カスピ海乳酸菌を用いたヨーグルトの手作りは精神・心理的フレイルを改善する

フジッコ株式会社のプレスリリース

 フジッコ株式会社(本社:神戸市中央区/代表取締役社長執行役員:福井正一)は、園田学園女子大学 健康人間学部 食物栄養学科 教授 辻秀美先生との共同研究により、カスピ海乳酸菌を用いたヨーグルトの手作りが精神・心理的フレイルを改善することを明らかにしました。この研究成果は、第9回日本サルコペニア・フレイル学会大会(2022年10月29日~30日)にて発表致します。

 超高齢社会の日本では、健康寿命の延伸が喫緊の課題となっています。フレイルとは健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指しますが、適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性が高まることから、早期の段階でのフレイル予防が重要となってきます。フレイルには筋力低下などの身体的要因、認知症やうつなど精神・心理的要因、独居や経済的困窮などの社会的要因の3つの要因があり、それらが相互に影響し合って悪化していくと考えられており、それぞれの要因に適した対策が必要となります。

 「カスピ海乳酸菌」は、ヨーロッパ東部の黒海とカスピ海に囲まれたコーカサス地方のジョージアを起源とする乳酸菌です。この「カスピ海乳酸菌」は室温での発酵が可能という特徴を持ち、手軽に家庭でヨーグルトの手作りが出来ます。今回、高齢者の方に「カスピ海乳酸菌」を用いてヨーグルトを手作りしてもらい、フレイルの精神・心理的要因への対策として寄与できるか調べました。

 試験では、65歳以上の高齢者24名に8週間「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの手作りを実施してもらい、試験開始前と8週間後にSF-8調査票を用いて健康関連QOL(※1)を調べました。その結果、ヨーグルトの手作りによって身体機能、全体的健康観、活力、日常役割機能(精神)が有意に改善し、さらに精神的な総合指標である精神的サマリースコアも有意に改善しました(図1)。これらのことから、「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの手作り行動が精神的なQOLを向上させたことがわかりました。また、試験への参加自体が社会参加の機会となっただけでなく、参加者の中には手作りヨーグルトを家族や近隣へおすそ分けするなど行動変容を起こした方もおられ、「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの手作りは社会参加を促進する契機となることも期待されました。これまでにフジッコでは、「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの嚥下適性の高さや、エクササイズとの併用による握力向上を明らかにしており、これらのエビデンスにより「カスピ海乳酸菌」が、フレイルに対する栄養面及び身体的要因への対策に寄与できることを示してきました。今回、「カスピ海乳酸菌」がフレイルに対する精神・心理的要因への対策にも寄与できることが明らかとなったことから、「カスピ海乳酸菌」は総合的にフレイル対策へ活用できると考えられます。

 後期高齢者の著しい増加が見込まれている日本においては、今後ますますフレイルへの予防対策が重要となってくることが予想されます。フジッコでは、【イキイキシニアの健康習慣​ 正しく知っておきたい「フレイル」と​手作りヨーグルトのヒミツ​】と題したフォーラムの開催(11月、12月配信予定)などを通じて、「カスピ海乳酸菌」のフレイル対策アイテムとしての活用をより広めていき、全ての人々の健康が達成されるよう努めてまいります。

 

    図1. 「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの手作りによる健康関連QOL指標の改善
       健康関連QOLはSF-8調査票を用いて調べました。SF-8は疫学調査などで国際的に広く
       使用されている健康関連のQOLを評価するための調査票で、8つの尺度(①身体機能、
       ②日常役割機能(身体)、③体の痛み、④全体的健康感、⑤活力、⑥社会生活機能、⑦
       日常役割機能(精神)、⑧心の健康)に対応するスコア、および身体的健康と精神的健
       康をあらわす2つのサマリースコアを算出することができ、高齢者のQOL評価を短時間
       で行えます。
 

  • 脚注

※1 QOL
 「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称で、日本語では「生活の質」などと訳され、「生きがい」や「満足度」という意味があります。人が人間らしく満足して生活しているか、自分らしい生活が送れているかという「生活の質」を評価する概念であり、近年注目を集める研究分野となっています。
 

  • 発表の詳細

学  会:第9回日本サルコペニア・フレイル学会大会(https://www.jasf9.com/、hybrid開催)
会  期:2022年10月29日~30日
場  所:立命館大学びわこ・くさつキャンパス
演題番号:I-137(口頭発表)
演題名 :Lactococcud cremoris subsp. cremoris FCを用いたヨーグルトの手作り行動がフレイルに
             及ぼす影響
発表者 :田畑 祥之1、後藤 弥生1、松葉 真2、辻 秀美2、鈴木 利雄1
             1フジッコ株式会社イノベーションセンター
             2園田学園女子大学人間健康学部食物栄養学科
要  旨:
【目的】
   Lactococcus cremoris subsp.cremoris FC株は常温で発酵可能なため、ヨーグルトの手作りが容易である。その利点を活かして、本研究では、Lactococcus cremoris subsp.cremoris FC株を用いたヨーグルトの手作り行動がフレイルに及ぼす影響を検討した。
【方法】
   高齢者28名(72.2 ± 6.3歳)を対象に8週間の単群試験を実施した。研究期間中、被験者は週1回以上ヨーグルトを手作りさせるとともに、2週間ごとの30分間のオンライン討論会に参加させた。また、介入前後で、SF-8、GDS-15J、EAT-10、介護予防チェックリスト、Oral Frailty Index-8、及び指輪っかテストを用いたフレイルに対するアンケートを実施した。
【結果】
   ヨーグルトの手作り回数が10回未満の4名を除いた24名を対象に解析を行った。健康関連QOL調査票であるSF-8 では、身体機能、全体的健康観、活力、日常役割機能(精神)の下位項目、及び精神的サマリースコアで有意な改善がみられた。さらに、SF-8の身体的あるいは精神的サマリースコアについて、初期スコア50未満(国民標準値未満)の被験者での層別解析では、両サマリースコアともに有意な改善が見られた。また、GDS-15Jや介護予防チェックリストでも有意な改善が認められたが、  EAT-10、Oral Frailty Index-8、指輪っかテストでは有意な改善は認められなかった。
【結論】
   ヨーグルトの手作り行動は、社会的・精神的・肉体的フレイルの改善に有効であることが示された。
 

  • お問い合わせ先

フジッコ株式会社
担当者:イノベーションセンター 機能性研究チーム  田畑 祥之
責任者:イノベーションセンター 部長                  鈴木 利雄

TEL:078-303-5385
ホームページアドレス:https://www.fujicco.co.jp

 

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