一般社団法人健康と経営を考える会のプレスリリース
「健康と経営を考える会」第34回定例会(会員のみ参加)を、5年ぶりに会員企業の会議室(花王本社会議室 中央区)を会場として12月18日(水)開催いたしました。
今回は、講演開始前に花王株式会社のGENKI-wellサービス測定体験会として、「歩行基礎力測定」と「内臓脂肪測定」を行いました。
講演は、「花王グループの健康経営と健保経営」について花王株式会社・守谷人財戦略部門健康開発推進部長、「第3期データヘルス計画と後期高齢者支援金の加算・減算制度」について厚生労働省保険局・佐藤保険課長よりご講演いただきました。
■■花王株式会社人財戦略部門健康開発推進部長 GENKIプロジェクトリーダー 兼
花王健康保険組合常務理事 守谷様 講演■■
【花王グループの健康経営と健保経営 やってよかった健康経営 これからどうする健保経営】
花王の中での健康経営の位置づけとして、①パーパス「豊かな共生世界の実現」を実現するための価値創造モデル3つの軸の一つとして「社員活力の最大化」があること、②「ESGコミットメント」の中に「社員の健康増進と安全」があること、③「人財戦略のフレームワーク」の中にも「社員活力の最大化」が入っていることから、健康経営推進を行いやすい環境にある。
健康経営を進めるに当たっては、トップメッセージを社長名で出す、健康経営実現のための組織をつくる、健康データ活用・見える化、社内のヘルスケア技術利用により取り組んでいる。
2024年、健康経営戦略マップを改訂した。「こころ」の取組みが最重要と捉え上に配置し、「こころ」とつながる「からだ」のセルフケア支援を次のカテゴリーに、「周囲のサポート」として、検診推奨、特保・相談、治療と仕事の両立支援を含み、マップの健康投資を3カテゴリーに分けた。健康関連の最終的な目標で目指すところは「社員の活力最大化」と「医療費適正化」で、それらを実現するために社員のエンゲージメントやGENKI率(ストレスチェックの活気に関する項目)を引き上げる力、それを支える力を指標としている。社員活力の量として離職率の低下、アブセンティーイズムで検証し、社員活力の質としてはプレゼンティーイズム減少とし、その結果、社員活力が最大化するマップにしている。実際に正しいか、検証しながら、関係性が低いところがあればこのマップ修正を検討している。
花王グループの健康宣言は、最初に2008年に出し、会社と健保が社員の健康に積極的に関わり、管理職のマネジメントとして部下の健康を支援することとした。健康宣言の冊子では、社長メッセージを掲載することで、健康の取り組みが進めやすくなった。2022年の改訂では、社員と家族の取組み・好事例を地域にも展開することとした。
健康づくりの取り組みには6つの柱があり、その内「シニアの健康」が、直近5年間で追加した取り組みとなる。60歳以降も働く人が増えたこともあり、退職しても元気でいることを目指している。健康経営推進体制は、健保と健康開発推進部(会社)が連携して互いがやるべきことを行う体制と、健康経営推進の会議体として「保健スタッフ会議」、「保健指導検討会」、人事担当、看護職、カウンセラーも入りメンタルヘルスの状況を共有しながら進める「メンタルヘルス会議」、健康白書データの読み方・見方を勉強する「健康白書勉強会」により推進している。健保は毎年料率を変更しており、毎年財政予測と医療費の集計を行う。会社と健保の集計が秋に揃い、経営会議にて社員の健康状態や医療費の状況、健保財政状況等について報告し、健康白書は最終的に毎年12月に完成する。このような健康情報集計の意義は、健康データの経年変化把握、過去・健康推進取組みの確認、経営者へ健康関連の説明をしやすいことにある。
花王を支える3つの健康指標、①健診有所見者の再検査受検率96%、②糖尿病ハイリスク者の治療継続率87.1%、③特定保健指導実施率:社員75.2%・全加入者65%、これらは多くの勧奨を行うが、花王の様々な取り組みを支えている。
高年齢化する健保が行うべき施策として、「自分の健康は自分で経営する視点」を持ち、「退職後も自己管理できる人」を増やすことと考え、取り組みを進めている。医療費の影響は大きいので、さらなる重症化予防、適切な通院につき数ヶ月毎のフォローを考えている。ロコモ対策やオーラルフレイル対策、前期高齢者の支援も必要と考えている。
