【三省製薬News Letter】竹から化粧品成分とEV車の蓄電池材料を開発する九州工業大学との産学研究の進捗!

三省製薬のプレスリリース

【 三省製薬 News Letter 】

 

九州工業大学との産学連携プロジェクトが着々と進捗!

 

竹を原材料に、「化粧品の美容成分」と「電気自動車の蓄電デバイスの電極材料」開発が進行、

今後は実証・事業化に向けた次のステップへ!

 

 美容成分の開発・製造・販売とオリジナル通販化粧品ブランド「デルメッド」、「yameKAGUYA」を展開する三省(さんしょう)製薬株式会社(本社:福岡県大野城市 代表取締役社長:陣内宏行)では、当社の企業・事業動向やトピックスをニュースレターとして定期的に発信しています。

 

 本ニュースレターでは、当社と九州工業大学(本部:福岡県北九州市 学長:尾家祐二 ※以下、九工大)の産学連携プロジェクトの進捗状況をお伝えします。

 


 当社は、福岡県と九州大学との産官学連携プロジェクトにより、福岡県八女産の竹「モウソウチク」の“表皮”から美白サポート成分「竹幹表皮エキス」の抽出に成功。これを配合した化粧品シリーズ「yameKAGUYA」を2019年より展開しています。

 

 そして昨春より、新たなプロジェクトとして九州工業大学の大学院工学研究院・坪田敏樹准教授の研究室との共同研究をスタートしました。今回は、竹の表皮を削り取った後の竹の”幹”部分から、段階的に「化粧品の美容成分」と「電気自動車用の蓄電デバイスの電極材料」を製造・事業化することを目指す産学連携の取り組みです。

 

 当プロジェクトで三省製薬は「化粧品の美容成分」の研究開発を、坪田研究室は「電気自動車の蓄電デバイスの電極材料」の研究開発を担ってきましたが、このたび、いずれも一定の研究成果をあげることができました。

 

 

研究成果のポイント

 

<1> 竹の幹を粉末化させ、加圧熱水処理をした水溶液から、「保湿性」に加え、エイジングケア作用が期待される「抗酸化性」も有する美容成分として利用できる可能性が示された。

 

<2> 上記水溶液の残りかす(残渣)を賦活処理することにより、実用性を試す価値のある「電気自動車用の蓄電デバイスの電極材料」を作製できることがわかった。

 

 

 今後、<1>については化粧品への配合に向けた研究、<2>については、実用性の検証に取り組んでいきます。

 

 この共同研究により、竹から「段階的に複数の高付加価値製品を製造する」という「竹のカスケード利用(*1)」を実証することができました。水のみを利用した安全性が高く環境負荷の小さい技術である点も特徴で、循環型社会に向けた一助にもなると考えられます。

 

*1: バイオマスやエネルギーを使用した後の資源や廃棄物を別の用途に段階的に使う「カスケード利用」は、高レベルの利用から低レベルへの利用に活用するのが一般的とされています。例えばサトウキビから黒糖を抽出し、その後、燃料や飼料・肥料にする等です。一方、今回の取り組みは、バイオマスから分野の異なる高付加価値製品を段階的に製造するという点で、高付加価値創造型のカスケード利用といえます。

 

 

共同研究の概要

 

 竹の表皮を削り取った後の竹幹を材料とし、以下のようなスキームで研究を進めました。

 

①まず、三省製薬が竹幹の加圧熱水処理を行い、竹の中のヘミセルロース(*2)をオリゴ糖に変換した水溶液を作製。

②その水溶液からオリゴ糖の一種であるキシロオリゴ糖を抽出し、美容成分への応用と化粧品への製品化に向けた研究開発を行う。

③九工大は、加圧熱水処理を実施した後、セルロース(*3)及びリグニン(*4)を主成分とする残りかす(固体残渣)から活性炭を作り出し、高性能電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造に取り組む。

 

*2 ヘミセルロース:植物細胞壁に含まれる、セルロースを除く水に対して不溶性の多糖類の総称。

*3 セルロース:植物細胞の細胞壁・植物繊維の主成分をなす多糖類。

*4 リグニン:植物中にセルロースなどと結合して存在する高分子化合物。細胞壁に堆積して木質化を起こし、植物体を強固にする。

 


 

研究成果<1> 概要 (三省製薬)

 

「保湿性」に加え、エイジングケア作用が期待される「抗酸化性」も有する美容成分として利用できる可能性が示された。

 

 

