資生堂、薬剤の皮膚浸透を劇的に向上する新規導入促進成分を開発 ~化粧品成分を液体化する特殊技術により、高い薬剤効果と皮膚刺激低減の両立を実現~

株式会社資生堂のプレスリリース

 資生堂は、通常は固体の物質が特定の分子と相互作用することで液体化する現象を応用し、薬剤の浸透率を飛躍的に高めるとともに皮膚の安全性も両立する世界初の導入促進成分を開発しました(図1)。皮膚内のターゲットとする作用部位に薬剤を素早く浸透させるためには、肌のバリア機能を低下させることが必要とされ、皮膚への安全性に課題がありました。しかし、今回開発した導入促進成分を活用することにより、安全性を保ちつつ、効率的に薬剤を浸透させることが可能になりました。本研究の成果の一部は「第32回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC※1)ロンドン大会2022」(2022/9/19-9/22)にて発表しました。
 本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』の「Functionality/Japan Quality」というアプローチで研究を進めました。今回開発した新たな導入促進成分によって、肌へのやさしさを追究した品質の高さはもちろん、浸透性に優れた機能的で効果的なスキンケア製品の実現を目指します。
※1 IFSCC: The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists
 

《開発の背景》
 近年、お客さまの期待することの一つに、医薬部外品に対する非常に高い効果実感があげられています。当社はその実現に向け、「独自成分の開発」や「有効成分の研究」に対して日夜研究を重ねることによって、「薬剤開発領域」を強みとしています。しかし、その価値をさらに高めるには、有効成分を肌の深くに存在するターゲット部位に素早く、より多く届ける技術の強化も重要であると考えています。
皮膚表面には油と親和性の高い層があり水をはじく性質がある一方、化粧品に使われる薬剤の多くは、基剤である水との親和性が高く設計されているため、水をはじく性質がある皮膚には浸透しづらく、以前から薬剤の導入促進剤の開発が行われてきました。導入促進剤は薬剤の浸透を促しますが、一方で界面活性剤のような構造や性質を持つことから、角層に浸透して脂質のバリア機能を低下させ、さらに、皮膚の深くに浸透した導入促進剤が細胞へダメージを与えてしまうなどの課題が残されていました。
そこで当社は、有効成分を確実に作用部位に届けるとともに、高い安全性を両立した製品を安心してお使いいただけることを目指し、これまでにない新たな導入促進剤の開発を始めました。

《新規導入促進成分「AB/XY complex」の開発と薬剤浸透効果》
 今回新たな導入促進剤を開発するにあたり、融点(固体が融解し液体になる時の温度)の高い物質同士を掛け合わせることで、元の物質の融点より低い温度で液体になる、「イオン液体」という新しいタイプの液体に着目しました。導入促進剤として一般的に使用されているアルキルベタイン(AB)※2 に対して、様々な物質を組み合わせ、液体化する組み合わせやその配合比率を100通り以上検証したところ、アルキルベタイン(AB)とキシリトール(XY)の組み合わせ(AB/XY complex)で液体化すること、さらに皮膚への優れた浸透促進効果が認められました。次に、ヒトの皮膚を用いて美白薬剤である4MSK(4-メトキシサリチル酸カリウム塩)の浸透促進効果の評価を行ったところ、新規導入促進成分は、薬剤のみを適用した場合と比較して浸透速度が約3.7倍、浸透量で約3.5倍の増加が見られました(図2)。一般的な導入促進剤は角層の脂質に浸潤することで、秩序立った脂質構造を乱して共存する薬剤の浸透を促しますが、新規導入促進成分は、角層の脂質を一部取り除いて隙間を作り、薬剤の浸透ルートを作り出す浸透促進メカニズムを示し、優れた効果につながっています(図3)。
※2 アルキルベタイン・・・親水基がプラスとマイナスに帯電している両親媒性物質
 

 

 

《新規導入促進成分の皮膚安全性》
 次に、薬剤の浸透促進効果を高めるだけでなく、皮膚の安全性向上の両立を検討しました。一般的に皮膚の細胞にダメージを与えると考えられている物質の構造の一部を、キシリトールが覆うことにより、細胞へのダメージが緩和されることから、今回開発したキシリトールを組み合わせている新規導入促進成分AB/XY complexを、生きている皮膚の細胞に暴露して細胞の生存率を観察しました。導入促進剤単独では細胞の生存が難しい実験条件における検証であったにも関わらず、新規導入促進成分AB/XY complexコンプレックスを細胞に暴露しても、ミトコンドリアの活性が失われる細胞の数は水への暴露同様、大きな減少は認められませんでした(図4)。
 

《今後の展望》
 今後は「室温で液体化する」現象を応用した新規導入促進成分と、さまざまな薬剤を組み合わせ、医薬部外品における効果実感をより向上し、お客さまの期待を超えるビューティーソリューションの提供を目指します。また、他の機能性成分の展開に向けて「通常は固体の物質が特定の分子と相互作用することで液体化する現象を活用した研究を継続することによって、さらなるお客さま価値の向上を目指します。

R&D理念「DYNAMIC HARMONY」とは
・資生堂、独自のR&D理念「DYNAMIC HARMONY」を制定(2021年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003252&rt_pr=trm09
・「DYNAMIC HARMONY」特設ページ
https://corp.shiseido.com/jp/rd/dynamicharmony/?rt_pr=trm09

▼ ニュースリリース
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003496&rt_pr=trm09

▼ 資生堂 企業情報
https://corp.shiseido.com/?rt_pr=trm09

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