「足立ブランド」認定企業である三祐医科工業株式会社は2025年4月9日(水) ~11日(金)の3日間、東京ビッグサイト東展示場で開催される「メドテックジャパン2025」に出展します。
足立ブランドのプレスリリース
金属製医療器具メーカーが本気で作った耳かき。この一見ミスマッチな取り合わせから、累計8万本を売り上げるロングセラー商品が生まれました。創業52年の『三祐医科工業株式会社』(東京都足立区六木、代表取締役小林祐太)は、前代表が医療器具作りの技術を活かし、手作業にこだわった「耳にやさしい耳かき」を生み出しました。そして今、3代目が新たな挑戦を始めています。
▎医療機器が「耳かき」に見えたから始まった物語
『三祐医科工業』は、1972年に医療現場で使用される繊細な金属製器具を製造すべく小林克行氏によって創業されました。50年以上に亘る歴史の中で製作した器具は1,000種類以上に上り、中でも金属製注射針のような、非常に繊細な器具の製造を得意としています。同社には熟練の職人が所属し、器具は手仕上げ加工にて製造されています。機械加工では行えない、やすりがけや曲げ加工などの手仕上げ加工も行え、細かいオーダーや多品種小ロットの製品に対応することも可能です。
「これは耳かきですか?」
ある展示会での来場者の何気ないひと言が、ベストセラー商品誕生のきっかけでした。展示していたのは血管拡張器という金属製の医療機器。その形状が耳かきに似ていると指摘されたのです。
その質問を受けたのは、現在の取締役技長であり、自らも多くの器具を作ってきた小林保彦氏。自信を持って医療器具を製造してきた経緯から、その問いかけに不満を感じたそうです。
「最初は『何を言ってるんだ、こっちは命を預かる道具を作っているんだ』という職人気質が出たようです」と三代目の小林祐太氏。
しかし、その後「待てよ。耳かきに見えたなら、やってみてもいいかな。せっかくなら、当社ならではの技術と材料を使って作ってみよう」と考えを改め、最初は遊び心で開発をスタートさせました。
遊びだったはずの耳かきづくりでしたが、保彦氏はすぐに夢中になりました。保彦氏は中学生の頃から、まっすぐ帰宅し、すぐに自宅でもあった工場で手伝いをするほどの生粋のものづくり好き。当時の高揚感を思い出したのかもしれません。その経験が、耳かき開発における試行錯誤を支えました。
特に苦心したのが「しなり」の調整です。医療機器の製造では、ミリ単位の精度が要求されます。医療機器製造で培った技術を活かしながらも、耳かきならではの柔軟性をどう実現するか。保彦氏は毎日の仕事が終わった後、夜遅くまで試作品を作り続けました。
先端が柔らかすぎるとブレが生じて耳垢が取れず、逆に硬すぎると耳を傷つけてしまいます。耳かきマニアの方からのアドバイスも受けながら、絶妙なバランスを追求しました。マニアの評価が「良い、けれどベストではない」だったことが、さらなる改良への意欲を高めることになりました。
開発には約5年の歳月を要しました。そして医療機器にも使用される特殊樹脂(ポリアセタール)を採用し、柔らかすぎず硬すぎない、理想的な「しなり」を実現したのです。
完成した「医療器具屋さんが作った耳かき」は、医療機器製造のノウハウを惜しみなく投入した逸品です。医療機器メーカーならではの品質管理の厳しさも活かされ、特に「医療器具屋さんが作った」ことはユーザーにとっても”安心”のひと言に集約されます。2012年、最良の安全性と使い心地を兼ね備えた耳かきが誕生。以来、累計8万本を売り上げるヒット作となりました。
▎職人技が支える品質への誇り
『三祐医科工業』には70代のベテラン職人から30代の若手女性職人が在籍。前代表である保彦氏も製造に携わり、丁寧な手仕事を続けています。中には初代・克行氏から直接技術を学んだ職人も在籍しており、50年以上に亘って培われてきた技術が医療器具作りに活かされています。
「溶接の強さ加減や研磨の具合は、数値だけでは語れません」とベテラン職人。
季節による温度や湿度の変化、その日の気圧まで、様々な要素を感覚的に判断しながら作業を進めていきます。
それは、まさに「暗黙知」と呼ぶべき技術であり、その継承が最も難しいと言われる部分。
そんな技術の粋が詰まった場所で、3代目の祐太氏は育ってきました。
「僕は生まれた時からこの環境を見慣れていたので当たり前に思っていましたが、医療機器作りの現場は、実は特殊な環境。バイヤーさんが工場見学に来られると『こんな作り方をしているんですか、すごいですね』と驚かれます」
同社の職人で印象的なのが、30代の女性職人2名の存在です。1名は高専の出身で、インターンシップをきっかけに入社を決意。
もの作りが好きなこと、そして母が看護師だったことから、「医療に関係しているもの作りがしたい」という思いがあったそうです。もう1名は足立区の就職支援を通じて出会いました。試しにやってみた溶接の才能を当時の社長に見出されての採用でした。現在では、耳かきづくりを一手に引き受けているそうです。
工場では医療機器と耳かきの製造ラインが並行して動いています。医療機器の製造で培った精密な技術と品質管理が、耳かきの製造にも活かされているのです。「医療機器を作る会社だから安心」というお客様の声は、まさにこうした現場から生まれています。
