ギリアド・サイエンシズのプレスリリース
sacituzumab govitecan-hziyについて、 欧州医薬品庁が治療歴のあるHR陽性HER2陰性転移性乳がんに 対する製造販売承認申請を受理
-第III相TROPiCS-02試験の統計学的有意かつ臨床的に意義のある
全生存期間および無増悪生存期間の結果に基づく申請– -米国FDA、生物製剤承認事項一部変更申請を優先審査中-
ギリアド・サイエンシズ(本社:米国 カリフォルニア州フォスターシティ、ナスダック:GILD、以下「ギリアド」)は1月3日、sacituzumab govitecan-hziyについて、転移性乳がんで内分泌療法をベースとする治療および2つ以上の全身療法を受けた、切除不能または転移性ホルモン受容体(HR)陽性ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性(IHC スコア0、IHC スコア1+、またはIHCスコア2+/ISH検査陰性)の成人乳がん患者さんの治療薬として、欧州医薬品庁(EMA)が、タイプII変更承認申請(MAA)を受理したことを発表しました。
ギリアドのオンコロジー部門治療領域責任者で、上級副社長のビル・グロスマン
(Bill Grossman, MD, PhD)は、次のように述べています。「ギリアドのオンコロジー領域の大きな目標は、がんとともに生きる人々のケアを変革することです。sacituzumab govitecan-hziyは既に、この目標に向けて前進しており、欧州全体における転移性トリプルネガティブ(TNBC)乳がんの二次治療の標準治療に変化をもたらしています。今回、治療歴のあるHR陽性HER2陰性転移性乳がんを対象とする当社の申請が受理されたことは、治療選択肢が非常に限られているより多くの患者さんに、sacituzumab govitecan-hziyが届く可能性が広がる重要な一歩となります」
本承認申請は、sacituzumab govitecan-hziyについて、主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)および重要な副次評価項目である全生存期間(OS)を、医師が選択した化学療法(TPC)と比較する登録第III相TROPiCS-02試験のデータに基づいています。PFSデータは、Journal of Clinical Oncologyで発表され、OSデータは、2022年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表されました。
TROPiCS-02試験におけるsacituzumab govitecan-hziyの安全性プロファイルは過去の試験と一貫性を示しており、この患者集団において、安全性に関する新たな懸念は確認されませんでした。
2022年10月、米国食品医薬品局(FDA)は、転移性乳がんで内分泌療法をベースとする治療および2つ以上の全身療法を受けた、切除不能な局所進行性または転移性HR陽性HER2陰性(IHCスコア0、IHCスコア1+、またはIHCスコア2+/ISH検査陰性)の乳がん成人患者さんの治療薬として、sacituzumab govitecan-hziyの生物製剤承認事項一部変更申請(sBLA)の優先審査を受理しました。処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)に基づく審査終了の目標期日は現在、2023年2月とされています。
sacituzumab govitecan-hziyは、HR陽性HER2陰性転移性乳がん治療薬として、いずれの規制当局からも承認されておらず、本適応症における安全性および有効性は確立されていません。
sacituzumab govitecan-hziyについては、重度または生命を脅かす好中球減少症および重度の下痢に関する枠組み警告があります。その他の重要な安全性情報については、後述をご参照ください。
HR陽性HER2陰性転移性乳がんについて
ホルモン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HR+/HER2-)乳がんは、乳がんの中で最も多いタイプで、全新規症例の約70%を占め、毎年、世界中で40万人近くが新たに診断されています。早期乳がんのほぼ3例のうち1例の患者さんが最終的に転移性となり、HR+/HER2-転移性乳がん患者さんの5年相対生存率は30%です。HR+/HER2-転移性乳がん患者さんは、内分泌療法に耐性を示すようになるため、主な治療選択肢は単剤化学療法に限定されます。このタイプの乳がんは、治療中に複数の化学療法を受けるのが一般的ですが、患者さんの予後は依然として良好ではありません。
TROPiCS-02試験について
