― 世界的権威のある化粧品技術者学会「IFSCC 2024 congressイグアス大会」で発表 ―
サントリーホールディングス株式会社のプレスリリース
サントリーウエルネス(株)生命科学研究所(所長:中尾嘉宏、京都府相楽郡精華町)は、赤ワイン製造工程で廃棄されていたワイン残渣に着目し、高い美容効果を持つ「赤ワインポリフェノールエキス※1」を開発しました。「IFSCC※2 2024 congressイグアス大会(2024年10月14日(月)~17日(木))」にて発表しました。
※1 ワインエキス、BG(保湿)
※2 国際化粧品技術者会連盟
▼発表演題・発表者
「The Quest for Sustainability: Establishment of a method to obtain highly polymerized polyphenols from wine residues and Exploration of their effects(サステナビリティへの挑戦:ワイン残渣由来の高重合ポリフェノールの抽出方法の確立と美容効果の探索)」
サントリーウエルネス株式会社 生命科学研究所
山田えりか、笠島直樹、佐々木裕昭、松岡龍雄、泰松暁、中尾嘉宏
サントリーグローバルイノベーションセンター株式会社 研究部
土屋祐子
▼研究の背景
人間の体や肌は、環境によって酸化ストレスを受け、老化やさまざまな不調を引き起こすと言われています。また年齢を重ねるにつれて酸化ストレスは蓄積されるため、抗酸化作用のある成分を取り入れることが必要と考えられています。なかでも、ポリフェノール成分は強い抗酸化作用を持つことから健康や美容に効果があると言われており、サントリーは30年以上ポリフェノールに関する研究を行い、その効能を活かした商品を開発してきました。
赤ワインの製造工程では、ぶどうの果皮・種子部分の搾りかすがワイン残渣として廃棄されることがほとんどですが、ポリフェノール成分が豊富に含まれていることが知られています。今回、ワイン残渣を活用し、美容効果の高いエキスの開発に着手しました。
▼試験方法と結果
「サントリー登美の丘ワイナリー」で発生したワイン残渣から、新鮮なままエキスを抽出する溶媒条件、およびカラムによる精製※3を検討することで、ポリフェノール成分の純度が高まるエキスの製造条件を明らかにしました(図1)。さらに、美容成分として最適になるように検討を重ね、幅広い美容効果が期待できる高重合ポリフェノールを含む「赤ワインポリフェノールエキス」を開発しました。
※3 化合物の精製法(クロマトグラフィー)のひとつ。筒状の容器に充填剤をつめ、そこに溶媒に溶かした反応混合物を流し、化合物によって充填剤との親和性や分子の大きさが異なることを利用して分離を行う。
また、さまざまな美容効果を探索した結果、「赤ワインポリフェノールエキス」は以下のような効果を持つことがわかりました。
①抗酸化作用:
ポリフェノールが持つ抗酸化力により、肌老化の原因である酸化を防ぐ。
②美白作用:
紫外線によるダメージ、シミやそばかすを防ぐ。さらに、シミの原因となるメラニンの生成に関わる酵素の働きを抑える。
③アンチエイジング作用:
肌の弾力に寄与するコラーゲンやエラスチン、および肌の潤いに寄与するヒアルロン酸を分解する酵素の働きを抑える。
④抗炎症作用:
肌の炎症に寄与する因子の生成を抑える。
⑤抗糖化作用:
肌のくすみの原因となる糖化作用を抑える。
①~⑤において、いずれも高い効果が見出され、特に①抗酸化作用、②美白作用、③アンチエイジング作用においてその効果はより顕著でした(図2)。
▼まとめ
赤ワイン製造工程で廃棄されていたワイン残渣から、ポリフェノール成分の純度が高まるエキスの製造条件を確立し、高重合ポリフェノールを含む「赤ワインポリフェノールエキス」を開発しました。また、「赤ワインポリフェノールエキス」には、幅広い美容効果があることが見出されました。特に、抗酸化作用や美白作用、アンチエイジング作用において高い効果が見出されたことから、環境の変化にともなうさまざまな肌の悩みに対応することが期待されます。
また、加齢や環境の変化にともなう水分量低下などにより、肌のキメが悪化すると言われています。スキンケアにおいて成分をしっかり角層まで浸透させるためには、肌のキメが整っていることが大切です。「赤ワインポリフェノールエキス」は、その幅広い効果によって肌のキメを整え、スキンケア成分の浸透をサポートすることが期待されます。
当社は、今後もポリフェノールをはじめとした成分の研究を行い、健康や美容を起点としながら、人々の生活のWell-beingに貢献していきます。
以上