シス型フコキサンチンの高い紫外線遮蔽作用を実証!

~シス型フコキサンチンを用いたスキンケアの可能性~

パス株式会社のプレスリリース

●本研究のまとめ

・微細藻類から精製したトランス型フコキサンチンを簡便で効率的な加熱処理によって異性化し、シス型フコキサンチンを約42%含むシス型リッチフコキサンチンを作製しました(図1)。

・シス型リッチフコキサンチンはトランス型に比べて紫外線遮蔽作用や一部の抗酸化作用が高いことを明らかにしました(図2、3)。

・シス型リッチフコキサンチンはトランス型と同様に高い抗皮膚老化作用、美白作用をもつことが示されました。

・従来のトランス型よりも高い紫外線遮蔽作用をもつシス型フコキサンチンを用いた製品開発などが期待されます。

図1 (A)トランス型及びシス型フコキサンチンの構造式と(B)トランス型及びシス型リッチフコキサンチンのクロマトグラム。

【研究の背景】

フコキサンチンは、強力な抗酸化作用により、皮膚の健康を促進する効果があることで知られるカロテノイドの一つです。フコキサンチンは主にコンブやワカメなどの褐藻や珪藻類に含まれています。近年、栄養補助食品、医薬品、化粧品におけるフコキサンチンへの期待は高まっています。

カロテノイドは分子構造中に多くの二重結合を持っているため、さまざまなシス/トランス異性体があります。シス型異性体は、トランス型異性体よりもバイオアベイラビリティと組織蓄積効率が高く、抗癌作用や抗炎症作用などの生物学的活性も優れる可能性が報告されています。また、天然食品やサプリメントに最も多く含まれるトランス型カロテノイドを経口摂取しても、小腸から吸収されたトランス型カロテノイドが体内を循環する過程で一部はシス型に異性化され、皮膚などの組織に蓄積することが明らかになっています。

 

【研究内容】

シス型リッチフコキサンチンとトランス型フコキサンチンとの相対的な UV 遮蔽作用を、UV-vis 分光光度計を使用して評価しました。UV-A (320~400 nm) および UV-B (280~320 nm) 領域で 1~40 μM の濃度のフコキサンチンのエタノール溶液に対して実施しました。その結果、シス型リッチフコキサンチンはトランス型に比べて、UV-AおよびUV-B遮蔽作用がそれぞれ約1.4倍、1.8倍高いことが分かりました(図2)。

図2 トランス型とシス型リッチフコキサンチン間の(A)UV-A及び(B)UV-B遮蔽率の比較。

シス型リッチフコキサンチンとトランス型の抗酸化作用を一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオン、および過酸化脂質を調べることによって評価しました。その結果、どちらのフコキサンチンも0.8 μMという非常に低い濃度で50%以上の一重項酸素とヒドロキシルラジカルを消去しました。また、過酸化脂質に関してシス型リッチフコキサンチンはトランス型よりも高い生成抑制作用を示しました(図3)

図3 トランス型とシス型リッチフコキサンチン間の過酸化脂質生成抑制能の比較。

シス型リッチフコキサンチンとトランス型の皮膚の抗老化能力の重要なマーカーである抗エラスターゼ活性と細胞増殖、ヒアルロン酸産生、I型コラーゲン形成促進作用に及ぼす有効性を調査しました。その結果、どちらのフコキサンチンも0.8 μM という非常に低濃度でエラスターゼ活性を約 70 % 阻害しました。また、どちらのフコキサンチンもヒト皮膚線維芽細胞の賦活作用を示しました。

シス型リッチフコキサンチンとトランス型の抗チロシナーゼ活性とメラニン生成抑制作用を評価することにより、シス型異性体の美白効果を調査しました。その結果、どちらのフコキサンチンも6.3 μM以上の濃度でチロシナーゼ活性を有意に阻害し、0.4 μM の濃度で有意に高いメラニン生成抑制作用を示しました。

 

【今後の展望】

本研究によってシス型リッチフコキサンチンは、紫外線遮蔽作用及び抗酸化力などの皮膚の健康に関する生理活性がトランス型と比較して高いことが示されました。こうした知見の蓄積は、フコキサンチン異性体を用いた化粧品や医薬品の製品開発に貢献するものと考えられます。

 

論文詳細

掲載誌:Food Chemistry Advances

    https://www.sciencedirect.com/journal/food-chemistry-advances

表 題:Geometrical isomers of lutein and fucoxanthin: Unveiling their antioxidant potentials and skin-related biological activities

     (ルテインとフコキサンチンの幾何異性体:抗酸化力と皮膚関連生理活性の解明)

著者:Sujan Banik, Antara Ghosh, Tomoyuki Takano, Masao Tsukamoto, Soo Takasu, Masaki Honda

掲載日時: 2024 年 9 月 24 日に電子版に掲載

https://doi.org/10.1016/j.focha.2024.100817

 

◆名城大学について  https://www.meijo-u.ac.jp/

名称:名城大学

住所:愛知県名古屋市天白区塩釜口1丁目501番地

代 表 者:学長 小原章裕

創 立 年:1926年

概要:10学部25学科、9大学院研究科、学生数約15,000人を擁する中部圏では最大規模の総合大学。総合大学の強みを活かし、様々な研究プロジェクトや共同研究・産学官連携を推進。2026年に開学100周年を迎えるにあたり「中部から世界へ 創造型実学の名城大学」を将来ビジョンに掲げる。 

 

◆株式会社アルヌールについて  https://www.alnur.jp/

会 社 名:株式会社アルヌール 

本 社:東京都渋谷区神宮前六丁目17番11号 JPR原宿ビル

R&Dセンター:東京都豊島区高田一丁目25番3号 

事 業 概 要:微細藻類の培養装置及びそのオペレーションノウハウを基幹技術とした、バイオメディカル・
ヘルスケア分野及びCO2削減等環境分野における研究・開発及びその技術提供、関連商品販売

海藻の一種である「カギケノリ」の力で、日本の畜産と漁業を未来へとつないでいく環境プロジェクト「Kaginowa」運営 https://kaginowa.com/

 

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E-Mail:info@alnur.jp

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