ニールワン®を安定に配合し、全顔に使いやすい「用時調製」技術

日本で初めて承認されたシワ改善有効成分「ニールワン」の新剤型

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスのプレスリリース

 ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、従来のニールワン®(※1)配合製剤では難しかった、顔全体にみずみずしく使うことを「用時調製」製剤技術により(※2)実現しました

※1 三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニルメチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸ナトリウム

※2 使用時に2つの製剤を混ぜる製剤技術。


用時調製製剤に着目: 顔全体に使えるみずみずしい感触を目指して 

 日本初のシワ改善医薬部外品の有効成分であるニールワンは、水と接触すると徐々に分解されていくため、安定な状態を長期間保つことができません。そのため、これまでのニールワン配合製剤は水を含まない製剤に限られており、シワ部位に密着しやすい一方で、顔全体へは使用しにくい感触でした。

 そこでニールワンを安定な状態で、かつ顔全体へみずみずしく使える製剤を実現すべく、「用時調製」という使用方法に着目しました。水相と油相に分かれた2剤を使う直前にお客様ご自身が混ぜることで、エマルション(乳化物)が完成します(図1)。これによりニールワンが一定期間安定な状態を保ちながら、顔全体にみずみずしく使用できる使い心地を目指しました。

成分の組み合わせによる物性検討: 乳化後の長期安定性を実現 

 通常の化粧品製造では、工場の製造装置の強力な撹拌力で安定に乳化します。一方、用時調製製剤は手で振るだけの弱い力で簡単に水相と油相が安定に混ざり合うようにしなければなりません。

 これを解決するためのカギとなったのは、製剤の「粘度」です。用時調整時の撹拌性を考慮し、粘度を低く設定してしまうといったん均一に混ざっても分離しやすく、逆に粘度を高く設定すると均一に混ざりません。そこで2剤それぞれにおいて最適な粘度調整成分の組み合わせ及び配合率を見い出しました。さらに、乳化剤の選定や、水相と油相の2剤混合比などを最適化することで、使用開始から使用終了までの想定される期間、安定な状態を保つことに成功しました。

乳化滴のサイズを最適にコントロール: 光学測定技術を駆使して塗布前後の状態観察に成功 

 適度な崩れ感を見出すために、乳化により作られる乳化滴の大きさを顕微ラマン分光分析法を用いて評価しながら調整することで、みずみずしい伸び広がる感触の実現を試みました。(補足資料1)。

化粧品の乳化滴観察に適した条件をさまざまな面から検討した結果、機械で乳化した場合は、製剤中に分散した油滴が細かく、塗布すると油膜が一面を覆ってしまう一方で、人の手で振って混ぜて乳化した場合は乳化滴が大きく、塗布した後も乳化滴が維持されていることが判明しました(図2)。

 さらに、塗布後も乳化滴や水相を残すことができたことで、機械で乳化した場合と異なり、みずみずしく伸び広がる感触を実現することができました(補足資料2)。

                

 ポーラ化成工業では今後も、お客様のニーズに応える新技術の開発を行っていきます。


【補足資料1】 顕微ラマン分光分析法とは

 顕微ラマン分光分析法を用いることで、化粧品中の乳化滴の状態を可視化し、処方設計の最適化を行いました。この技術は、ラマン分光装置と光学顕微鏡を組み合わせた装置を用いて、化粧品に特殊なレーザーを当て、分子構造の違いから各成分の居場所を特定しながら、光学顕微鏡で取得した顕微鏡像と重ね合わせることで、化粧品中の成分分布や状態を非破壊かつ迅速に可視化できる技術です(図3)。本研究では、サンプリング法や測定条件を検討した結果、開発品の観察に成功しました。

【補足資料2】 開発品の実使用テスト結果

 20~50代の専門評価者17名が、2日間にわたって開発品を使って評価した結果を以下に示します。広い範囲に心地よく塗れる感触を目指し、「みずみずしさ」を指標に評価しました。その結果、全ての評価者が感触にみずみずしさを感じると回答。また外観についても同様でした(図4)。これは、「用時調製」式という乳化方法を用いることで、塗布後の適切な油滴の状態を維持でき、優れた実感や透明感のある外観につながったためだと考えています。

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