<アデランス研究開発チームが発見した研究成果を世界に向けて発信> ディープラーニングを応用した「毛髪プロテオーム解析」により脱毛症患者に特徴的なタンパク質を発見

株式会社アデランスのプレスリリース

 毛髪・美容・健康のウェルネス事業をグローバル展開する株式会社アデランス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長 津村 佳宏)は、毛髪のプロテオーム解析※技術を用いて、男性型脱毛症および女性型脱毛症に特徴的なタンパク質を発見することに成功しました。本研究成果を、2022年11月18日(金)~21日(月)にオーストラリアのメルボルンで開催された第12回世界毛髪研究会議「World Congress for Hair Research(WCHR2022)」にて発表しました。
※プロテオーム(生体試料における全てのタンパク質)の構造や機能を解析すること

 今回の研究では、当社が持つ毛髪の成分を分析する技術に、ディープラーニングを掛け合わせることで、毛髪に含まれる莫大なタンパク質の検出が可能になる「毛髪プロテオーム解析」を確立しました。この技術を用いて毛髪中のタンパク質を解析することで、脱毛症の毛幹において、TGM3というタンパク質が少なかったことを確認しました。今後は毛髪におけるTGM3の機能を追求し、この結果をヘアケア商品に応用して脱毛症を改善するための研究を続けて参ります。

 男性型脱毛症は成人男性が発症する脱毛症で、額の生え際や頭頂部から徐々に薄毛・抜け毛が進行する疾患です。男性型脱毛症の治療薬は、複数存在するものの効果に個人差があること、副作用が生じるなどの課題があります。一方、女性型脱毛症では、その具体的な発生メカニズムが明らかになっていないため、有効な治療法の開発が進んでいません。

 当社では創業50年以上に亘り培ってきた毛髪技術を応用し、男性型脱毛症および女性型脱毛症でお悩みの方が心よりご満足できるソリューションの提供を目指して、日々研究に取り組み、これらの深刻な課題の解決に取り組んでいます。

研究背景
 毛髪は、地肌から出ている部分を「毛幹」、地肌の中にある部分を「毛包」といいます。毛髪は「毛包」の先端にある毛乳頭から指令を受けた毛母細胞が分裂し、毛髪が変化(角化)することで作られます。毛乳頭が毛細血管から取り込んだ栄養や多様な細胞内の成分は、角化とともに固定化されていき、毛髪に長期間残存。この毛髪の構成成分は80%以上がケラチンというタンパク質だといわれていますが、ケラチン以外のタンパク質に関してあまり明らかになっていません。
 当社はこれまで毛髪中に含まれるミネラルやアミノ酸などの多種多様な成分を正確かつ効率よく抽出し分析する技術の開発を進めて参りました。この技術に加え、近年、発達が目まぐるしいディープラーニングを掛け合わせることで、毛髪に含まれる莫大なタンパク質を検出する方法、「毛髪プロテオーム解析」を確立しました。このプロテオーム解析は、他の研究チームの約10倍ものタンパク質の数を同定することができ、毛髪中のタンパク質の解明に有効です。

研究方法
 非脱毛症の男性5名、男性型脱毛症5名、女性型脱毛症4名を対象に、各被験者の頭頂部と後頭部からAnagenの毛幹を採取し、これらの毛髪検体のプロテオーム解析を実施しました。取得データを用いて、非脱毛症と脱毛症の毛幹を比較し、脱毛症のキーとなるタンパク質を探索しました。

研究成果
脱毛症の毛幹において、ケラチン抽出量が多かった
 脱毛症の毛幹は、非脱毛症より多くのケラチンを抽出することを確認しました(図1)。ケラチンがより多く抽出されたということは、ケラチン同士の結合が弱いということを示しています。ケラチン同士の結合は、毛髪に硬さを与える一つの要素として知られていることから、脱毛症は非脱毛症と比較し、毛髪自体もろくなっていることが示唆されます。

図1 非脱毛症と脱毛症の毛幹に含まれるケラチンの抽出量図1 非脱毛症と脱毛症の毛幹に含まれるケラチンの抽出量

脱毛症の毛幹において、毛髪形成に重要なタンパク質TGM3が少なかった。
 脱毛症の毛幹において、TGM3というタンパク質が少なかったことを確認しました(図2)。TGM3に関する既報文献は数少ないですが、TGM3が全く存在しないマウスの毛がくせ毛になりうねりが観察された報告 (John S ら、2012) があります。脱毛症のAnagenの毛幹とうねりの因果関係については追加解析を開始しております。

図2 非脱毛症と脱毛症の毛幹に含まれるTGM3の量図2 非脱毛症と脱毛症の毛幹に含まれるTGM3の量

 今後は、莫大な数を検出したタンパク質のうち、TGM3と関係のあるタンパク質を同定することを目標とします。

学会の概要
学会名称 :第12回世界毛髪研究会議 [The 12th World Congress for Hair Research] 会  期 :2022年11月18日(金)~11月21日(月)
会  場 :Melbourne Convention and Exhibition Centre
      (オーストラリア、ビクトリア州、メルボルン)
演  題 :New findings in androgenetic alopecia and female androgenetic alopecia are revealed 
                  by proteomics.
      [プロテオミクスによる男性型脱毛症・女性型脱毛症の新たな知見の獲得] 発 表 者:株式会社アデランス 研究開発部 杉元 啓悟

  アデランスは、トータルヘアソリューションにおけるリーディング企業の使命として、経営理念の一つである「最高の商品」の開発および毛髪関連業界の発展を目指し、機能性人工毛髪や医療用ウィッグの研究開発、育毛・ヘアスカルプケア関連研究、抗がん剤脱毛抑制研究など、毛髪に関連した多種多様な研究を積極的に取り組んでおります。
 その研究の成果を国内外の学会にて発表することは、毛髪関連業界の更なる進展となり、ひいては多くの方の髪の悩みの解消だけでなく心身の健康にも寄与することを期待しています。

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