TROPiCS-02試験は、内分泌療法とCDK4/6阻害剤および転移性疾患に対して2~4つの化学療法による治療歴のあるHR+/HER2-転移性乳がん患者さん543名を、医師が選択した化学療法(エリブリン、カペシタビン、ゲムシタビン、ビノレルビン)またはsacituzumab govitecan-hziyに1対1の割合で無作為に割り付けた国際共同、多施設、非盲検、第III相試験です。主要評価項目は、化学療法を受けた患者さんと比較し、sacituzumab govitecan-hziyを投与された患者さんにおける、盲検独立中央判定(BICR)による固形がんの治療効果判定規準(RECIST 1.1)に基づくPFSとしました。副次評価項目には、OS、ORR、クリニカルベネフィット率、奏効期間(DOR)および安全性、忍容性、生活の質(QOL)が含まれます。本試験では、米国臨床腫瘍学会(ASCO)および米国病理学会(CAP)の基準に従い、免疫組織化学(IHC)スコアが0、IHCスコア1+、またはIHCスコア 2+でin situハイブリッド形成法(ISH)検査が陰性の場合をHER2陰性と定義しました。
TROPiCS-02試験の詳細については、https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03901339をご参照ください。
sacituzumab govitecan-hziyについて
sacituzumab govitecan-hziyは、ファースト・イン・クラスのTrop-2を標的とした抗体薬物複合体です。Trop-2は、乳がんおよび膀胱がんの90%以上を含む複数のがん種で高発現する細胞表面抗原です。sacituzumab govitecan-hziyは、トポイソメラーゼI阻害剤であるSN-38のペイロードを独自の加水分解性リンカーで抗体に結合できるよう意図的に設計されています。この独自の組み合わせにより、Trop-2発現細胞と微小環境の両方に強力な活性をもたらします。
sacituzumab govitecan-hziyは、2つ以上の全身療法歴があり、そのうち少なくとも1つは転移性疾患に対する治療歴を有する切除不能な局所進行性または転移性TNBC成人患者さんの治療薬として、40カ国以上で承認されており、世界各国で規制当局による複数の審査が行われています。米国においてsacituzumab govitecan-hziyは、プラチナ製剤を含む化学療法とプログラム細胞死受容体-1(PD-1)またはプログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)阻害剤による治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がん(UC)成人患者さんの治療薬として、迅速承認制度に基づき承認されました。
また、他のTNBC、転移性UC、HR+/HER2-転移性乳がん、転移性非小細胞肺がん(NSCLC)、転移性小細胞肺がん(SCLC)、頭頸部がん、および子宮内膜がんを含むTrop-2が高発現するさまざまながん種に対する治療薬として開発が進められています。
米国におけるsacituzumab govitecan-hziyの適応について
米国では、以下の治療が適応とされています。
2つ以上の全身療法歴があり、そのうち1つ以上は転移性疾患に対する治療歴を有する、切除不能な局所進行性または転移性TNBCの成人患者。
プラチナ製剤を含む化学療法およびPD-1阻害剤、またはPD-L 1阻害剤の投与歴がある局所進行または転移性UCの成人患者。本適応症は、奏効率および奏効期間に基づき迅速承認されました。本適応症の承認を継続するには、検証的試験で臨床ベネフィットを検証し、説明することが条件となります。
米国におけるsacituzumab govitecan-hziyに関する重要な安全性情報
枠組み警告:好中球減少症および下痢
重度または生命を脅かす好中球減少症が生じる可能性があります。好中球絶対数が1500/mm3以下の場合や発熱性好中球減少の場合は、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中止してください。治療中は定期的に血球数を測定してください。二次予防のためにG-CSFを検討してください。発熱性好中球減少症の患者には、遅滞なく感染症治療を開始してください。
重度の下痢が生じる可能性があります。下痢が生じた場合には、患者の様子を観察し、必要に応じて水分と電解液を投与してください。重症度を問わず初期の下痢に対して、禁忌でなければアトロピンを投与し、遅発性の下痢の発現時には、感染性の原因を評価し、陰性の場合は速やかにロペラミドの投与を開始してください。重度の下痢が発生した場合は、グレード1以下になるまでsacituzumab govitecan-hziyの投与を中断し、その後は投与量を減らしてください。
禁忌
sacituzumab govitecan-hziyに対する重度の過敏症反応
警告および使用上の注意
好中球減少症:重度、生命を脅かす、または致命的な好中球減少症が発生する可能性があり、投与量の変更が必要になる場合があります。sacituzumab govitecan-hziyの治療を受けた患者の61%に好中球減少症、47%の患者にグレード3~4の好中球減少症、7%の患者に発熱性好中球減少症が認められました。いずれかのサイクルの第1日目に好中球絶対数が1500/mm3以下の場合、またはいずれかのサイクルの第8日目に好中球数が1000/mm3以下の場合、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中止してください。発熱性好中球減少が発生した場合は、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中止してください。
