― 脚の筋肉に重要な成分ケルセチンを含む「ロコモア」の開発研究に高い評価 ―
サントリーホールディングス株式会社のプレスリリース
サントリーウエルネス(株)は、「ロコモティブシンドローム対策を目指したロコモアの開発研究」の題目で評価を受け、「日本農芸化学会2025年度大会」にて「農芸化学技術賞」を受賞しました。授賞式は3月4日(火)に北海道札幌市で行われました。
「農芸化学技術賞」は、1968年から設置された歴史ある賞で、農芸化学分野において注目すべき技術的業績をあげた会員に授与される権威ある賞です。これまでの高齢化社会の課題に向き合う当社の姿勢や、運動器※1の健康に関する30年以上の開発研究の歴史などが評価され、今回の受賞に至ったと捉えています。
なお、本題目は、「日本農芸化学会関西支部 第534回講演会」で「2024年度 関西支部技術賞」も受賞しています。
※1 身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称
当社は、いくつになっても、誰もが自分らしく生きる力を存分に発揮して、人生を輝かせ続けられる社会の実現を目指し、今後も「ロコモア」をはじめとした運動器の機能維持に寄与する開発研究に真摯に取り組んでいきます。
●受賞研究題目
「ロコモティブシンドローム対策を目指したロコモアの開発研究」
サントリーウエルネス株式会社 生命科学研究所
出雲貴幸、大塚祐多、永井研迅、長谷部杏子
【研究背景】
高齢化社会が進行する日本では、要介護や要支援の割合が増加しており、要介護の要因は、身体の衰弱や骨折・転倒、関節の違和感といった、高齢による運動器の不具合が全体の約3分の1※2を占めます。こうした社会課題を踏まえ、サントリーでは運動器の機能維持を目的とした商品の開発研究に30年以上取り組んできました。
私たちは膝関節に加えて筋機能も含めた包括的な脚の機能維持が重要と考えて、ポリフェノールであるケルセチンの筋機能への機能に着目した研究を実施し、得られた研究知見を活用した「ロコモア」を開発しました。
※2 2022年国民生活基礎調査
【研究概要】
●MPS(Microphysiological systems)技術※3を用いた三次元ヒト骨格筋組織培養系において、ケルセチンが筋肉の持久力を高める可能性を明らかにしました。
●ヒト骨格筋由来間葉系前駆細胞※4において、ケルセチンが加齢により増加する筋肉の線維化や脂肪化を抑制する可能性を見出しました。さらに中高齢者において、ケルセチン配糖体※5の24週間摂取と軽い運動の組み合わせが、膝を完全に屈曲した際の大腿部筋スティフネス※6を低下させ、筋肉の柔軟性を向上させることを明らかにしました。
●歩行機能が低下する中高齢者において、ケルセチン配糖体、アンセリン、グルコサミン塩酸塩およびコンドロイチン硫酸の4成分の組み合わせを16週間摂取することにより、通常歩行速度が有意に増加することを確認しました。
以上の細胞実験およびヒト試験により、ケルセチンの筋肉および脚の機能に対する有効性を明らかにしました。
※3 人体の生理的状態を小型かつ高度に模倣する細胞培養技術
※4 種々の細胞へと分化する能力を持つ未分化の細胞。脂肪や線維組織への分化能力を有する。
※5 ケルセチンに糖が結合した化合物で、ケルセチンよりも水溶性が高く、体内への吸収性が高い
※6 超音波エラストグラフィーにより評価される大腿部の筋肉の硬さを示す指標
●公益社団法人 日本農芸化学会について
日本農芸化学会は、農芸化学の進歩を図り、それを通じて科学、技術、文化の発展に寄与することを目的として1924年に設立された学術団体です。バイオサイエンス・バイオテクノロジーを中心とする多彩な領域の研究者、技術者、学生、団体等によって構成されています。全国大会は、年1回春に開催され、発表演題数2,000題、参加者5,500人を超える、化学・生物学系の学会の中でも規模の大きい集会となっています。
https://www.jsbba.or.jp/about/awards/about_awards_tech.html
以上