの血中intact PTH低下作用が関与している可能性が示唆された。

日本女性医学学会雑誌  29(4) 578-587, 2022
「γ-トコフェロール,γ-トコトリエノール,エクオールおよびカルシウム含有食品の黄体期における不定愁訴軽減効果:無作為化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー比較試験」
著者:樋口 智子、上野 友美、内山 成人、吉原 達也、松木 俊二、髙松 潔

Title: The effects of γ-tocopherol, γ-tocotrienol, equol and calcium supplementation on premenstrual symptoms: a randomized, double-blind, crossover trial
Authors: Tomoko Higuchi, Tomomi Ueno, Shigeto Uchiyama, Tatsuya Yoshihara, Shunji Matsuki, Kiyoshi Takamatsu
Journal: Menopause &Women’s Health Jpn  29(4) 578-587, 2022

*1 出典: 2021年6~7月 大塚製薬調べ 30〜44歳日本人女性1,000人を対象に行った調査
*2 γ-CEHC:ビタミンEの一種であるγ-トコフェロール、γ-トコトリエノールが、肝臓で代謝され作られる成分。ナトリウムが過剰な状態の時、マイルドなナトリウム利尿作用(尿を介してナトリウムを排泄する作用)があると言われています。
*3 intact PTH:副甲状腺ホルモン(パラチロイドホルモン)の略語。血中カルシウムが低値になると、PTHは分泌されます。PTHには骨からカルシウムを血液中に溶出させ、血液中のカルシウムを増加させる働きがあります。

■γ-トコフェロール(γ-Toc),γ-トコトリエノール(γ-TT)について
優れた抗酸化作用で知られるビタミンE。実は、自然界にビタミンEは8種類あり、一般的なのはナッツ類や緑黄色野菜に多く含まれるα-トコフェロールです。一方、植物油に多く含まれているγ-トコフェロールや、γ-トコトリエノールには、「むくみ」を軽減する働きがあることが分かりました。γ-トコフェロールとγ-トコトリエノールは、肝臓で一部がγ-CEHCに代謝されます(この時、γ-トコトリエノールはγ-トコフェロールよりも効率良くγ-CEHCに変換されます)。このγ-CEHCが、体内にナトリウム量が多くなり過ぎて、水分を溜め込んだ状態になった時に腎臓で働き、ナトリウムを緩やかに体外に排出して、むくみを軽減すると考えられています。

■エクオールについて
エクオールは、大豆イソフラボンの一つであるダイゼインから、腸内細菌の働きによって産生される代謝物です。エストロゲンに似た構造を持ち、大豆イソフラボンそのものではなく、エクオールこそが女性の健康をサポートする鍵であることが知られています。
ただ、大豆を食べて腸内でエクオールをつくれる人は、日本人の2人に1人、特に若い女性では5人に1人しかいないことも分かっています。エクオールをつくれる人は、PMSになるリスクが低いことも明らかになりました。(出典: 産科と婦人科; 83(12): 1434-1439, 2016)

 ■カルシウム(Ca)について
PMSの症状をやわらげるために、世界中でさまざまなビタミンやミネラル、ハーブが使われてきましたが、システマティックレビューでその効果が認められたのが、カルシウムです。カルシウムは骨の健康維持に必須で、生命活動の中心となるミネラルですが、イライラを軽減するなど、精神状態とも深く関わっているのです。しかし問題は、日本人が十分なカルシウムを摂れていないこと。厚生労働省の基準では、20~40代の女性は1日あたり650mgを摂ることが推奨されていますが、実際に摂れているのは400mg前後で、1日あたり200~250mgも不足しています。PMSのケアのためにも、この不足量をしっかり補うことが大切です。

▶ なお、上記各成分についての詳細は「PMSラボ」 https://www.otsuka.co.jp/pms-lab/ をご覧ください。

■大塚製薬・女性の健康分野の研究開発・啓発活動について

大塚製薬は、長年の大豆研究の中で、更年期の女性の心や身体の変化に注目し、1996年から佐賀栄養製品研究所において女性の健康分野の研究を開始しました。2002年にはエクオールを産生する乳酸菌ラクトコッカス20-92株の単離に成功し、この乳酸菌で大豆胚芽を発酵し生成したエクオールを用い、その有用性と安全性について国内外で研究を重ねています。 それと並行して、月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)の分野の研究も行っています。また、医薬専門家の協力を得ながら、女性の健康維持増進や生活の質の向上にむけた情報提供活動を行っています。

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。