霊芝の胞子油に脳の神経幹細胞を増やす効果を発見

サンザシ、キキョウと組み合わせることで認知機能の向上効果を確認

日本メナード化粧品株式会社のプレスリリース

 日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、長年研究を続けてきた生薬の一つ「霊芝」の胞子から抽出した油(霊芝胞子油)に、神経幹細胞を増やす効果があることを発見しました。さらに、霊芝胞子油に古くから知られている生薬であるサンザシとキキョウの抽出物を組み合わせると、神経幹細胞からの神経新生が促進されることが分かりました。これらの結果から、この3種の生薬抽出物により脳における神経新生を促進させることで、認知機能を高める効果につながると期待されました。そこで今回、この3種の生薬抽出物を3か月間飲用してみたところ、認知機能が高まることを確認しました。

 加齢による認知機能の低下は、脳の海馬に存在する神経幹細胞の増殖と新しい神経細胞の産生(神経新生)が滞ることが関係していると考えられています。メナードではこれまでに、加齢に伴い増加する炎症性タンパク質の一つである「フラクタルカイン」が神経幹細胞からの神経新生を妨げることを明らかにし、このフラクタルカインが認知機能の低下を引き起こしていることを見出しました(*1)。

 この研究結果から、認知機能の改善には①フラクタルカインの分泌を抑え、②神経幹細胞による神経新生を促進する必要があると考えました。今回、これら①、②に対して有用な素材の探索を行ったところ、生薬の一つである「霊芝」の胞子から抽出した油(霊芝胞子油)に神経幹細胞を増殖させる効果を発見しました。さらに、これまでも生薬として活用されてきた「サンザシ」の抽出物に神経幹細胞から新しい神経細胞の産生を促進する効果を、「キキョウ」の抽出物にフラクタルカインの分泌を抑制する効果を発見しました。そして、これら3種の生薬抽出物を3か月間飲用することで、認知機能が高まることが分かりました。この認知機能の改善効果は、フラクタルカインの分泌抑制と、神経幹細胞からの神経新生促進によるものと考えられました。今後は、有効成分の特定を進めつつ、認知機能の改善を目指した新たな技術開発へとつなげてまいります。

 なお、本研究の成果は2024年9月15日から16日にかけて大阪で開催される日本生薬学会第70回年会にて発表します。

*1:ニュースリリース 記憶力を低下させるタンパク質を発見!~神経幹細胞からの神経新生を妨げる「フラクタルカイン」~

https://www.atpress.ne.jp/news/189239

<参考資料>

 1.加齢による認知機能の低下のメカニズムとフラクタルカイン量の変化

 脳の海馬には神経幹細胞が存在し、増殖と神経細胞への分化によって生涯を通じて常に新しい神経細胞を生み出しています(神経新生)。しかし、加齢とともに神経幹細胞による神経新生は衰えてしまうため、認知機能が低下していくと考えられています(図1)。これまでの研究から神経幹細胞の神経新生を抑制する物質として、炎症性タンパク質の一種である「フラクタルカイン」を発見しました(*1)。フラクタルカインは神経細胞や血管内皮細胞から脳内や血中に分泌され、加齢とともに分泌量が増加します。このことから、脳内に分泌されたフラクタルカインが神経幹細胞の神経新生を阻害し、認知機能を低下させると考えられました。

図1. 認知機能低下のメカニズム

 フラクタルカイン量は加齢とともに増加し(図2)、フラクタルカインの分泌量が同年代の人と比べて多い人は認知機能が低いことも分かりました(*2)。このため、加齢による認知機能が低下してしまう原因を根本から取り除くためには、フラクタルカインの分泌を抑制し、神経幹細胞の神経新生を正常にすることが重要であると考えられました。

図2. 加齢に伴う脳内のフラクタルカイン量の増加

*1 : ニュースリリース 記憶力を低下させるタンパク質を発見!~神経幹細胞からの神経新生を妨げる「フラクタルカイン」~

https://www.atpress.ne.jp/news/189239

*2 : ニュースリリース 唾液中のタンパク質から認知機能の低下リスクを予測する技術を発見

https://www.atpress.ne.jp/news/316880

2.神経幹細胞による神経新生を高める生薬の探索

 フラクタルカインは神経幹細胞の神経新生を抑制し、認知機能を低下させてしまいます。そこで、フラクタルカインの分泌を抑制し、神経新生を促進する生薬の探索を行いました。その結果、霊芝の胞子から抽出した油(霊芝胞子油)に神経幹細胞の増殖を促進する効果、「サンザシ」の抽出物に神経幹細胞の神経細胞への分化を促進する効果、「キキョウ」の抽出物にフラクタルカインの分泌を抑制する効果を発見しました(図3)。

 さらに、加齢により神経新生が低下した脳神経モデルに、3種の生薬抽出物を添加したところ、神経幹細胞の神経新生が促進されることを確認しました(図4)。

図3. 生薬抽出物による神経幹細胞の増殖・分化促進効果と、フラクタルカイン抑制効果                 
図4. 3種の生薬抽出物による神経新生の促進効果

3.フラクタルカイン分泌抑制と認知機能を高める3種の生薬の効果

 先の3種の生薬抽出物を含有した飲料を健康な成人(男性32名、女性10名、平均年齢=40.9歳)に3か月間飲用してもらい、飲用前後の唾液中フラクタルカイン量と認知機能について解析を行いました。その結果、飲用前と比較し、唾液中フラクタルカインの分泌が抑えられ(図5A)、認知機能を測定する各種テストのスコアが増加しました(図5B-D)。

 以上のことから、3種の生薬抽出物を含有した飲料は、フラクタルカインの分泌を抑制し、神経幹細胞の神経新生を促して、認知機能を高める効果があることが分かりました。

図5. 3種の生薬抽出物によるフラクタルカインの分泌抑制効果と認知機能の向上効果

※1 記憶能力の測定

画像識別試験(ランダムに表示されるイラストの種類・色・向きを憶えてもらい、数分後に提示したイラストが前に見たイラストと「同じ」か「似ている」か「初めて見る」かの3択で回答させる試験)を行い、短期の記憶能力を測定した。

※2 処理能力の測定

2-back試験(ランダムに表示される図形の順番を憶えてもらい、最後から2番目に表示された図形を6択の選択肢から回答させる試験)を行い、処理能力(ワーキングメモリー)を測定した。

※3 計画能力の測定

ロンドン塔試験(3種類のボールを決められたルールに従って1回ずつ動かすとき、表示されたボールの置き方にするために必要な最少の回数を回答させる試験)を行い、計画能力を測定した。

<3種の生薬>

霊芝胞子

 霊芝はマンネンタケ科のキノコです。メナードは1980年頃から研究を行っており、これまでにも健康維持に役立つ効果を発見し発表してきました。今回、霊芝の種子とも言える胞子に効果を見出しました。

サンザシ

 バラ科の落葉低木で、小さな白い花が咲き、赤い果実をつけます。生薬として重宝され、中国ではお酒やジュース、お菓子など食用としても親しまれています。

キキョウ

 キキョウ科の多年草で、鮮やかな紫色や白色の花を咲かせ、秋の七草の一つに数えられます。根は生薬として使用され、健康維持に役立てられています。

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