■■■厚生労働省保険局 佐藤保険課長 講演■■■
【第3期データヘルス計画と後期高齢者支援金の加算・減算制度について】
加算・減算やデータヘルス計画について、日本を取り巻く環境として、まず人口の推移がある。日本の人口は直近で1億2500万人ほどで、生産年齢人口7500万人弱に減少、日本経済縮小につながり大きな課題となっている。生産年齢人口は、団塊ジュニア世代が65歳となる2040年には6200万人となることが予想されている。2040年には、「65歳で高齢者」という考え方を変える、65歳でも健康な生活を送る、そうした社会に変えるために企業も個人も意識改革、健康保険組合での意識づくり、保健活動、予防活動が非常に重要となると考える。
認知症の方は、現在、470万人で、2040年には580万人となるのではないかと予想される。また、人口が増える高齢者をどう支えるか、これまでは、地域社会や家族で支えていたが、単身の方が増え、いかにして支えるかということも考えなければいけない。いかに支えるかということよりも、健康寿命を伸ばすことは、本人にとって生きることだけでなく、周囲の支え・労力を減らす上でも大変重要となる。社会保障給付金(年金、医療、介護の給付金)は、140兆円ほどである。社会保障料抑制のためには、効率化・適正化を図る、あるいは患者の自己負担を増やす、そして健康な生活を送れる環境を作ることが社会としては健全で、本人にとっても満足のいく人生を送れると考え、様々な形で健康づくりや予防を積極的に取り組んでいる。
女性の正社員比率は、以前は結婚や出産の時に退職するM字カーブとなっていたが、今はL字カーブとなり、これは、正社員から結婚・出産のときに、女性が子供の世話をすることがまだ主流であるため正社員を辞めてパートタイムとして戻るケースが多く、Lの形で正社員比率が下がることから、そのように呼んでいる。そこをいかに対処するかが女性が働くために重要で、女性が活躍できる社会を作ることは日本経済を活性化させる上で大事なことでもあり、取り組みを進めている。
年齢階級別就業率という点で、現在、65歳~69歳の方は50%、70代前半は33%が働いている。働く意欲のある方は働ける社会を作ることは重要と考える。健康だから働けるのか、働くから健康なのか、働ける方・地域で活躍できる方には働く場・活躍できる場を作ることは大切なことだと思っている。そのための環境整備を進めたいと考えているし、各企業には可能な限り様々な形で協力をいただきながら社会で活躍できる環境整備をお願いしたいと考えている。
全世代型社会保障構築会議では、社会保障が高齢者中心となっていたものを、子どもや若者にも目を向けるという取組みを行う。例えば、児童手当の所得制限を2024年10月から撤廃してみんなで支えていく取組みを進めている。
データヘルス計画については、作り方がわからない健康保険組合に対するサポートや、アドバイスを先生方に依頼している。企業も理解がありコラボヘルスもできている健康保険組合もあれば、健康保険組合としてやる気はあるものの企業の協力が得られないという課題も聞いている。健康と経営を考える会所属の健康保険組合のデータヘルス計画は濃密で実効性のある計画で、PDCAを回せる取組みが進んでいる。課題のある健康保険組合へのアプローチについて、この後のディスカッションでアイデアを教えていただければと考えている。
<健康と経営を考える会についてはこちら> https://kenko-keiei.org/
一般社団法人健康と経営を考える会について
『社員の健康を維持・増進』することが、企業の生産性や保険者の収支に多大な影響を及ぼすため、両者が一体となって、如何に効果的、かつ効率よくその仕組みを構築し、推進していくか」について、医療従事者も含めて検討、議論を重ねています。
【会社概要】
社名:一般社団法人健康と経営を考える会
事務局所在地:〒103-0024 東京都文京区西片1-15-10 7階 同友会内
事業内容: 健康経営・保健事業に関する情報発信・啓発活動・教育活動
設立: 2013年5月