バナナの摂取時間帯比較による血糖スパイクおよび糖代謝への作用に関する臨床試験結果「朝のバナナ習慣は、血糖スパイクを起こしやすい?」は誤解!

日本バナナ輸入組合のプレスリリース

朝バナナ摂取群は非摂取群と比較し、血糖スパイク発現率比が有意に低い結果に。朝バナナ摂取群では、過去約2週間の平均血糖の抑制も見られ、糖代謝に関する健康効果に期待。

日本バナナ輸入組合(所在地:東京都千代田区内神田1-3-1 トーハン第3ビル2階、理事長:ケナード・ウォング、以下「当組合」)では、赤坂ファミリークリニック院長・東京大学医学部附属病院医師の伊藤明子先生らの研究グループが行った臨床試験の結果、朝、バナナを摂取することが、非摂取群・夜バナナ摂取群と比較し、血糖スパイク発現率が有意に低い結果となり、血糖の急上昇が起きにくい可能性が確認できたことをお知らせします。

また、同じく、過去2週間の平均血糖(グリコアルブミン)の比較においても、朝バナナ摂取群において有意な低下が見られることがわかりました。

本試験は、2023年1月下旬から2月中旬にかけて実施されたもので、英文誌Archives of Clinical Trials(ISSN 2768-4598)最新号に掲載(Issue 1, Vol. 3, 2023)。(論文の英文タイトル:”The Effect of the Timing of Banana Intake on Postprandial Glucose Spike: Randomized Parallel Group Comparison Study” )

心筋梗塞や脳梗塞などのリスクも高めるとされる「血糖スパイク」。

国民的フルーツ・バナナと血糖スパイクの関係性について検証した初の臨床試験。

1.本臨床試験の背景

「食後血糖スパイク」(あるいは「血糖値スパイク」)は厳密な医学用語ではないものの、食事、またはある食材を摂取した直後から2時間ほどの間に血糖値が急峻に上昇する現象を指します。血糖値が急上昇し血中濃度が急激に上がると、膵臓が大量のインスリンを分泌するため今度は急降下します。この短時間における血糖値の急上昇・急降下は、血糖が大きく低下した場合に食後に眠気やだるさを感じる原因となるほか、膵臓の機能低下による糖尿病の罹患リスクや、血管の内側の壁(血管内皮)が傷むことによる心筋梗塞や脳卒中などの重大な病気になるリスクが高まることが指摘されています。

本試験は、バナナ摂取の有無ならびに1日の中での摂取時間帯と、「血糖スパイク」との関連性について臨床試験を行ったものです。当組合が2005年から毎年実施している「バナナ・果物消費動向調査」では、19年間連続で『よく食べる果物』の第1位にバナナが選ばれており、バナナの健康効果がますます注目を集めています。一方で、血糖スパイクの健康リスクが注目されるようになったことで、甘いフルーツであるがゆえに、「バナナを食べることで、血糖スパイクを引き起こす原因になるのではないか」と考える消費者もいるのではないかということから、今回の試験を行うこととなりました。

バナナの健康効果については、これまでも消化促進作用や抗酸化作用、免疫力を高める作用など多岐にわたる分野の研究が発表されており、ヒトにおいても複数の研究が行われています。しかし、日本人を対象としたバナナ摂取による血糖変動の研究は今までに例がありませんでした。本研究の概要は以下の通りです。

2.本臨床試験の概要

CGM(持続グルコース測定器)

41歳以上60歳未満の明らかな疾病のない男女47名を、朝食時にバナナを食べる群16名(以下、朝バナナ摂取群)、夕食時にバナナを食べる群16名(以下、夜バナナ摂取群)、バナナを食べない群15名(以下、非摂取群)の3つの群に無作為に分類。2週間の試験期間中、被験者には腕にCGM(持続グルコース測定器)のセンサーを装着してもらい、朝と夕の「食前」「食後30分」「食後1時間」「食後2時間」の血糖値測定を行いました。

なお、バナナは、120gを加熱せず生のまま摂取、またいずれの群においても、(バナナ摂取以外の)通常の食事時間および内容は「普段どおり」とし、制限を設けず検証を行っています。

さらに、2週間の試験期間の前後それぞれで、体組成測定、血圧測定、血液検査を実施し、3つの群における介入前後の変化、3つの群間の違いについて統計解析を行いました。

                 

