国立大学法人岡山大学のプレスリリース
2025(令和7)年 1月 13日
国立大学法人岡山大学
<発表のポイント>
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生涯学習の多い高齢者は、加齢に伴って「獲得」するものが増えるというポジティブな意識が高く維持される。
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身体活動の多い高齢者は、加齢に伴って「喪失」するものが増えるというネガティブな意識が低く維持される。
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研究開発が進むことで、超高齢化社会がより充実したものになることが期待される。
◆概 要
近年の高齢者研究では、高齢者の加齢に係る変化に関する意識(主観的老い)が注目を集めています。主観的老いを測定する代表的な指標に、Diehl & Wahl(2010)が提唱した「加齢に係る変化意識」があります。
「加齢に係る変化意識」は、加齢に伴って「獲得」するものが増えるというポジティブな意識と、加齢に伴って「喪失」するものが増えるというネガティブな意識の二側面から構成されます。先行研究によると、「獲得」の高さは主観的幸福感と正の相関を示し、「喪失」の高さは抑うつと正の相関、主観的幸福感や身体的健康と負の相関を示すことが明らかとなっています。「加齢に係る変化意識」を簡便に測定する尺度の日本語版(白石・堀内・Brothers,2024)は既に開発されており、多くの研究で使用されています。
国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の大学院社会文化科学研究科博士課程在学生で岡山大学OU-SPRING生*の白石奈津栄大学院生と岡山大学学術研究院社会文化科学学域の堀内孝教授の研究グループは、大阪大学中川威准教授と兵庫教育大学大学院山本康裕大学院生を新たなメンバーとして迎え、70歳以上の日本人高齢者878人を対象に12カ月間にわたる縦断調査を実施しました。
この調査では、「加齢に係る変化意識」に影響を与える要因として、「生涯学習」と「身体活動」に着目しました。マルチレベル分析の結果、生涯学習の多い高齢者は「獲得」のポジティブな意識が高く維持されること、また、身体活動の多い高齢者は「喪失」のネガティブな意識が低く維持されることが明らかとなりました。
この研究成果を、老年学および老年医学の分野でもっとも権威のある学会であるGSA(Gerontological Society of America)の年次大会(GSA Annual Scientific Meeting)で発表しました(2024年11月、シアトルコンベンションセンターにて開催)。
なお本件は、2024年12月26日に開催された岡山大学2024年12月定例記者会見において公開されました。
*OU-SPRING生
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「次世代研究者挑戦的研究プログラム」を用いて、大学院の博士後期課程又は博士課程に進学する優秀な人材の確保を図るとともに、岡山大学の「最重点研究分野」の研究を推進する若手研究者の養成、ひいては、我が国の科学技術・イノベーション創出を担う研究者の養成等を目的に運用している制度です。選抜されたOU-SPRING生には、研究奨励費(生活費相当)と研究費を支給し、より研究に専念できる環境を提供しています。
https://www.ou-spring.orsd.okayama-u.ac.jp/
◆研究者らからのひとこと
この研究は、高齢者がより良い生活を送るための重要な手掛かりを提供します。生涯学習と身体活動を通じて、前向きな主観的老いの体験を促進し、健康的な老後を支援できます。私たちの研究が、多くの高齢者の生活の質向上に寄与することを願っています。
◆論文情報
発表タイトル:Multilevel Analysis of AARC Gains and Losses in Older Adults
掲載誌:Innovation in Aging、 Volume 8、 Issue Supplement_1、 2024
著者:Natsue Shiraishi、 Yasuhiro Yamamoto、 Takeshi Nakagawa、 Takashi Horiuchi
論文名:加齢に係る変化意識尺度(AARC-10 SF)の日本語版開発とその信頼性および妥当性の検討
掲載誌:心理学研究
著者:Natsue Shiraishi、 Takashi Horiuchi、 Allyson Brothers
DOI:https://doi.org/10.4992/jjpsy.95.23203
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/div/jjpsy/advpub/0/advpub_95.23203/_div/-char/ja
◆研究資金
この研究は、以下の支援を受けて実施しています。
・Foundation of Global Life Learning Center JST SPRING
・JSPS(21H00943)Methodological foundation for capturing pre- and post-loss changes associated with aging
・JST次世代研究者挑戦的研究プログラム JPMJSP2126
◆詳しい研究内容について
高齢者には生涯学習と身体活動がお勧め!~主観的な老いの体験に対するポジティブな効果を縦断研究で実証~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r6/press20241226-2.pdf
◆参 考
・岡山大学大学院社会文化科学研究科
https://shabun.ccsv.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学 学術研究院 社会文化科学学域(文)堀内研究室
https://www.cc.okayama-u.ac.jp/~horiuchi/Horiuchi_Lab.htm
◆参考情報
・岡山大学次世代研究者挑戦的研究プログラム(OU-SPRING)
https://www.ou-spring.orsd.okayama-u.ac.jp/
◆本件お問い合わせ先
岡山大学大学院社会文化科学研究科 博士後期課程1年 白石奈津栄
岡山大学 学術研究院 社会文化科学学域(文)教授 堀内 孝
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス
TEL:086-251-7404(研究室)
https://www.cc.okayama-u.ac.jp/~horiuchi/Horiuchi_Lab.htm
<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8463
E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
TEL:086-251-8745、086-251-8746
FAX:086-251-8748
E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/
<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
※ ◎を@に置き換えて下さい
https://venture.okayama-u.ac.jp/
岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
岡山大学メディア「OTD」(ウェブ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000215.000072793.html
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岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2025年1月期共創活動パートナー募集中:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002800.000072793.html
国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください
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岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~