下着についた尿の「におい」はアンモニア臭ではない!? 尿のにおいの調合に成功!

東京都立産業技術研究センターのプレスリリース

 都産技研((地独)東京都立産業技術研究センター)は、これまで確認が難しかった「尿のにおい(尿臭)」の消臭効果を評価するために、尿臭を再現した試薬「模擬尿臭」と、その消臭効果を評価する方法の開発に成功しました。
 この技術により(株)プロテック「ナノファイン100」※の消臭効果が実証され、男性向け下着に採用されました!尿漏れによる臭いの悩みを解決する商品です。
※ナノファイン:糸・生地・製品などに含ませることで洗濯しても抗菌機能を持続させる「ナノ粒子酸化亜鉛抗菌加工剤」
 
 

 ◆ 「尿のにおい」の消臭効果を調べる方法は難しい

 菌やウイルスの対策など「におい」対策グッズが増えていますが、「尿のにおい(尿臭)」は個人・環境の差や衛生面から実際の尿を使った実験ができません。試薬(模擬臭)や評価方法がないことから、「下着についた尿臭」の抑制・消臭効果の評価をすることは困難でした。
 
消臭効果の検証に使用する装置 (におい分析システム)
 

 ◆  開発のポイント

・(株)プロテックが都産技研に下着などに付着した尿臭について相談したことをきっかけに、共同研究に発展。
・臭気判定士の資格を持つ研究員が、下着に付着した尿臭を再現した模擬尿臭の開発と尿臭の評価方法の確立に成功 (特許出願中)。
 
尿臭対策に期待できる男性向け下着の製品化
本技術によって尿臭に対する消臭効果を確認した「ナノファイン100」を使った男性向け下着の製品化が決定
 
 
従来の抗菌効果に加え、 新たに消臭効果を確認した 「ナノファイン100」を採用製品化した男性向け下着 (三和(株)提供) 2023年2月24日発売開始
 
(株)プロテックとの共同研究開発秘話を、都産技研の機関紙「TIRI NEWS」3月号(最新号)でご紹介しています。
「TIRI NEWS」3月号(最新号)
 

技術解説

 都産技研は、リアルな尿臭を模擬した試薬「模擬尿臭」と「消臭効果を評価する方法」を開発しました。この技術により、繊維製品用加工剤の「ナノファイン100」が「下着についた尿のにおい」に消臭効果があることを検証できました。
 
 

抗菌・防臭と消臭◆

 近年、菌やウィルスの対策グッズなどで目にする機会が増えた抗菌製品ですが、抗菌とは「菌の増殖を抑える」効果のことを示します。この効果によって、菌から発生する臭いを抑えることもできることから、抗菌製品は防臭効果が期待できます。一方、さまざまな製品が販売されている消臭製品に含まれる消臭効果は、発生した臭いを何らかの方法で消す効果のことを示します。つまり、抗菌・防臭効果と消臭効果は全く異なる性能ですが、この2つの効果を併せ持つ製品が誕生すれば、臭いに対してより効果的な製品になることが期待できます。そこで、今回の研究では、抗菌・防臭+消臭効果をもつ繊維製品加工剤の開発を進めました。
 

「模擬尿臭」は人間の記憶を頼りに調合しました◆

 尿臭への効果を検証するうえで必要となった模擬尿臭は、ヒトの嗅覚を使った官能評価により完成しました。これは、「尿臭だ!」と判断するのは人間の脳(記憶)であり、分析機器にはできないためです。特に、尿臭のようなさまざまな成分が混合してできた複合臭の評価は、人間の嗅覚が最も得意とする分野です。そのため、人間がイメージする尿臭を作るためには、人間を使って評価するしかありませんので、「調合→評価」を繰り返し、最終的に多くの方がイメージする尿臭の調合に成功しました。この技術は特許出願中です。
臭気判定士による嗅覚試験

「ナノファイン」とは

 ナノファイン100を含むナノファインシリーズは、㈱プロテック(港区)が開発・販売している繊維製品用加工剤で、制菌性能(抗菌機能より高度な技術)が特徴的な酸化亜鉛を主成分とした製品です。洗濯しても機能が持続することが特徴の一つであり、さまざまな素材の繊維製品の形状や用途に併せて使用できることから、多くの製品の加工剤として活躍しています。
 
 
製品化した男性向け下着製品化した男性向け下着
 
 都産技研では、繊維製品や生活雑貨品などにおける「におい」に関連した評価試験を実施しています。臭気判定士の資格を持つ研究員による相談や、「におい分析システム」、「におい識別装置」を使った異臭分析・におい強度・消臭性試験など、実際にお客さまの状況に応じた試験をご提案します。
 

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