株式会社ファンケルのプレスリリース
【本試験方法】
◆ 対象
皮膚にかゆみがあり、アレルギー性皮膚疾患が疑われ、動物病院を定期的に受診している1歳以上の犬33頭
◆ 給与方法
普段の食餌に替えて、4種類(鶏ベース、鹿ベース、馬ベース、魚ベース)のフリーズドライ製法で作られたドッグフードを1週間ずつ、計4週間給与。4種類の順番は、飼い主の自由とし、あらかじめ、参加する犬の年齢、体重、体型、活動量を確認し、<ごはん量シミュレーション>に基づいて設定した給与量を給餌。
<ごはん量シミュレーション> : https://www.fancl.co.jp/goodish/kyuyo/index.html
【獣医師による評価】
かかりつけの獣医師が、フリーズドライ製法で作られたドッグフードの給与開始前と1カ月間の給与後に診察をし、かゆみと皮膚症状の評価を行いました。かゆみの評価は、PVASというVAS評価法※1を用い、かゆみなしを0、非常に重度なかゆみを10として「かゆみスコア」としました。皮膚症状はアレルギー症状の出やすい10カ所の部位について、紅斑(こうはん)・鱗屑(りんせつ)・苔癬化(たいせんか)・脱毛(だつもう)※2の重症度を、健常~軽度を0、軽度~中等度を1、中等度~重度を2とそれぞれ評価し、合計した値を「皮膚症状重症度スコア」としました。
その結果、給与前と比較し、給与後にかゆみスコアおよび皮膚症状重症度スコアが有意に減少しました(図1)。
また、獣医師が総合的に評価した皮膚症状の改善度は、全体の56.7%が「改善」・「やや改善」、30.0%が「変化なし」、13.3%が「悪化」でした。「改善例」と「変化なし」を合わせて、86.7%の犬が問題なく食べることができたという結果となりました(図2)。
【飼い主による評価】
飼い主には、給与開始前と開始後1週間ごとに、摂餌量、皮膚症状の変化、便の状態の変化、かゆみスコア(PVAS)を記録してもらい、試験終了後にアンケートに回答していただきました。
その結果、かゆみスコアは、給与前と比較し、給与2週間後から有意に減少し、経時的に減少する傾向が見られました(図3)。
また、飼い主へのアンケートによる嗜好性の調査では、42.4%が普段のフードよりも良いと評価しました(図4)。
【試験背景・目的】
ドッグフードには、獣医師が治療の目的で処方する「療法食」という食餌があります。アレルギー疾患用の療法食はアレルギー症状の発現を抑えることができますが、たんぱく質を制限しているものが多く、低たんぱくによる弊害が出ることもあります。アレルギーの犬が安心して食べられ、かつ十分なたんぱく質を摂るにはどうしたらよいかを検討した結果、たどり着いたのが「フリーズドライ製法」です。近年、腸内環境が改善されることにより、腸のバリア機能が高まること1)や、免疫系のバランスが改善し、過剰な反応が抑制される2)など、アレルギー性疾患においても、腸内環境を改善することの重要性が注目されています。当社はこの点にも着目し、フリーズドライ製法では、たんぱく質の消化率が高くなり、腸内環境の悪化が抑えられることを報告してきました。
本研究では、実際にアレルギー性皮膚疾患の犬に給与し、有害事象の発現や皮膚症状が悪化せず、問題なく食べることができるかを検証することを目的としました。
【担当者のコメント】
株式会社ファンケル 新規事業本部 ペットフード開発部
主査 金子 いづる 獣医師・ペット栄養管理士
一般的に、普段食べるドッグフードの有用性に関する研究はほとんどありません。
でも、普段のごはんの大切さを分かっていただくには、きちんとしたエビデンスがあることが必要と考え、データを採ることにこだわって研究開発をしています。その実証された良さを多くの飼い主さんに発信し、知っていただくことで、少しでも多くの飼い主さんがごはんの大切さに気付き、少しでも多くのペットがいつまでも健康に飼い主さんとの素敵な時間を共にできることを願い、これからも研究と情報発信をしていきたいと思います。
<用語説明>
※1 VAS(Visual Analogue Scale)評価法
10cmの水平な直線の左端を「なし」、右端を「考えられる最大(最悪)」とし、現在の程度がどのくらいかを示してもらい、視覚的に評価をする方法。主に、痛みの評価法として用いられるが、この評価法を用いてかゆみを評価する方法が、PVAS(pruritus VAS)である。
※2 紅斑・鱗屑・苔癬化・脱毛
犬特有の病態ではなく、人においても用いられる専門用語で、皮膚にかゆみがある疾患において見られる皮膚の状態。紅斑 : 皮膚が赤い状態
鱗屑 : 角層が蓄積して板状に重なり合い魚のうろこのように見える状態
苔癬化 : 皮膚が厚くなり表面にシワや溝がくっきりと現れた状態
脱毛 : 毛が抜けた状態
<引用文献>
1) Tan J. et al: Cell Rep15:2809-2824(2016).
2) Furusawa I. et al: Nature,504:446-450(2013)