急性冠症候群患者の地域医療連携に関する全国調査結果を公開

• 日本循環器協会として初の研究論文をCirculation Journalに掲載

一般社団法人日本循環器協会のプレスリリース

論文まとめイメージ(著者の承諾のもとMinami Y et al. Circ J. 2025より改変引用)

一般社団法人日本循環器協会(JCA)は、「急性冠症候群(ACS)患者を対象とした地域連携クリニカルパスの現状と展望」に関する全国調査の結果を、国際的な学術誌Circulation Journalに発表いたしました。

調査の概要

本調査は、全国47都道府県のJCA支部長の協力のもと実施され、ACS患者の包括的な治療と医療機関間の連携体制の実態を明らかにすることを目的としています。

主な調査結果

1. 全国で18の地域連携クリニカルパスを特定

2. 47都道府県中、県単位での導入は11県(23%)、地域単位での導入は4県(9%)

3. 多くのクリニカルパスでLDL-C、HbA1c、血圧などのリスク因子管理目標を設定

4. 運用が良好なクリニカルパスの特徴: 

 ・2022年以降に開始または更新

 ・具体的な薬剤選択プロトコルを含む

今後の課題

・地域間格差の解消

・ガイドラインに基づいた治療プロトコルの標準化

・持続可能な地域医療連携体制の確立

展望

本研究の成果は、全国の循環器診療の質向上と患者さんの治療環境整備に貢献することが期待されます。JCAは今後も同様の調査・研究を通じて、循環器領域の発展に寄与してまいります。

識者コメント

  • 研究代表者 南 尚賢氏(北里大学/JCA評議員) 「本研究では、全国47都道府県のJCA支部長の皆様から100%の回答を得ることができ、日本全体のACS医療連携の実態を正確に把握することができました。この貴重なデータは、今後の地域医療連携の改善に向けた重要な基礎資料となります。」

  • 斎藤 能彦氏(奈良県西和医療センター/JCA予防啓発委員会委員長) 「ACSの再発予防において、適切な薬物療法と医療機関間の緊密な連携は不可欠です。本調査により明らかとなった地域間格差の解消に向けて、標準化された全国統一版クリニカルパスの整備を進めていく必要があります。」

  • 小室 一成氏(国際医療福祉大学/JCA代表理事) 「本研究は、JCAとして初めて国際学術誌に発表する研究論文となりました。産学連携による研究活動の透明性と公平性を維持しながら、今後も循環器医療の発展に資する研究成果を継続的に発信してまいります。」

用語解説

  • 急性冠症候群(ACS: Acute Coronary Syndrome) 心臓の血管(冠動脈)が突然狭くなったり詰まったりすることで起こる病気の総称です。心筋梗塞や不安定狭心症などが含まれ、早急な治療が必要となる重要な循環器疾患です。

急性冠症候群(ACS)とは
  • 地域連携クリニカルパス 患者さんの治療開始から回復までの経過を、地域の中核病院とかかりつけ医が共有して用いる診療計画表です。診療の手順や治療目標、患者さんの経過などが明確に示されており、医療機関間の連携をスムーズにする重要なツールとなっています。

期待される効果

  • 医療機関にとってのメリット

・治療方針の標準化による医療の質向上

・医療機関間の円滑な情報共有

・重複検査の防止による医療資源の効率的活用

  • 患者さんにとってのメリット

・一貫性のある継続的な治療の実現

・かかりつけ医と専門医による切れ目のない医療サービスの提供

・リスク因子の適切な管理による再発予防

論文詳細

掲載誌:Circulation Journal
掲載日:2025年1月28日
著者:Minami Y, et al. DOI:10.1253/circj.CJ-24-0714

URL:https://www.jstage.jst.go.jp/div/circj/advpub/0/advpub_CJ-24-0714/_div/-char/en

研究体制

研究助成 本研究はアムジェン株式会社からの研究助成を受けて実施されました。

本件に関するホームページ

ホームページ:https://j-circ-assoc.or.jp/?post_type=approach_posts&p=9723

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