3.本臨床試験結果の主なポイント

朝バナナ摂取群の食後血糖スパイク発現率比は、夜バナナ摂取群と非摂取群に比べ統計学的に有意に低い結果に。

朝食時にバナナを食べることは、夕食時のバナナ摂取や非摂取に比べ、血糖の急上昇が起きにくい可能性を示唆。

今回の試験では食後30分後、1時間後、2時間後の測定にて血糖が140 mg/dLを超えた場合を「血糖スパイク」と定義した上で、その回数を発現数としてカウントし、測定した回数で割ることで朝バナナ摂取群・夜バナナ摂取群、非摂取群それぞれの発現率を求め、ポアソン回帰法にて算出した発現率比で検討を行いました。

その結果、測定回数と血糖スパイクの発現数から、朝バナナ摂取群における血糖スパイク発現率比は朝食後0.1、夕食後0.16となり、夜バナナ摂取群(朝食後:0.10、夕食後:0.18)、非摂取群(朝食後:0.08、夕食後:0.17)に比べて、統計学的に有意に低い結果となりました。

※朝バナナ摂取群(発現率比 P値=0.01、95%信頼区間1.09~2.20)、夜バナナ摂取群(発現率比 P<0.01、95%信頼区間 1.28~2.61)、非摂取群(発現率比 P<0.10、95%信頼区間 1.36~3.04)

食後の血糖スパイクが急激で頻度が多いほど、血管内皮を傷つけ、長期的には心血管疾患のリスクを上げるということが多くの研究結果から分かっており、血糖スパイクの発現は、健康上可能な範囲で回避することが望ましいと言えます。バナナはその甘いイメージから、食べると血糖が上がるイメージが持たれていますが、今回の結果から、朝食にバナナを食べることは、夕食後のバナナや、バナナを食べないことに比べると、血糖の急上昇が起きにくい可能性が示されたと言えます。

<研究チームによる考察>

一般的に、朝食よりも夕食の方がボリュームのある食事になることが多いことから、血糖スパイクも夕食後の方が発現しやすい傾向にあります。今回の試験においても、各群とも朝食後よりも夕食後の方が多く発現が見られましたが、その中でも朝バナナ摂取群の発現率を比率でみたときに他2群よりも低い結果となりました。

要因の一つとしては、バナナの糖質は体内への吸収が緩やかで腹持ちがよいこと、さらにバナナの食物繊維やたんぱく質が作用し、一日に分泌される空腹ホルモンがいくぶん抑制されたことで、自然と夕食のボリュームが抑えられ、結果として血糖スパイクの発現率比に影響した可能性が考えられます。

なお、バナナに限らず、夕食後のデザート習慣は血糖値の上昇に影響を与えやすいことがわかっており、夜バナナ摂取群の発現率が比較的高い結果となった背景には、「夜バナナ摂取群は、夕食の最後にバナナを食べる」という試験デザインの影響があったと考えられます。

朝バナナ摂取群では、過去2週間の平均血糖値の指標であるグリコアルブミンの数値が有意に低下。

朝食時に2週間バナナを継続摂取することで、平均血糖値が下がる傾向が示される結果に。

試験前後に行われた血液検査の結果、採血日からさかのぼって約2週間の平均血糖値を示す指標とされるグリコアルブミンの数値が、朝バナナ摂取群において、介入後に統計学的に有意に低下していることがわかりました。2週間毎朝、朝食時にバナナを摂取することで、平均血糖値が下がる傾向が示されたことになり、朝のバナナ習慣は、糖代謝上の健康効果がより期待される可能性が示唆されたことになります。

各群の介入前後のグリコアルブミンの変化 箱ひげ図

【研究者プロフィール】

伊藤 明子(いとう みつこ)先生

赤坂ファミリークリニック院長・東京大学医学部附属病院小児科医

小児科医、社会医学系専門医(公衆衛生の専門医)。

東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。

NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。

有限会社 アクエリアス代表取締役社長(同時通訳・国際会議運営)、同時通訳者、医学系学会での会議通訳、米国大統領をはじめ多々の国賓の通訳に従事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科卒。近著に「子どもの食事 50の基本」ダイヤモンド社。2児の母。多数のテレビに出演、雑誌メディア掲載。

【その他のバナナの栄養素と機能について】

バナナには、多彩に含まれる栄養成分の働きやその構成によって、「ダイエット効果」など、現代人に求められる様々な健康機能が期待できます。

【概要】

組織名:日本バナナ輸入組合

所在地:東京都千代田区内神田1-3-1 トーハン第3ビル2階

理事長:ケナード・ウォング

設立:1965年(昭和40年)6月15日

URL:https://www.banana.co.jp

事業内容:バナナの輸入調査統計に関する活動・バナナの安全性の知識普及に関する活動・バナナの普及に関する広報活動

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