老化研究の最前線 細胞の「若返り」に着目した先端研究とハス胚芽エキスの有効性を報告

丸善製薬株式会社のプレスリリース

植物を中心とする天然物より、医薬品や化粧品、食品の原料を製造する丸善製薬株式会社(所在地:広島県尾道市)は、近年の老化研究で世界的に注目を集める「若返り(rejuvenation)」に着目し、高知大学総合科学系複合領域科学部門・難波卓司准教授と共同研究を実施しました。
その結果、皮膚老化に対する検討において、皮膚線維芽細胞を実験的に老化させた際に、ミトコンドリアの機能が主要な老化マーカーの変化に先行し低下することを確認しました。さらに老化した皮膚線維芽細胞を「若返らせる」機能性成分として「ハス胚芽エキス」を見出しました。
本研究成果については、国際化粧品技術者会(IFSCC)2022 ロンドン大会において技術発表(※1)を実施した他、本研究成果を含む総合的な老化研究により得られた知見が米国科学誌「Aging」に掲載されました(※2)。
丸善製薬では、これらの研究成果を本年11月10日(木)、11日(金)に実施する顧客向けセミナー「新商品&新技術オンライン発表会」で報告する他、2023年5月に開催される「第11回化粧品産業技術展」でも本知見を応用した化粧品原料の展示を行う予定です。

【本研究成果の内容】
1. 研究の背景
近年、医学分野において「加齢(aging)」と「老化(senescence)」を分けて考え、老化を治療出来る症状と捉えて抑制する、さらには「若返らせる」ことで、老化に伴う様々な疾患や変化をその上流で食い止めることを目指した研究が進展しています。丸善製薬では、化粧品分野へ応用することを目指し、皮膚線維芽細胞を用いた検討を行い、老化した皮膚線維芽細胞を「若返らせる」可能性を持つ機能性成分の探索を行いました。

2. 研究結果の概要

  • 正常ヒト皮膚線維芽細胞を継代培養にて老化させた際の影響を評価したところ、ミトコンドリアの機能が主要な老化マーカーの変化に先行し低下することが確認されました。
     
  • ミトコンドリア機能を活性化できる成分が老化を「回復」させる可能性に着目し、ミトコンドリア膜電位上昇作用を指標としたスクリーニングを行い、75種類の植物エキスからハス胚芽エキスを見出しました。
    また、ハス胚芽エキスは老化した皮膚線維芽細胞のミトコンドリアの融合を促進させ、その機能を活性化させることも確認されました。(図1)
     

    図1:ハス胚芽エキスは老化皮膚線維芽細胞のミトコンドリアの融合を促進させたことから、ミトコンドリア機能を活性化させたと考えられました。図1:ハス胚芽エキスは老化皮膚線維芽細胞のミトコンドリアの融合を促進させたことから、ミトコンドリア機能を活性化させたと考えられました。

      

     

  • ハス胚芽エキスは老化した皮膚線維芽細胞における主要な老化マーカーとして知られる老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA β-Gal)の発現を抑制したことから、細胞の老化を「回復」させたと考えられました。(図2)
     

    図2:ハス胚芽エキスは老化皮膚線維芽細胞のSA β-gal発現を抑制したことから細胞老化を「回復」させたと考えられました。図2:ハス胚芽エキスは老化皮膚線維芽細胞のSA β-gal発現を抑制したことから細胞老化を「回復」させたと考えられました。

     

     

  • ハス胚芽エキスはエピジェネティック変化(DNA配列の変化を伴わない遺伝子の変化)を介して活性化されたDAPK-Beclin1経路でのオートファジー誘導により「タンパク質恒常性」を維持することで、細胞老化に伴う変化を回復させることが明らかとなりました。(図3、4)
     

    図3:ハス胚芽エキスはオートファジーマーカーLC3-II(隔離膜タンパク質)の発現を誘導しました。この作用はオートファジーシグナルタンパクATG7の排除により低下したことから、ハス胚芽エキスはオートファジー誘導作用を示したと考えられました。図3:ハス胚芽エキスはオートファジーマーカーLC3-II(隔離膜タンパク質)の発現を誘導しました。この作用はオートファジーシグナルタンパクATG7の排除により低下したことから、ハス胚芽エキスはオートファジー誘導作用を示したと考えられました。

    図4:ハス胚芽エキスは細胞老化により蓄積するAGEs量を低下させたことからオートファジー誘導作用を介してAGEsの分解を促進したと考えられました。図4:ハス胚芽エキスは細胞老化により蓄積するAGEs量を低下させたことからオートファジー誘導作用を介してAGEsの分解を促進したと考えられました。

     

     

  • 皮膚線維芽細胞の重要な働きの一つであり、老化依存的に減少するⅠ型コラーゲン及びヒアルロン酸の産生について、コラーゲンゲルを用いた3次元培養において、ハス胚芽エキス処理により増加することが確認されました。(図5)
     

    図5:ハス胚芽エキスは、コラーゲンゲルを用いた3次元培養時に、細胞老化に伴うI型コラーゲンとヒアルロン酸産生低下を抑制したことから老化に伴う細胞機能の低下を抑制したと考えられました。図5:ハス胚芽エキスは、コラーゲンゲルを用いた3次元培養時に、細胞老化に伴うI型コラーゲンとヒアルロン酸産生低下を抑制したことから老化に伴う細胞機能の低下を抑制したと考えられました。

     

3.考察
本研究では、老化した皮膚線維芽細胞において、主要な老化マーカーの発現に先立ってミトコンドリア機能が低下することを確認し、ハス胚芽エキスにミトコンドリアの再活性化を促進する作用を見出しました。さらにオートファジーの再活性化を介したタンパク質恒常性の維持、老化した皮膚線維芽細胞におけるⅠ型コラーゲンおよびヒアルロン酸の産生低下回復など、ハス胚芽エキスが老化による皮膚機能の低下を改善する、つまり肌を「若返らせる」可能性が示唆されました。
ハス胚芽エキスは、本研究にて検討された作用メカニズムによって、老化に伴うシワやたるみ、乾燥などを予防・改善する効果が期待されます。
丸善製薬では、これらの知見を化粧品原料の研究開発や、皮膚機能のさらなる解明に応用してまいります。

参照
※1 IFSCC 2022技術発表タイトル
Rejuvenation of aging skin fibroblast via restoration of disrupted proteostasis by Nelumbo Nucifera Germ Extract.
(ハス胚芽エキスは破綻したタンパク質恒常性を正常化することで老化皮膚線維芽細胞を若返らせる)

※2 論文情報
Lotus germ extract rejuvenates aging fibroblasts via restoration of disrupted proteostasis by the induction of autophagy.
(ハス胚芽エキスはオートファジーを誘導することで失われたタンパク質の恒常性維持機構を回復し、老化線維芽細胞を若返らす)
Kayo Machihara et al., Aging (Albany NY). 2022 Sep 26;14(19):7662-7691 DOI:10.18632/aging.204303
本論文はオープンアクセスです。以下リンクより全文が確認いただけます。
https://www.aging-us.com/article/204303/text

【会社概要】
商号  : 丸善製薬株式会社
代表者 : 代表取締役社長 日暮 泰広
所在地 : 広島県尾道市向東町14703-10
設立  : 昭和24年7月13日
事業内容: 医薬品、医薬品用素材抽出物、医薬部外品用素材抽出物、
化粧品用素材抽出物、食品添加物、食品、食品用素材抽出物、
健康食品、健康食品用素材抽出物の製造販売
資本金 : 9,800万円
URL  : https://www.maruzenpcy.co.jp

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