「練馬のみどりで森林浴」が心身に与える効果の検証

Momo統合医療研究所のプレスリリース

Coもれび(東京都練馬区代表上野美知子)は、Momo統合医療研究所医師・医学博士 木村理砂(東京都新宿区)、慶應義塾大学理工学部(神奈川県横浜市)満倉靖恵氏監修の下、練馬の緑豊かな公園における森林浴が心身に与える影響について調査を実施しました。結果、都市部の公園で森林浴体験をすることはストレスの軽減や精神健康度の向上に寄与する可能性が示唆されました。本調査は練馬区との協働事業である“ねりまのみどりってこんなに素敵!プロジェクト”(Coもれび)および公益社団法人国土緑化推進機構 緑と水のファンド助成事業(Momo統合医療研究所)として実施されました。
Coもれびは、ケアラーズカフェを原点とする練馬区の地域活動団体(2014年設立)であり、23区内で初めて長野県信濃町の森林メディカルトレーナーの協力を得て、五感を開いて心身のリズムを整える森林浴体験会を継続的に練馬区内の公園において開催しています。2022年12月、ねりま森林浴シンポジウムを開催し、区内外約100名の参加者と都会の森の森林浴効果を共有し今後の活用を考察しました。2023年5月からはねりま森林浴トレーナー育成講座を開始します。

【調査概要】
1・調査の目的
都内練馬の森での森林浴が心身に与える影響について調査を行いました。調査の内容としては、森林浴を行った時の感情変化を脳波計測による感性把握技術を用い感性を計測、また、心拍変動解析による自律神経測定を実施しました。心理的気分状態やWellbeingについては森林浴前後にアンケート調査を実施しました。

2.  調査概要
実施日:   2022年5月23日(月)午前・午後
実施場所: 練馬区石神井公園・三宝寺池
対象者:   一般公募により募集。健常な成人20名 (男性9名、女性11名)が参加
                   参加者の年齢は、20代3名、30代4名、40代3名、50代6名、60代4名
実施内容: 長野県信濃町の森林メディカルトレーナーのガイドのもとで森林浴を体験

3.  調査内容
1)   脳波測定

・使用機材: 感性アナライザ(慶応大学理工学部 満倉靖恵教授)
・調査方法: 森林浴の前、中、後にそれぞれ5分間安静のうえ、脳波計による感性計測を行ない、森林浴を通じて参加者の感性がどのように変化したかを計測しました。慶応大学理工学部満倉靖恵教授が開発した脳波から感性へ変換するアルゴリズムにより、ストレス度、集中度、好き度、興味度、鎮静度を0-100の数値として測定し、リアルタイムに感性変化を評価することが可能です。脳波計は装着しやすいバンド型で、ワイヤレスでの計測が可能であるため、対象者に大きな負荷をかけず、様々な場面で脳波計測を実施することが可能となります。
・結果:
以下のグラフは、森林浴の実施前、中、後の感性値の推移を示しています。

 

ストレス度の高さは、森林浴前>森林浴後>森林浴中となっており、森林浴中のストレス度下がる傾向がみられました(前 vs 中の差が-4.88%, 有意傾向あり(p=0.05))。

興味度は、森林浴中は森林浴前と比較して有意に向上しており、集中度は森林浴後に有意に高まっていました。

森林浴によってストレス度が下がり、興味度が高まり、森林浴後はリラックスして集中が下がった可能性が考えられました。

2)   自律神経測定
・使用機材: Silmee(TDK製)、心拍変動解析により自律神経の状態を測定
・調査方法: 森林浴の前、中、後にそれぞれ5分間安静のうえ、自律神経測定を実施
・結果:交感神経優位性を示す指標であるLF/HFの値が森林浴中に有意に低下し、森林浴後も持続していました。
    森林浴により、交感神経が鎮まりリラックスした状態になっていた可能性が考えられます。

3)   自覚的健康状態
調査方法:自覚的健康状態をVisual Analog Scaleを用いて測定しました。森林浴の前後で実施し、得点を比較しました。
結果:すべての項目において有意に、ポジティブな状態は向上し、ネガティブな状態は改善する結果となりました。活力、やる気、元気、という状態に加え、思いやりや満足、幸福、穏やか、という状態も高まり、森林浴を行うことによってよりWellbeingな状態になっている可能性が考えられます。

4)   気分状態
調査方法:気分状態をPOMS2(Profile of Mood Status2)を用いて測定しました。森林浴の前後で実施し、得点を比較しました。
結果:すべての項目において有意に、ポジティブな気分状態は向上し、ネガティブな気分状態は改善する結果となりました。森林浴を通して、抑うつ不安、怒り、疲労が低下し、活気や友好といった活力が出ている状態になっている可能性が考えらえました。

 5)   人生満足度(Wellbeing)
調査方法:SWLS(Satisfaction With Life Scale)を用いて測定しました。森林浴の前後で実施し、得点を比較しました。
結果:森林浴後のSWLS得点は、森林浴前と比較して向上している傾向がみられました。中でも「私の人生は、とても素晴らしい状態だ」という項目においては、前後で有意な得点の向上(実施前平均5.10±0.64点、実施後平均5.65±0.99点)がみられました。森林浴はWellbeingを向上させる可能性が考えらえました。

■調査結果全体のまとめ
・今回の調査によって、都内の練馬区の公園における森林浴の心身への影響が以下のように示されました。
1)   感性の状態として、森林浴中はストレスが下がり、興味が高まること、森林浴後はストレスが下がり、集中力が下がっている状態(リラックスによる可能性)がみられました。
2)   自律神経のバランスはLF/HFが森林浴中から低下し、より交感神経が鎮まりリラックスした状態になったことが推測されました。
3)   精神健康においては、森林浴前後で抑うつ不安、怒り、疲労などといったネガティブな気分状態が改善し、活気、友好、元気、思いやり、満足、幸福、穏やかといったポジティブな気分状態が向上していました。
4)   森林浴により、Wellbeingの向上の可能性が示唆されました。
 ・今回の調査は対象者数が少数ではあり、今後、より多くの被験者に対して、また、他の公園などにおいても同様の調査を行う必要があると考えます。
・過去の調査によって、より遠方の深い森林環境における森林浴や保養により同様の結果が示されています。また、月1回以上森林散策を行うとメンタルヘルス不良発生の予防になる、という報告もあります(Morita 2015, 公益社団法人総合健康推進財団助成事業報告書)。今回、都内の緑の多い公園における森林浴でも上述のような心身に対する効果が示唆されたことは、メンタルヘルスを保ち、向上させるための日常生活におけるセルフケアに、「身近な公園など緑の多い場所で森林浴を行うこと」、が選択肢の1つとして取り入れられる可能性を示唆しています。
・今回、長野県信濃町の森林メディカルトレーナーのガイドのもとで森林浴を実施しました。トレーナーは自然の中での五感を使った過ごし方を提案します。Coもれびでは2023年5月からトレーナー育成事業も計画しており、今後、都内近郊の公園におけるより質の高い森林浴を体験できる機会の創出・拡大につながることが期待されます。
・Coもれびは、2023年5月にねりま森林浴トレーナー育成講座をスタートし、多くのねりま森林浴トレーナーの誕生と活動により、ひとの健康、地域の健康、森の健康を目的とする活動や都会の身近な森の森林浴と地方の深い森の森林浴とをつなぐ活動も展開していく予定としています。

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