資生堂、「たるみ」改善の鍵となる立毛筋の活性化に抗重力システム「ダイナミックベルトTM」に沿ったストレッチが有効であることを発見

株式会社資生堂のプレスリリース

~皮ふ内部に存在する立毛筋の流れに着目したIFSCC4大会連続最優秀賞受賞の最新知見~

 資生堂は、国際医療福祉大学 医学部形成外科学 松﨑恭一主任教授と、自治医科大学 生理学研究所との共同研究により、「たるみ」を引き起こす重力に抵抗する、皮ふ内部の抗重力システム「ダイナミックベルトTM」に流れがあることを発見しました。また、その流れに沿って皮ふを伸展(ストレッチ)することで、立毛筋※1 が活性化することを確認し、たるみ改善に繋がる可能性を見出しました。さらに、当社は立毛筋を構成する平滑筋細胞を活性化する成分として、甘草抽出物と木苺果実由来の抽出液が有用であることを確認しました。

 本研究は、R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、シミ・くすみ、しわ、たるみ、毛穴など、長年に渡りお客さまが悩む「不変の肌悩み」の原因を解明しソリューションを開発することを目的として進めました。研究成果の一部は、「第31回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)※2 横浜大会(2020/10/21-30)」で発表し最優秀賞を受賞しており、他の「抗重力サイエンスV」知見と合わせて4大会連続での最優秀賞受賞を実現しています。

※1 立毛筋: 立毛筋は毛に付着する不随意筋(自分の意思で動かせない筋肉)で、寒冷や情動などの刺激により収縮して、毛を逆立たせる大きな力を発揮する筋肉です。研究チームは、この毛と皮ふの表層付近を繋ぐ筋肉が、変形時の皮ふの動きを制限することで、変形に抵抗することを明らかにしています。

※2 IFSCC:The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists

立毛筋群(赤い構造)の配向により、顔の皮ふにはダイナミックベルトTMの流れが存在する(青矢印)(イメージ図。立毛筋のサイズや数、色などは実際と異なる。また、額部のダイナミックベルトTMの流れには個人差があり、ここでは典型例を記載。)

《資生堂の「たるみ」への取り組みと抗重力システム「ダイナミックベルトTM」に対するアプローチ》

 資生堂は「たるみ」の予防や改善を目的とし、そのメカニズムについて解明を進めています。当社が開発した皮ふの構造だけではなく、動きまでをも捉える 4 次元的な皮ふ解析技術「4D デジタルスキンTM」を活用し、皮ふのたるみを引き起こす重力に、皮ふが抵抗するシステムを発見しました。これは皮ふ内部には高密度に立毛筋※1 が存在し、物理的に皮ふの変形に抵抗する、という仕組みであり、「ダイナミックベルトTM」と呼ぶこととしました。さらに、このダイナミックベルトTMが加齢により衰えることで、たるみに繋がることも解明しています。そこで今回、研究チームはこの衰えたダイナミックベルトTMに対するアプローチの開発に取り組みました。

《新発見1:顔の皮ふには、重力に抵抗する「ダイナミックベルトTM」の流れが存在する》

 加齢で衰えたダイナミックベルトTM、すなわち立毛筋群にアプローチするためには、それが顔の皮ふでどのような状態にあるかを知ることが重要です。皮ふの外側から、立毛筋を観察する十分な方法はありません。そこで立毛筋の構造を立体的に解析した結果、立毛筋の向きは「うぶ毛」の向きとほぼ一致していることがわかり(図1)、うぶ毛の向きを観察することで、立毛筋の向きを確認することが可能となりました。顔面のうぶ毛の観察の結果、立毛筋の向き、すなわち立毛筋が生み出す物理的な力(ダイナミックベルトTM)には、図2のような流れがあることがわかりました。この知見を活用し、衰えた立毛筋に対する効果的なアプローチの探索を進めました。

左) 皮ふを側方から見たCT像。ピンク色の部分が立毛筋、グレーの棒状の構造がうぶ毛の毛包。これを下側、即ち皮ふの内側から観察(矢印)した画像が右図となる。右) 皮ふを内側から見たCT像。一番奥に見えるのが表皮の内側。点線で、立毛筋とうぶ毛の向きを表示。その向きはほぼ一致することがわかる。

《新発見2:ダイナミックベルトTMの流れに沿ったストレッチが、たるみ改善の鍵となる》

 立毛筋を活性化することは、加齢で衰えたダイナミックベルトTMの回復に繋がると考えました。そこで、皮ふを培養して様々な刺激を加えたところ、立毛筋の向きに沿って皮ふを伸展(ストレッチ)することで、立毛筋が活性化されることがわかりました (図3)。このことから立毛筋、すなわちダイナミックベルトTMの流れに沿ったストレッチを行うことで、ダイナミックベルトTMと、たるみの改善に繋がる可能性が考えられます。

皮ふの断面像。点線に挟まれた部分 (右図では点線より上の部分)が立毛筋。皮ふを立毛筋の向きに合わせて伸展(ストレッチ)することで、活性化した状態が誘導された(右図;矢印の増加)。青い点は細胞(核)。

《新発見3:立毛筋を活性化する成分》

 資生堂はこの成果を応用し、立毛筋を構成する平滑筋細胞を活性化する成分を探索し、甘草抽出物と木苺果実由来の抽出液に、その効果を見出しています※3(図4)。

※3 特許出願中(PCT/JP2021/006473)