「保湿性」の確認

 開発当初は、竹幹の中のヘミセルロースをオリゴ糖に変換した水溶液の「保湿性」に主眼を置いて研究を進めていました。その結果、竹幹の粉を180~200℃で加圧熱水処理することにより、ヘミセルロースの大部分は、「保湿性」を有するキシロオリゴ糖を主成分とした低分子物として回収できることがわかりました。

 

「抗酸化性」の発見

 研究を進めていく中で、加圧熱水処理後の水溶液には、多くのリグニンも可溶化(*5)していることもわかりました。低分子可溶化したリグニンには、その分子構造中に多くのフェノール性水酸基(*6)が含まれていたため、加圧熱水からの抽出物に抗酸化性を示す可能性が出てきました。そこで竹を加圧熱水処理する温度を様々に試し、抽出物の抗酸化性について調べたところ、180℃以上の抽出物で顕著に活性が確認できました。

 

酸化物質「SOD1(*7」の発見

 通常の植物エキスよりも抽出方法にこだわっているため、何らかの効果はあると期待しながら研究を進めました。抗酸化作用だけではなく、特徴的なエイジングケア機能を探り、様々な機能の遺伝子に関する文献を調べ、遺伝子発現を実際に評価していく中で、ようやく抗酸化物質「SOD1」の発現増加を確認することができました。

 

 そこからさらに研究を重ねることで、最終的には、体が本来持っている抗酸化機能を底上げして、酸化ストレスに強くなるという結果を導くことができました。紫外線などによる酸化ストレスを抑えることにより、エイジングケア作用が期待されます。

 

今後の取り組み

 +αとなる機能性付与として、「竹幹エキス」を既存の化粧品に配合することでリニューアル化粧品としたり、「yameKAGUYA」シリーズに配合するなど、商品化を目指した研究開発を進めていきます。

 

*5 可溶化:溶媒に溶解しない物質を透明かつ均一に溶解させること。

*6 フェノール性水酸基:高分子ポリフェノールは、分子内に複数のフェノール性水酸基を持つ化合物で、多くの植物に含まれている。低分子化したポリフェノールは、その水酸基が活性酸素やフリーラジカルと反応することができるため、抗酸化作用を示す。

*7  SOD1:酸素に依存する生物の細胞内で発生する有害な活性酸素であるスーパーオキシドを解毒する反応系を触媒する酵素。SOD1は3種あるSODのうち銅,亜鉛を配位する酵素。

 

 

研究成果<2> 概要 (九州工業大学)

 

実用性を試す価値のある「電気自動車用の蓄電デバイスの電極材料」を作製できることがわかった。

 

実用性を試す価値のある活性炭を作製

 竹幹を160℃~220℃の条件で加圧熱水処理を行った後の固体残渣をKOH(水酸化カリウム)賦活すると、いずれの試料もⅠ型の吸着等温線を有する活性炭となりました。また、180℃で加圧熱水処理をした試料のBET比表面積(*8)の値は最大で2770m2g-1でした。いずれの温度で加圧熱水処理をした試料も、大きなBET比表面積の値であることから、160℃~220℃の温度領域で加圧熱水処理を行った竹の残渣は、KOH賦活により活性炭を作製できることが確認できました。

 

 活性炭の静電容量をサイクリックボルタンメトリー測定(*9)および定電流充放電測定(*10)という手法で測ったところ、掃引速度が小さい、または電流密度が小さい(ゆっくりとした放充電に対応)の場合には、十分に大きな値を示しました。これは実用セルで試す価値のある値でした。

 つまり、表皮を除去した竹の加圧熱水処理残渣から、KOH賦活によって実用セルで試す価値のある電気二重層キャパシタ電極材料(電気自動車用の蓄電デバイスの電極材料)を作製できることがわかりました。

 

今後の取り組み

 今後は、実用性の確認に向けた研究を進めていきます。

 

*8 BET比表面積:ガス吸着により見積られる表面積、粉体等の評価に使用される。

*9 サイクリックボルタンメトリー測定:電極電位を直線的に掃引し、応答電流を測定する手法。

*10 定電流充放流測定:一定の電流値で充電、放電を繰り返してサイクル特性などを評価する電池の試験方法。

 

 

竹由来の化粧品シリーズ「yameKAGUYA」に取り組む三省製薬の想い。

 

yameKAGUYA」で地元の放置竹林対策に貢献

 

 三省製薬は、「よりよい成分 よりよい化粧品4.0」をコンセプトに掲げ、美容成分の開発から化粧品の製造まで一貫して手掛けています。今春には「ものづくり宣言」を発表し、「エシカル、エコ、サステナビリティ、ダイバーシティ」といった考えを取り入れたものづくりを進めています。

 

