iPS細胞から一人ひとりの個性を反映した皮膚を作製することに成功 究極のテーラーメイド化粧品の創出を目指す

ポーラ化成工業、世界的に権威ある化粧品技術者学会にて発表

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスのプレスリリース

ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、2024年10月14日~17日にブラジル・イグアスで開催される第34回国際化粧品技術者会連盟(以下 IFSCC)世界大会のポスター発表部門において、尿中の細胞からiPS細胞※1を作り、さらにiPS細胞から皮膚組織を作製することに成功した研究成果を発表します。


■発表論文

『尿由来細胞から作製した”ミラースキン” 究極のテーラーメイド化粧品のための完全な皮膚のコピー』

英文名: “Mirror skin” generated from cells in one’s own urine: A perfect skin replica for the ultimate personalized cosmetics

発表者:吉澤 美沙、横田 絢、久下 貴之、張 優希、望月 麻友1、中野 瑞穂、岩永 知幸  

ポーラ化成工業㈱ フロンティアリサーチセンター   (*下線が当日発表者)


■発表内容概要

 私たちの皮膚は一人ひとり異なり、紫外線などの刺激に対する反応や老化の表れ方なども異なります。そこでポーラ化成工業では、一人ひとりの皮膚の個性に対応する「究極のテーラーメイド」化粧品を提供することを目指して、iPS細胞を用いてその人の皮膚を忠実に再現した培養組織(皮膚オルガノイド※2)の作製に取り組んできました。

 本研究では、簡便かつ痛みを伴わずに回収可能な尿から単離した細胞からiPS細胞を作り、さらにiPS細胞を最適な環境で増殖・分化させ、皮膚組織と同様の構造を持つ皮膚オルガノイドに育て上げる手法の確立に成功しました(図1)。

 構築した皮膚オルガノイドは、既存の培養皮膚モデルに比べて実際の皮膚の構造を忠実に反映している(図2および補足資料2)だけでなく、尿提供者(ドナー)の皮膚の特性を反映していることも確認できました(補足資料3)。私たちは、本手法で作られる皮膚オルガノイドを、その人の皮膚を反映しているという意味を込めて 【ミラースキン】 と名付けました。

 ミラースキンは、その人の皮膚で起きやすいトラブルの原因を突き止めたり、その人に適した有効成分を見出したりするなど、今後の研究開発において化粧品のパーソナライズ化の中心的技術となります。また、皮下脂肪、神経、毛包や脂腺などを再現できていることから、これらの皮膚の構造物を対象とした研究を飛躍的に進展させるツールとしても幅広い活用が期待できます。

 ポーラ化成工業はミラースキンを皮膚科学分野のコア技術とし、今後も新技術の開発や技術活用に注力していきます。

※1 さまざまな細胞に分化することのできる多能性幹細胞。体の細胞から作ることができる。

※2 実際の臓器や組織を模倣した3次元の小さな臓器様の構造。幹細胞を3次元で培養し、細胞の自己組織化により構築する。


【補足資料1】 ミラースキンは皮膚の特徴をよく反映している

 本研究で構築されたミラースキンの構造を観察したところ、表皮が中央に、真皮が外側に存在する形態をとり、表皮、真皮、毛包、皮下脂肪組織などの皮膚に必須の構造を含むことが確認されました(図2)。さらに、線維芽細胞、基底膜、メラノサイト、神経、毛包周囲の皮脂腺などの存在も確認できました(図3)。

 さらに電子顕微鏡でミラースキンの真皮部分のコラーゲン線維を観察したところ、線維の太さがヒトの皮膚に匹敵することがわかりました。また、真皮を主に構成するI型コラーゲンでは、実際の皮膚と同様に、特徴的な三重らせん構造の周期性を示すDバンドも確認されました(図4)。

【補足資料2】 ミラースキンはその人の皮膚の個性を反映している

 ミラースキンがその人の個性を反映していることを確認するため、作製したミラースキンに紫外線を照射したときの遺伝子発現レベルの反応と、実際のドナーの肌の紫外線に対する反応を比較しました。

 皮膚タイプの異なる複数のドナーについて試験を行ったところ、ミラースキンでの遺伝子発現の変化は、由来となるドナーの実際の肌の紫外線への反応の強さと相関していることが認められ、個体差が一致することが示されました(図5)。

【補足資料3】 IFSCCについて

 IFSCC世界大会は、世界中の化粧品技術者・研究者にとって最も権威のある学会で、最先端の化粧品技術が披露されます。応募論文はIFSCCの厳正な審査を受け、選ばれたものだけに発表が許されます。

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