資生堂、エクトインがメラトニン合成を促進し肌の免疫機能強化へと導く可能性を発見 ~肌の免疫リズムに着目したアプローチで過酷環境にも揺らがない健やかな肌へ~

株式会社資生堂のプレスリリース

 資生堂は、抗酸化・抗炎症効果を有するホルモン「メラトニン」の肌での合成が夜間に高まること、そして、「エクトイン※1」が、肌におけるメラトニン合成酵素遺伝子の発現を促進することを発見しました。メラトニンは脳だけではなく肌でも合成され、紫外線や活性酸素などのダメージから肌を守ることが知られています。これらのことから、夜間に合成が高まるメラトニンの合成が促進されることで、ダメージ因子と戦う「肌の免疫機能※2」の強化が期待できます。

 本研究成果は、肌の免疫リズムに着目した新たなスキンケアの価値創造に向けて応用し、お客さま一人ひとりの美しさを引き出し、健やかな肌を守り抜くことを目指します。

※1 砂漠の塩湖に生息する微生物の体内で発見された環状アミノ酸の一種。過酷な環境においても細胞の安定性を保ち、生命を守る成分。肌の保水効果をもつ成分としても知られる。

※2 肌の免疫機能:紫外線によって発生する活性酸素など、肌にダメージを与えうる因子から肌を守り、健やかな肌を維持する機能のこと。

《肌の免疫研究について》

 肌を健やかで美しく保つためには、肌本来の力を引き出し、肌の生命力を高める恒常性(ホメオスタシス)を維持することが重要です。当社は、この肌の恒常性を維持するための一つとして、肌の免疫を司るランゲルハンス細胞が重要な役割を担っていると考えています※3。肌への刺激や肌内部に侵入した異物、さらに肌内部で発生した肌トラブルを引き起こす因子から肌を守り、過酷な環境においても健やかな肌を守る「肌の免疫機能」に着目した研究を進めてきました。

※3 資生堂、加齢による皮膚免疫力変化のメカニズムの一端を解明 (2020年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002984&rt_pr=trn87

《生体リズムと肌の免疫機能》

 私たちの身体には、体内時計と呼ばれる仕組みがあり、夜になると眠り、朝には目覚めるという24時間のリズムを刻みます。当社の先行研究において、睡眠を中断することで、時計遺伝子や自律神経、ホルモンなどのリズムが乱れ、皮脂分泌量や角層水分量の低下などといった肌にも悪影響が起こることを2010年に明らかにしています※4。また、肌の機能も24時間のリズムを刻んでおり、日中は皮脂分泌量が多く、夜間には皮膚バリア回復能が低下することや、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現が夜間に高まることなどを発見してきました※5。加えて、肌で働く免疫細胞の一種であるランゲルハンス細胞の活性が24時間のリズムを刻み、日中に防御能を上げることも見出しており、今回は肌の免疫機能をさらに発展させ、どんな時にも健やかな肌を維持できる状態を目指し、夜間に着目して研究に取り組みました。

※4 第35回日本睡眠学会「睡眠一時中断が生体リズムと皮膚状態に与える影響」(2010年)

※5 第133回日本薬学会「皮膚機能遺伝子HAS2およびFLGの概日リズム性発現」(2013年)

《肌におけるメラトニン合成のリズム》

 本研究では、メラトニン合成酵素の遺伝子発現の1日の中でのリズムに着目しました。メラトニンはアミノ酸のトリプトファンを材料とし、セロトニンを経て合成されます。脳で合成されるメラトニンは、睡眠の質にも関わることが知られ、その合成が夜に高まることが知られています。一方、メラトニン合成に関わる酵素は皮膚でも発現していることが知られています。今回、メラトニン合成に関わる酵素の遺伝子発現リズムを調べた結果、メラトニンの最終合成を担うASMT遺伝子の発現が、夜間に最も高まることがわかりました(図1)。

ASMT(肌でのメラトニン合成関連遺伝子)の遺伝子発現が、BMAL1(夜に発現が高まる遺伝子)と同様の変化をし、PER1(昼に発現が高まる遺伝子)とは逆の動きをしていることから、肌でのメラトニン合成は夜に高まることが示された。

《メラトニン合成を促進するエクトインの発見》

 次に、肌におけるメラトニン合成酵素遺伝子の発現を高める成分を広く探索しました。その結果、エクトインに肌の細胞におけるメラトニン合成酵素遺伝子発現を高める効果があることを発見しました(図2)。夜間に合成が高まるメラトニンの合成が促進されることで、その抗酸化・抗炎症効果により肌がダメージ因子と戦う、肌の免疫機能の強化が期待できます。

《肌の免疫リズムに着目した新たなスキンケア価値の創造》

 今回、資生堂が長く取り組んできた肌の免疫と生体リズムの研究を組み合わせることで、夜間における肌でのメラトニン合成遺伝子の発現の高まりと、その発現を促進するエクトインの効果を発見しました。本成果を新たなスキンケアの価値創造に向けて応用し、Personal Beauty Wellness Companyの実現を目指します。

《R&D戦略について》

 本研究は、R&D 戦略 3 本柱の 1 つである「Future Beauty INNOVATION」のもと、生体リズムなど、肌と身体とのつながりに着目した、「ホリスティックアプローチ」領域の研究として進めました。

・2022 年統合レポート(ビューティーイノベーション)

https://corp.shiseido.com/report/jp/2022/value_creation/innovation/?rt_pr=trn87

・キーワード

Future Beauty INNOVATION、ホリスティックアプローチ、生体リズム

▼ ニュースリリース

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003680&rt_pr=trn87

▼ 資生堂 企業情報

https://corp.shiseido.com/?rt_pr=trn87

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