 今回の取り組みは、竹由来の「よりよい成分」開発に向けた取り組みであると同時に、放置竹林問題という社会課題解決に向けた取り組みでもあります。福岡県八女市は日本一のタケノコ生産量を誇る一方、近年は放置竹林問題が顕在化していました。これまで廃棄されていた竹の有効活用が広がることを期待しています。

 

 発売以来、「yameKAGUYA」は、多くのお客さまより好評をいただき、今年3月には福岡県八女市役所の林業振興課に売り上げの一部を寄付しました。今後も事業を通じた社会貢献だけではなく、地域社会と一体となって、社会のサステナブルな発展に貢献していきたいと考えています。

 

 

循環型社会に貢献するアップサイクル化粧品「yameKAGUYA」

 

 「yameKAGUYA」は、三省製薬が化粧品素材の原料化(美容成分の開発)から有効性試験、製品化まで一貫して手掛けた化粧品シリーズです。

 

 本来廃棄されていた素材(竹の表皮)から美容成分「竹幹表皮エキス」を独自開発し、化粧品として製品化しました。従来のリサイクルという概念を超え、素材から付加価値を創造し、新ジャンルの製品に変換するという点で、循環型社会に貢献するアップサイクル化粧品といえます。

 

 現在の商品アイテムは、フェイスウォッシュ、フェイスローション、フェイシャルエッセンス、ボディソープ、ボディーローションの5種。 全アイテムに美白サポート成分「竹幹表皮エキス」を配合しています。原料となる竹は福岡県八女産の特産品「モウソウチク」で、有機JAS認証・無農薬栽培の竹のみを使用しています。さらに、アイテムごとに三省製薬オリジナルの植物由来エキスを 最適な組み合わせで配合。その処方にも、より確かな効果を追求しています。

 販売は公式サイト(https://yamekaguya.com/)の他、九州エリアでの各種催事にも随時出展しています。

その他TOPICS : 三省製薬の美容成分新情報

 

九州大豆から抽出した新美容成分「豆乳発酵液」に“美肌菌育成効果”を確認!

 

 九州産の大豆「フクユタカ」を使用して開発したオリジナル美容成分「豆乳発酵液」に、美肌に導く善玉菌を育てる効果があることを発見しました。ポイントは、美肌菌を増やしつつも、悪玉菌は増やさないこと。善玉菌を増やすことで肌のバリア機能を高め、しっとり潤う健康的な肌に導くことが期待されます。ヒト試験によっても、美肌菌育成効果を確認しています。

 

*2021年7月にリニューアル新発売した「デルメッド ルーセントパウダー」に配合しています。

 

●美肌菌育成効果

豆乳発酵液を表皮ブドウ球菌含有培地に添加し、菌の増殖率を測定(当社調べ)

 

 

三省製薬(株) 会社概要 

■社 名      三省製薬株式会社(Sansho Pharmaceutical Co.,Ltd.)

■創 業      1960年3月

■代表取締役社長  陣内 宏行

■資本金      8,767万円

■売上高      25億9,600万円(2021年3月期現在) 

■事業所      本社

           〒816-8550 福岡県大野城市大池2丁目26番7号

          東京オフィス

           〒107-6218 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウンタワー18F 

                  ワークスタイリング内

          佐賀工場(化粧品原料製造および化粧品製造業者としてCOSMOS認証取得工場)

           〒841-0048 佐賀県鳥栖市藤木町5番1

■事業内容     化粧品原料の開発、製造、販売

          医薬部外品・化粧品の開発、製造、販売(通信販売・OEM)

■社員数      140人(パート社員含む)

■URL       https://www.sansho-pharma.com/

          https://www.dermed.jp

 

九州工業大学 坪田敏樹准教授プロフィール

所属 工学研究院 物質工学研究系

   1972 生まれ

   2000年 博士 (工学) 九州大学

   1994年 九州大学工学部応用化学科卒業

● 研究テーマ:「バイオマスから高機能な炭素材料を創製する」

 ・電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の開発

 ・植物の組織構造を活用した細孔制御された多孔質炭素材料の創製

 ・竹のカスケード利用による複数の高付加価値製品の製造

● 分野 : 炭素材料

● 知的財産権(技術シーズ)

 ・電気二重層キャパシタの製造方法 特許5846575

 ・電気二重層キャパシタ分極性電極用炭素材料の製造方法 特許5652636

 ・ICソケット用接触子及びその製造方法 特許4797180

 ・紐状炭素及びその利用方法並びにその製造方法 特許5193432

● 研究室ホームページ  http://www.ccr.kyutech.ac.jp/professors/tobata/t4/t4-2/entry-734.html

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