ローヤルゼリーの肌に対する有用性メカニズムの一部を解明
株式会社 山田養蜂場のプレスリリース
株式会社山田養蜂場(所在地:岡山県苫田郡鏡野町、代表:山田英生、以下「山田養蜂場」)の自社研究機関である、山田養蜂場グループ 美容科学研究所は、近畿大学薬学総合研究所(所在地:大阪府東大阪市)森山博由 准教授の研究グループとの共同研究において、ローヤルゼリーが表皮幹細胞を活性化し、肌の再生や老化抑制に貢献する可能性を明らかにしました。本成果は、科学雑誌『Biological and Pharmaceutical Bulletin』に掲載されました(2024年12月)。
【研究背景】
皮膚の最も外側に位置する表皮は、体全体の表面を覆うことで体内と体外を隔てています。病原体からの防御や水分保持など、生命維持に必要な機能を持つだけでなく、肌の質感や透明感にも影響を与える重要な組織です。
表皮は常に、肌の生まれ変わりであるターンオーバーを繰り返しています。ターンオーバーには表皮幹細胞が深く関わっており、表皮幹細胞が新しい表皮の細胞を生み出すことで組織を維持しています。しかしながら、加齢によって表皮幹細胞が衰えると、ターンオーバーが乱れて組織全体が老化し、様々な肌悩みにつながります。
■ 肌悩みの要因
ミツバチが作り出す天然物であるローヤルゼリーには、特長成分の「10-ヒドロキシ-2-デセン酸」(以下デセン酸)など40種類以上の栄養素が含まれています。近年、山田養蜂場はローヤルゼリーが角層⽔分量を向上させることや表皮を保護する働きがあることなどを報告していますが、肌に対する有効性の作用機序には不明な点も多く、表皮幹細胞との関連性も確認されていませんでした。
そこで、今回の研究では、三次元表皮モデル(※)とヒト表皮由来角化細胞を用いた細胞老化モデルにより、ローヤルゼリーの表皮幹細胞への影響や細胞老化に対する作用を確認しました。
※三次元表皮モデル…ヒトの皮膚を模した培養系。本研究では、表皮構造や幹細胞に対する影響を評価するために用いた。
【研究結果】
ローヤルゼリーは、表皮幹細胞を活性化し、さらに細胞老化を抑制することが確認されました。また、表皮幹細胞を活性化する成分はデセン酸などの脂肪酸であることが分かり、ローヤルゼリーが肌の若返りや再生を促す可能性が示されました。
■ 研究結果の概要図
【研究詳細】
①三次元表皮モデルを用いた表皮構造と表皮幹細胞に対する検証
表皮幹細胞や表皮の構造に対するローヤルゼリーの影響を確認するために、三次元表皮モデルを用いてローヤルゼリーの 有無による差を調べました。その結果、ローヤルゼリーは表皮幹細胞マーカー(p63)と細胞増殖マーカー(Ki67)の発現を亢進し、表皮の層構造の厚みを向上させました。
このことから、ローヤルゼリーは表皮幹細胞を活性化することで表皮の再生力を向上させ、肌の若返りを促進する可能性が示されました。
左:RJを添加したヒト表皮モデルでは、厚みが向上した(矢印は基底層から顆粒層までの長さを示す)。
右:RJを添付したヒト表皮モデルでは、表皮幹細胞(グリーン)、細胞増殖(オレンジ)を示すマーカーが増殖した。
酵素分解RJ…RJ中のタンパク質を、独自の酵素分解技術を用いてペプチドやアミノ酸まで分解したRJ。
②単層培養での細胞老化に対する検証
表皮幹細胞を活性化するメカニズムを検証するために、細胞を長期間培養することで生じる細胞老化について評価しました。細胞老化は、幹細胞機能の低下がその要因の一つであり、細胞の形態変化、
遺伝子発現、タンパク質発現を指標に、ローヤルゼリーの有無による影響を調べました。
その結果、
●ローヤルゼリーを添加した条件では、細胞老化に伴う形態変化が見られず、
細胞増殖能が維持されていました。
●ローヤルゼリーの添加により表皮幹細胞マーカー(ΔNp63)が増加し、
老化細胞マーカー(p21及びp16)が減少しました。
これらのことから、ローヤルゼリーは細胞老化を抑制することで、表皮幹細胞の機能を亢進する可能性が示されました。
左:RJなしでは、細胞は通常よりも大きく不均一な形状になった(矢印)ことから、細胞が老化したことが示された。
中央、右:RJありでは、細胞は小さく不均一な形状を維持したことから、細胞の老化が抑制されたことが示された。
③ローヤルゼリー中の表皮幹細胞を活性化する成分の探索
表皮幹細胞を活性化する成分を明らかにするために、三次元表皮モデルを用いてローヤルゼリーに含まれる主要な脂肪酸の有無による差を調べました。その結果、デセン酸などの脂肪酸は、ローヤルゼリーと同様に表皮幹細胞を活性化し、表皮構造の厚みを向上させました。
このことから、ローヤルゼリーによる表皮幹細胞の活性化に、デセン酸などの脂肪酸が関与していることが示されました。
左:デセン酸を添加したヒト表皮モデルでは、厚みが向上した(矢印は基底層から顆粒層までの長さを示す)。
右:デセン酸を添加したヒト表皮モデルでは、表皮幹細胞(グリーン)、細胞増殖(オレンジ)を示すマーカーが増加した。
【今後について】
ローヤルゼリーが肌に対して有用であることは、これまでの研究や伝承的な情報などからも知られていましたが、どのようなメカニズムで有効性を示しているかについては不明な点が多くありました。今回の研究では、ローヤルゼリーが表皮幹細胞を活性化して表皮の厚みを向上させ、細胞老化を抑制することで、組織の老化状態を改善する可能性が示唆されました。山田養蜂場では、本研究によって見出されたローヤルゼリーの新しいメカニズムを活用し、今後も人々の美と健康につながるような商品開発を行って参ります。
また、ローヤルゼリーが全身に作用するメカニズムについては依然として不明瞭な点が多くありますが、山田養蜂場はこれからも多角的な研究を継続することで、ローヤルゼリーの作用メカニズムを解き明かして参ります。
<文献情報>
論文タイトル:Royal Jelly Maintains Epidermal Stem Cell Properties by Repressing Senescence
著者:森山 麻里子1、三宅 祐有子1、奥村 暢章2、森山 博由1
所属:1 近畿大学薬学総合研究所 先端バイオ医薬研究室
2 株式会社山田養蜂場 R&D本部 山田養蜂場健康科学研究所
論文情報:Biological and Pharmaceutical Bulletin, 2024;47(12):2041-2049.
公開日:2024年 12月 13日