Craif、新生児の難病 脊髄性筋萎縮症(SMA)の早期発見・治療につながる「迅速で、簡便なスクリーニングキット」についての研究成果が学術雑誌「PLOS ONE」に掲載

Craif株式会社のプレスリリース

 Craif株式会社(所在地:東京都文京区、CEO:小野瀨 隆一、以下Craif)は、Craif Medical Affairs ディレクター 夏目 敦至(名古屋大学 未来社会創造機構特任教授)、名古屋大学 大学院医学系研究科 神経内科学 勝野 雅央 教授、佐橋 健太郎 准教授と共同で脊髄性筋萎縮症(SMA)の早期発見・治療につながる「迅速で、簡便なSMAスクリーニングキット」についての研究を進めてまいりました。この度、研究成果が2024年8月1日付の米国学術雑誌「PLOS ONE」に掲載されました。

■研究成果について

 脊髄性筋萎縮症(SMA)は、SMN1遺伝子エクソン7のホモ接合型欠失が原因で生じる難治性の神経筋疾患です。最近では複数の治療法が開発されており、SMA患者の早期診断と迅速な治療は予後に大きな影響を与えます。現在のSMAスクリーニングテストでは、新生児出生から血液採取までのインターバルや、SMN1と類似遺伝子SMN2の識別の困難さから、SMA疑い例の特定に一定の時間を要します。この問題を克服するため、一般の病院やクリニックでも迅速に実施できる新しいSMAスクリーニングアッセイの開発を目的としました。本研究では、まずエクソン7周辺のSMN1特異的な塩基配列を標的とした100以上のフォワード / リバースプライマーの組み合わせを設計し、それらの特異性と増幅効率を定量PCRで評価し、最適なプライマーペアを特定しました。さらに、非定量PCRとSTH(一本鎖タグハイブリダイゼーション)アッセイを組み合わせることで、簡易的な装置のみでベッドサイドで実施可能なスクリーニングアッセイを開発しました。このアッセイにおいては、青色バンドの出現の有無でSMAか否かを容易に評価することができます。新たに開発されたアッセイの精度と実用性を評価するために、外来クリニックで採取されたSMA患者(5名)とSMA保因者(2名)の唾液検体、およびバイオバンクから購入したSMA患者およびSMA保因者のDNA検体、健康な成人ボランティアの検体を分析しました。 その結果、すべてのSMA患者のDNAと唾液検体でSMN1の欠失が確認された一方で、保因者や健康ボランティアの検体ではSMN1標的領域の存在が示されました。本アッセイは新生児誕生後1.5時間以内に完了することができ、SMA患者が従来よりもさらに迅速に治療を受けることを可能にします。

【研究成果であるSMAスクリーニングキットの動画はこちら】

https://youtu.be/epq3FLtY7uE


■論文情報

・雑誌名:PLOS ONE

・論文タイトル:A rapid and easy-to-use spinal muscular atrophy screening tool based on primers with high specificity and amplification efficiency for SMN1 combined with single-stranded tag hybridization assay

・著者名:Masaki Hirano,Kentaro Sahashi, Yuki Ichikawa, Masahisa Katsuno,Atsushi Natsume

・DOI:10.1371/journal.pone.0308179

・論文リンク:https://journals.plos.org/plosone/div?id=10.1371/journal.pone.0308179


■今後の展望

・前向き臨床試験を開始しており、規模の拡大を予定。2025年以降の実用化に向けて準備

・その場で迅速に標的核酸配列を検出する独自技術を活用し、SMA以外の遺伝性疾患をはじめとした各種疾患のスクリーニングに応用


■SMAに関する現状と課題

 SMAは先天的な遺伝子の変異が原因で多くが乳幼児期に発症し、運動発達が障害され、哺乳や食べ物の飲み込み、呼吸が困難となる神経難病です。治療が施されない場合、死亡に至ることもあります。近年、SMAの運動発達障害を改善する治療法が開発されていますが、病気が発症または進行してからの治療では効果が限定的です。そのため、SMAを発症前や発症後早期に発見し、早期治療に繋げることが極めて重要です。その中で、2023年11月、こども家庭庁は「新生児マススクリーニング検査(*1)」にSMAを追加する方針を固め、将来的には全国で公費による検査が実施されることを目指しています。

 一方で、現行の「SMAスクリーニング検査」は採血と高度な検査設備を必要とするため、専門検査機関を経由して検査結果を受け取るフローが主流になっています。そのため、検査結果が得られるまで約1~2週間を要しており、治療決定までの時間を短縮することが課題と考えられ、出生後すぐに結果が分かることが求められています。

*1.新生児における先天代謝異常などの疾患やその疑いを早期に発見し、発病する前から治療が出来るようにすることを目的とした検査。多くの疾患が公費負担になっていますが、SMAは全国一律の公費負担からは対象外。


■SMAスクリーニングキットについて

概要

採取した唾液を試薬と混合し、簡易的にDNAをPCR増幅した後、専用のスクリーニングキットに設置することで、1.5時間以内にその場でSMAのスクリーニングを実施できる検査

特徴

・特殊な検査設備が不要で、簡易な操作で使用可能なため、産科クリニックなどでも実施可能

・新生児誕生後1.5時間以内にその場で検査結果を確認可能

・低侵襲に採取可能な唾液で検査可能

技術的な新規性

・SMAの原因遺伝子だけを高効率に増幅可能な高精度プライマーの開発

・二値判定(陽性/陰性)で判別できる検査設計を実現

検査手順

・STEP1 

採取した唾液を試薬と混合し、簡易的にPCRでDNAを増幅させた反応液のチューブを準備

・STEP2 

チューブをカートリッジ内に差し込むと、設置された剃刀がチューブに切れ込みを入れ、反応液がカートリッジ内に展開

・STEP3 

青色ラインの出現有無を目視で確認し、検査完了

①青色のバンドが2本(SMN1、RPPH1)出現した場合:健常(非SMA)と判定

②青色のバンドが1本(RPPH1)のみ出現した場合:「SMN1」が欠損している可能性が高いため、SMA疑いと判定

■ Craifについて

Craifは、2018年創業の名古屋大学発ベンチャー企業です。尿などの簡単に採取できる体液中から、マイクロRNAをはじめとする病気に関連した生体物質を高い精度で検出する基盤技術「NANO IP®︎(NANO Intelligence Platform)」を有しています。CraifはNANO IP®︎を用いてがんの早期発見や一人ひとりに合わせた医療を実現するための検査の開発に取り組んでいます。


【会社概要】

社名:Craif株式会社(読み:クライフ、英語表記:Craif Inc.)

代表者:代表取締役 小野瀨 隆一

設立:2018年5月

資本金:1億円(2024年3月1日現在)

事業:がん領域を中心とした疾患の早期発見や個別化医療の実現に向けた次世代検査の研究・開発、次世代がんリスク検査「マイシグナル®︎シリーズ」の提供

本社:文京区湯島2-25-7 ITP本郷オフィス5F

URL:https://craif.com/

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