肌分析技術を活用したストレスマネジメントシステムを構築 ~ポーラ化成、世界的に権威ある化粧品技術者学会にて発表~

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスのプレスリリース

ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:釘丸和也)は、2022年9月19日~22日に開催される第32 回国際化粧品技術者会連盟(以下 IFSCC)世界大会の口頭発表部門において、肌分析技術を活用したストレスマネジメントシステムの構築について発表します。
この知見は、今後、ポーラ・オルビスグループの商品・サービスに応用されます。

■論文タイトル
『化粧品技術とウェルネスとの交差点~肌分析技術のストレスマネジメントへの応用』
英文名:“Intersection of cosmetic technology and wellness”
~Utilizing skin research techniques for stress management~
発表者: 本川 智紀1、加藤 朋美1、宮本 寛気2、溝手 竜2、彦坂 修平2、奥山 純子3、門廻 充侍4
1ポーラ化成工業㈱ フロンティアリサーチセンター、2ファーストループテクノロジー㈱
3東北大学病院、4東北大学災害科学国際研究所

■発表内容概要
新型コロナウイルスの影響をはじめ、世界的にストレスが社会問題となっている一方で、それを手軽に分析しセルフケアできるツールはありません。
そこで、顔情報からストレス状態を推定できる技術を構築。手軽に誰でも利用できるスマートフォンアプリとして「肌分析起点のストレスマネジメントシステム」を開発し、その有用性を確認しました。

【研究で実現したこと】
① 顔データ(顔画像・動画、角層画像など)を用いて、ストレス状態(体内疲労マーカー、自律神経状態など)を推定できる分析技術を確立(図1)
② 自身の心拍数をもとにした振動プログラムと、そのテンポに同期した音楽の複合体験により、ストレスが減少
③ ①の分析技術と②の五感体験を実装したスマートフォンアプリを1ヶ月使用すると、心・体・肌が改善(補足資料1)

【展望】
本研究から、顔を用いて非侵襲でストレス状態を網羅的に分析できるようになりました。主観的情報を用いずに体内疲労マーカーや自律神経状態を推定できるため、将来的にはストレスチェックなどのストレスモニタリングシステムとしての応用展開が考えられます。
また、スマートフォンを利用した手軽なシステムだからこそ、様々なシーンでの応用が可能であり、現在被災地や医療分野での応用検討も進めています。さらに、肌状態の改善も確認されたことから、化粧品を用いない、または化粧品との併用で相乗効果を生む新しいスキンケア技術としての開発も視野に入れており、今後様々な提供価値をもつアプリへの進化が期待されます。

本研究は、これまでの化粧品研究で培ってきた肌分析という強みを活かし、ストレスという社会課題に対してアプリで解決するという新たな取組みの1つです。ポーラ・オルビスグループは、「感受性のスイッチを全開する」という理念のもと、今後も化粧品の枠を越えたさまざまな価値創出により世界中の人々の人生を彩ることを目指していきます。

【補足資料1】 アプリの実証試験結果(一部)
25~59歳の男性45名を2群にわけ、23名は「アプリ不使用群」、22名は「アプリ使用群」としました。1か月間、「アプリ不使用群」は普段通りの生活を、「アプリ使用群」はアプリ使用を自由に生活の中に取り入れてもらい、体と肌の状態の変化を解析しました。その結果、「アプリ使用群」でのみ、唾液中コルチゾール(ストレスの指標)とシワ本数※1の改善が確認されました(図2)。
※1 VISIA® Evolution(Canfield Scientific)を用いて、顔を正面・左右45度の計3方向から撮影・分析した際のシワ本数平均値

【補足資料2】 ストレス指標について
データ以外の各指標は、論文等で設定されているカットオフ値※2(カットオフ値がない指標については取得データの中央値)を用いて「良」または「悪」に2値化処理※3し、分析に利用しました。顔画像および角層画像データを用いたモデル構築では、Resnetというディープラーニング技術で学習し、検証用データを用いて画像データによる各指標の「良」/「悪」の判定精度を算出し、精度70%以上の項目を推定可としました。また、肌の主観評価を用いたモデル構築では、さまざまな回帰分析(linear regression, logistic regression, ridge regression, lasso regression, random forest, SVM)で予測式を構築し、検証用データを用いた検証で最も精度の高かったモデルを採用しました。顔動画を用いたモデル構築では、輝度値※4の変化を抽出しフーリエ変換やパワースペクトル分析で自律神経の各種スコアを算出しました。
※2 測定結果の「良」/「悪」を識別する数値であり、正常と異常の範囲を区切る値
※3 大小さまざまな値を示すデータを、カットオフ値を境界として2つ(「良」または「悪」など)に振り分けること
※4 色の種類(赤・青・黄など)による明るさの違いを考慮した画像の明るさ

 

※5 8-hydroxy-2’-deoxyguanosine
※6 diacron reactive oxygen metabolites
※7 coefficient of variation of R-R interval
※8 ratio of Low Frequency to High Frequency

【補足資料3】 IFSCCについて
IFSCC世界大会は、世界中の化粧品技術者・研究者にとって最も権威のある学会で、最先端の化粧品技術が披露されます。応募論文はIFSCCの厳正な審査を受け、選ばれたものだけに発表が許されます。今回は口頭で78件、ポスターではそれを上回る多数の発表が予定されています。

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