下痢:sacituzumab govitecan-hziyを投与された全患者の65%に下痢の症状がみられました。12%の患者において、グレード3~4の下痢が認められました。1名の患者に下痢の後の腸管穿孔がみられました。好中球減少性大腸炎は0.5%の患者に認められました。グレード3~4の下痢が認められた場合、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中止し、グレード1以下に回復した時点で投与を再開してください。発現時には感染性の原因を評価し、陰性の場合は速やかに初回に4mg、その後は下痢のたびに2mg、最大で1日16mgまでロペラミドを投与してください。下痢が治まってから12時間後にロペラミドを中止してください。 臨床的に必要であれば、追加の支持療法(例:水分と電解液の補給)を受けることができます。治療に対して過剰なコリン作動性反応を示す患者は、その後の治療のために適切な前投薬(例:アトロピン)を受けることができます。
過敏症および注入に伴う反応:sacituzumab govitecan-hziyで、生命を脅かすアナフィラキシー反応を含む重篤な過敏症反応が発現しています。重篤な徴候・症状には、心停止、低血圧、喘鳴、血管性浮腫、腫脹、肺臓炎、皮膚反応などがあります。投与後24時間以内に、37%の患者において過敏症反応が発現しました。グレード3~4の過敏症は、患者の2%に発現しました。sacituzumab govitecan-hziy投与の永続的な中止に至った過敏症反応の発現率は0.3%でした。アナフィラキシー反応の発現率は0.3%でした。前投薬が推奨されます。投与中および投与終了後少なくとも30分間は、過敏症および注入に伴う反応について患者を注意深く観察してください。このような反応を治療するための薬や緊急用の器具をすぐに使用できるようにしてください。注入を伴うグレード4の反応がみられた場合は、sacituzumab govitecan-hziyの投与を永続的に中止してください。
悪心および嘔吐:sacituzumab govitecan-hziyの投与を受けた全患者の66%に悪心が発現し、このうち4%にグレード3の悪心がみられました。39%の患者に嘔吐が認められ、このうち3%の患者にグレード3~4の嘔吐がみられました。化学療法誘発性の悪心・嘔吐(CINV)の予防のために、2剤または3剤の併用療法(例:デキサメタゾンと5-HT3受容体拮抗薬またはNK1受容体拮抗薬のいずれか、および適応となる他の薬剤)で前投薬するようにしてください。グレード3の悪心またはグレード3~4の嘔吐に対してはsacituzumab govitecan-hziyの投与を中止し、グレード1以下に回復した時点で追加の支持療法を用いて再開してください。臨床的に必要な場合には、制吐剤およびその他の支持療法を追加することができます。全ての患者に対し、悪心と嘔吐の予防および治療に関する明確な指示とともに、自宅で服用する薬剤を処方してください。
UGT1A1活性の低下した患者における副作用リスクの上昇:ウリジン二リン酸-グルクロノシルトランスフェラーゼ1A1(UGT1A1)*28対立遺伝子がホモ接合体の患者において、好中球減少症、発熱性好中球減少症および貧血のリスク、sacituzumab govitecan-hziyによるその他の副作用のリスクも高くなる可能性があります。グレード3~4の好中球減少症の発現率は、UGT1A1*28対立遺伝子がホモ接合体の患者で67%、UGT1A1*28対立遺伝子がヘテロ接合体の患者では46%、野生型対立遺伝子がホモ接合体の患者では46%でした。グレード3~4の貧血の発現率は、UGT1A1*28対立遺伝子がホモ接合体の患者では25%、UGT1A1*28対立遺伝子がヘテロ接合体の患者では10%、野生型対立遺伝子がホモ接合体の患者では11%でした。UGT1A1の活性の低下が認められた患者については、副作用を注意深く観察してください。UGT1A1の機能低下を示す可能性がある、急性の早期発症または異常に重度の副作用が認められた患者においては、観察された副作用の発現、持続時間および重症度の臨床的評価に基づいて、sacituzumab govitecan-hziyの投与を中断、または永続的に中止してください。
胚・胎児への毒性:その作用機序から、妊婦に投与すると催奇形性および/または胚・胎児致死を引き起こす可能性があります。sacituzumab govitecan-hziyは遺伝毒性成分であるSN-38が含まれており、急速に分裂する細胞を標的としています。妊婦や妊娠可能な女性には、胎児への潜在的なリスクについて説明してください。妊娠可能な女性には、sacituzumab govitecan-hziyの投与中および最終投与後6カ月間は有効な避妊法を使用するよう指導してください。妊娠可能な女性パートナーを持つ男性患者には、sacituzumab govitecan-hziyの投与中および最終投与後3カ月間は有効な避妊法を使用するよう指導してください。