▎身近にあった、自分の気持ちを裏切らない”モノ”
社名の『三祐』には、小林の名前も、創業者の克行の名前も入っていません。その理由を問うと、
「祐は神に仕えるという意味があり、祖父がとても気に入っていた漢字です。また三は、三菱や三井といった名だたる大手企業が使っている。そのふたつを組み合わせて『三祐』にしたと聞いています」と祐太氏。三代目の名前に「祐」の字が使われていることを、祖父・克行氏は大変喜んだそうです。
ただ祐太氏、当初は家業を継ぐつもりはなく、大手メガネチェーン店に就職。店内装飾などを行うビジュアルマーチャンダイジング(VMD)を担い、店舗責任者としても活躍しました。その後、人材紹介会社の営業として勤め、2020年に戻ってきました。
「人材紹介会社で営業の仕事をしていた時、時として自信をもって奨められないケースを経験しました。そんな中で、『もっと自信を持って販売できる商品を売りたい』と考えた時、自分の最も近くに”それ”があることに気づいたんです。ただ、自分は不器用なんですが、口は達者。ですから営業担当が順当かと(笑)」と祐太氏。VMD経験や人材紹介会社での営業経験を活かし、家業に新風を吹き込もうとしています。
「いいものを作れても、見せ方が下手だと伝わらない。それが今の時代です。特に当社のベストセラー「耳かき」は、EC販売やカタログ通販がメインですが、今後はインバウンド顧客への展開も考慮し、店舗での販売も考えています」と意欲的です。同時に進めているのが、「耳かき」のリブランディング。デザイナーとの協働でパッケージデザインの見直しを進めています。
また昨年は、耳かきの最上位モデル「極(きわみ)」をクラウドファンディングで展開し、100名以上の支援を獲得。「高級セレクトショップや百貨店、高級ホテルのノベルティとしても展開していきたい」と新たな販路開拓にも挑戦しています。もちろん、口腔ケアアイテムやペット用製品など、新たな製品の開発も考えているそうです。
『三祐医科工業』は、仕事を通して少しでも足立区への恩返しがしたいという思いから足立ブランド発足の初年度より参加。
この思いでスタートしたのが、足立区内の中学生の職場体験。これは足立区からの依頼で20年近く行っている活動で、3日間の体験期間を設けて、実際にものづくりも行います。一方で生徒を招くだけでなく、年1回、学校に出向いて「職業人の話を聞く」という授業もにも参加。地元に根差した仕事を積極的に紹介しています。
「もし就職活動をする際に、『あの時の三祐での体験が面白かったな』と思い出してもらえれば嬉しいですよね。製造業は向き不向きがありますし、3Kに始まる古いイメージもまだ払拭しきれていない。それでも中学生の中には、楽しいって言ってくれる子どももいます。彼らの中に芽生えたものづくりが面白いと感じる気持ちを大切にして、将来の製造業の担い手も増やしていきたい」
家業を継ぐと決めて戻ってきたところにコロナ禍が発生、思ったように動けなかったと祐太氏ですが、これからは思う存分に”外へ”向かっていくつもりです。
「良質な医療器具も使い心地のいい耳かきも、当社の高い技術力があってこそ作れるもの。多くの人に『三祐医科工業』の存在を知ってもらってこそ、これからもいい仕事ができると思っています。これからはB to BだけでなくB to Cの充実も図り、バランスよく発展する会社にしていきたいと思っています」
三祐医科工業株式会社は2025年4月9日(水) ~11日(金)の3日間、医療系専門の展示会「メドテックジャパン2025」に出展します。これまで様々な展示会に出展してきましたが、医療系の展示会への出展は初めて。
“数年前に製造していて今は製造しなくなっていた器具を使いたい”そんなご要望を医療機器販売商社経由ではなく、違うルートで依頼を受ける機会も増えてきました。そんな状況下で、作れるのであればご要望にお応えできる製品もあると出展意義を考えての出展になります。ぜひこの機会にご相談ください。東京ビッグサイト東展示場でお待ちしております。
企業情報
三祐医科工業株式会社
https://www.sanyu-med.jp/
会社名:三祐医科工業株式会社
住所:東京都足立区六木1-12-9
TEL:03-3605-7842
創業年:1972 年
代表者名:小林祐太
事業内容
・医療機器製造販売業
・第三種医療機器製造販売業
許認可
・13BZ001416(医療機器製造業登録)
・13B3X00101(第三種医療機器製造販売業)
・29製造療386号(動物用医療機器製造業登録)
「足立ブランド」は、区内企業の優れた製品・技術を認定して、その素晴らしさを全国に広く発信することで、区内産業のより一層の発展と足立区のイメージアップを図ることを目的とした事業です。
『三祐医科工業株式会社』は、この「足立ブランド」認定企業です。
取材など掲載情報に関するお問い合わせは、「足立ブランド」の運営事務局でもある足立区役所産業経済部産業振興課ものづくり振興係でも受け付けております。
足立区役所産業経済部 産業振興課 ものづくり振興係
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