《まとめと今後の展望》

 マスク着用のルールも緩和され、多くのお客さまが関心を寄せる顔の「たるみ」。四半世紀に渡り、たるみ研究のパイオニアとして業界をリードしてきた資生堂は、今回、たるみの原因である重力に抗うシステムとして顔面に存在する立毛筋の流れに沿ったストレッチなどが、加齢とともに衰える立毛筋を活性化し、顔のたるみを改善する可能性があることを発見しました。これらの知見を今後当社のスキンケア商品へと応用し、お客さまの期待を超えるビューティー体験を提供します。本研究の成果は、2023年7月31日からストックホルムにて開催される、欧州生物物理学会(European Biophysical Societies’ Association: EBSA)にて発表します。

R&D戦略について:

本研究は、R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、シミ・くすみ、しわ、たるみ、毛穴など、長年に渡りお客さまが悩む「不変の肌悩み」の原因を解明しソリューションを開発することを目的として進めました。

・2022年統合レポート(ビューティーイノベーションパート)

https://corp.shiseido.com/report/jp/2022/value_creation/innovation/?rt_pr=trn23

・キーワード

Skin Beauty INNOVATION、不変の肌悩み、たるみ

《参考:資生堂が取り組んできた「たるみ」研究とのその成果》

 これまで資生堂は、四半世紀近くに渡り、フェロー研究員 江連智暢を中心に、ほうれい線やマリオネットライン、フェースラインの乱れなど、加齢に伴う顔かたちの変化「たるみ」について、最先端の解析手法を開発・活用しながら、その現象と要因を明らかにしてきました。研究成果として、顔の形状を支える「アンカー構造」、加齢に伴う「真皮の空洞化現象」、真皮の細胞が織りなす「線維芽細胞ネットワーク」、そして重力に抗うシステムである立毛筋の流れ「ダイナミックベルトTM」を発見しました。これらの研究成果は国際的・学術的にも高く評価され、国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)が開催する学術大会で4大会連続最優秀賞を受賞しました。当社ではこれら4知見を「抗重力サイエンスV」と称し、スキンケアへ応用して、多くのお客さまが悩む「たるみ」へとアプローチしています。

<アンカー構造について>

資生堂、世界で初めて顔の形状を支える肌構造を解明(2015年)

https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001927/1927_w4y67_jp.pdf?rt_pr=trn23

<真皮の空洞化現象について>

資生堂、加齢に伴う真皮の空洞化が顔のたるみに繋がることを発見(2015年)

https://corp.shiseido.com/jp/releimg/2512-j.pdf?rt_pr=tr437

加齢に伴う真皮空洞化のメカニズムを解明(2016年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000001958&rt_pr=trn23

<ダーマルセルネットワークについて>

資生堂、真皮の細胞が織りなす『線維芽細胞ネットワーク』を解明(2020年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002898&rt_pr=trn23

<ダイナミックベルトについて>

資生堂、皮膚の抗重力システム「ダイナミックベルトTM」を発見(2022年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003506&rt_pr=trn23

<皮膚内部の解析手法の開発について>

資生堂、AI を活用した皮膚解析の新技術『デジタル 3D スキンTM  』を開発 (2020年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002897&rt_pr=trn23

資生堂、動きまで再現した電子皮膚 TM 「4DデジタルスキンTM 」を開発(2021年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003257&rt_pr=trn23

《参考:研究員紹介》

■世界の化粧品研究開発のトップランナー:江連智暢フェロー

資生堂の創業以来、唯一フェローの称号を有する研究員。国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)本大会で 4 大会連続の受賞をはじめ、欧州研究皮膚科学会、日本美容皮膚科学会等、国内外の様々な学会で受賞。2022年IFSCCロンドン大会では、皮膚のエイジング研究について基調講演を行った。老化による顔かたちの変化「たるみ」の研究領域をパイオニアとしてリードし続けている。著書に『顔の老化のメカニズム』(日刊工業新聞社)、『新しいスキンケア』(日刊工業新聞社)、『他人目線でたるみケア』(講談社)がある。

《参考:マスクを外した時気になる肌悩みとは(生活者調査結果より)》

 2023年5月より、COVID-19の感染症としての分類が変更になり、屋外生活を中心に、マスク着用ルールが緩和されている日本。資生堂では、45~69歳の女性1000名を対象とし、「新型コロナウイルス流行前より悪化した・増えたと感じる肌悩み」について調査を実施しました。その結果、1位は「ほお・フェースラインのたるみ」(28%)であり、また、3位には「口もとのたるみ」(22%)がランクインしていました。マスク生活による顔の下半分の「たるみ」に悩む生活者の多さが伺えます。

《R&D理念『DYNAMIC HARMONY』のアプローチ》

 本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のInside/Outsideというアプローチで研究を進めています。「たるみ」という顔の見た目の老化(Outside)に、最先端の皮ふ解析技術で迫り、その原因を肌内部(Inside)から明らかにし、ソリューションを進化させていきます。

R&D 理念「DYNAMIC HARMONY」とは

・資生堂、独自の R&D 理念「DYNAMIC HARMONY」を制定(2021年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003252&rt_pr=trn23

・「DYNAMIC HARMONY」特設ページ

https://corp.shiseido.com/jp/rd/dynamicharmony?rt_pr=trn23

▼ ニュースリリース

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003621&rt_pr=trn23

▼ 資生堂 企業情報

https://corp.shiseido.com/?rt_pr=trn23

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。