副作用
ASCENT試験(IMMU-132-05)において、最も多くみられた副作用(発現率25%以上)は、倦怠感、好中球減少症、下痢、悪心、脱毛症、貧血、便秘、嘔吐、腹痛、食欲減退でした。1%以上の頻度で認められた重篤な副作用(SAR)は、好中球減少症(7%)、下痢(4%)、肺炎(3%)でした。27%の患者においてSARが報告され、5%の患者が副作用により治療を中止しました。ASCENT試験で最も多く認められたグレード3~4の臨床検査値異常(発現率25%以上)は、好中球数、白血球数、リンパ球数の減少でした。
TROPHY試験(IMMU-132-06)において、最も多くみられた副作用(発現率25%以上)は、下痢、倦怠感、好中球減少症、悪心、感染症、脱毛、貧血、食欲減退、便秘、嘔吐、腹痛、発疹でした。5%以上の頻度で認められたSARは、感染症(18%)、好中球減少症(12%、うち発熱性好中球減少症は10%)、急性腎障害(6%)、尿路感染(6%)、敗血症または菌血症(5%)でした。SARは44%の患者で報告され、10%が副作用により治療を中止しました。TROPHY試験で最も多かったグレード3~4の臨床検査値異常(発現率25%以上)は、好中球数、白血球数、リンパ球数の減少でした。
薬物相互作用
UGT1A1阻害剤:UGT1A1阻害剤とsacituzumab govitecan-hziyを併用すると、SN-38の全身曝露量が増加する可能性があるため、副作用の発現率が高まる可能性があります。UGT1A1阻害剤とsacituzumab govitecan-hziyの併用は避けてください。
UGT1A1誘導剤:UGT1A1誘導剤を併用している患者において、SN-38への曝露量が大幅に減少する可能性があります。UGT1A1誘導剤とsacituzumab govitecan-hziyの併用は避けてください。
枠組み警告文を含む完全な処方情報を参照してください。
ギリアド・サイエンシズについて
ギリアド・サイエンシズは、全ての人々にとって、より健康な世界の実現を目指し、30年以上にわたり医療の革新を追求し、飛躍的な進歩を遂げてきたバイオ医薬品企業です。当社は、HIV、ウイルス性肝炎、がんなどの生命を脅かす疾患の予防と治療のため、革新的な医薬品の開発に取り組んでいます。カリフォルニア州フォスターシティに本社を置き、世界35カ国以上で事業を展開しています。
将来予測に関する記述
本プレスリリースは、1995年の「民事証券訴訟改革法」に記載されている「将来予測に関する記述」に該当し、いくつかのリスク、不確定要素、その他の要因を含む場合があります。これらのリスク等には、臨床試験を予定されたスケジュールで開始、進行および完了するギリアドの能力、sacituzumab govitecan-hziyに関する進行中および追加の臨床試験から好ましくない結果が得られる可能性、sacituzumab govitecan-hziyの治療歴を有するHR+/HER2-転移性乳がん治療薬として適応拡大に向けた進行中のsBLAおよびMAAや、転移性TNBC、転移性尿路上皮がん(mUC)、HR+/HER2-転移性乳がん、NSCLC、SCLC、頭頸部がんおよび子宮内膜がんの治療薬として進行中もしくは将来の申請を含め、規制当局へのsacituzumab govitecan-hziyに関する申請および承認を、現在予定しているスケジュールで進められるか
についての不確実性、治療歴を有するHR+/HER2-転移性乳がん治療薬として、FDAまたはECによる承認を含む、ギリアドがこれらの適応に対して適時に承認を得る能力、または全く得られない可能性、あるいは、そのような承認が使用に関して重大な制限を受ける可能性が含まれます。また、ギリアドがこのような適応症に対するsacituzumab govitecan-hziyの開発中止を戦略的に決定し、結果としてsacituzumab govitecan-hziyの本適応症が全く商業化されない可能性、または上記いずれかの根拠となる仮定も含まれます。これらの、またその他のリスク、不確実性、その他の要因については、米国証券取引委員会に提出済の2022年9月30日を期末とするギリアドの四半期報告書(フォーム10-Q)に詳しく記載されています。これらのリスクや不確実性、およびその他の要因により、実際の結果が「将来予測に関する記述」と著しく異なる可能性があります。歴史的な事実以外の全ての記述は「将来予測に関する記述」と見なされる可能性があります。このような「将来予測に関する記述」は将来の業績を保証するものではなく、リスクと不確実性を含むものであり、「将来予測に関する記述」に過度に依拠することのないよう注意してください。「将来予測に関する記述」は全て、ギリアドが現在入手できる情報に基づいており、ギリアドは、「将来予測に関する記述」を更新する義務は負わず、更新する意向もありません。