日本運動疫学会は、厚生労働省が策定した「アクティブガイド―健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023―(アクティブガイド2023)」に賛同する声明を発表しました。

日本運動疫学会のプレスリリース

・日本運動疫学会(理事長:岡浩一朗、早稲田大学 教授)は「運動および身体活動と健康に関連する疫学研究を発展させ、研究成果を社会に還元し、人々の健康の保持・増進に寄与する」ことを目的に活動している学会です。
・本学会は、厚生労働省が策定した「アクティブガイド―健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023―(アクティブガイド2023)」に賛同する声明を発表し、以下の本学会Webサイトに掲載しました。https://jaee.jp/products/statement/

・本学会が発表した声明(全文:上記の本学会Webサイトより転載)は以下の通りです。

2025年4月1日

厚生労働省「アクティブガイド健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(アクティブガイド2023)」に賛同する声明

1. 声明

 日本運動疫学会は、厚生労働省が策定した「アクティブガイド―健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023―(アクティブガイド2023)」(以下、アクティブガイド2023と表記)1)2)3)に賛同します。また、国民へのアクティブガイド2023の普及啓発を図ることや、様々な立場の関係者、例えば、健康づくりに関わる専門家(健康運動指導士、保健師、管理栄養士、医師等)、政策立案者(健康増進部門、まちづくり部門等)、職場管理者、その他健康・医療・介護分野における身体活動を支援する関係者が、国民の身体活動4)・運動5)を支援する際に、アクティブガイド2023を活用することを推奨します。この策定を契機として、国民の身体活動・運動の促進に寄与する取り組みが、より一層広がることを期待します。

2.声明の背景と根拠

 厚生労働省は、2013年に公表された「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」(以下、アクティブガイド2013と表記)6)を改訂し、「アクティブガイド―健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023―(アクティブガイド2023)」1)2)3)(以下、アクティブガイド2023と表記)を策定しました。アクティブガイド2023は、厚生労働省が2024年1月に公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」7)による身体活動・運動の推奨事項を、一般国民にわかりやすく伝えることをねらいとしています。改訂前のアクティブガイド2013は、対象別に策定されていませんでした。しかし、今回の改訂で、成人版1)、高齢者版2)、こども版3)の3種類が策定され、各対象のニーズや生活状況に応じた情報が提示されるようになりました。これは、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」7)において、成人、高齢者、こどもの対象別に推奨事項をまとめたことを受けたものです。

 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」7)でも繰り返し強調されているように、国民の健康づくりにおける身体活動・運動の重要性は明らかです。また、この重要性を裏付ける科学的根拠も十分確立されています。しかし、厚生労働省が毎年(新型コロナウイルス感染症の影響により調査中止した令和2~3年度を除く)行っている国民健康・栄養調査8)によれば、日本人の身体活動・運動の実践状況は、この四半世紀の間、向上する兆しの無いまま推移しています。行動科学理論の考え方のひとつであるCOM-Bモデル9)に基づくと、身体活動・運動の実践状況の改善を目指すには、身体活動・運動への理解が深まる情報や、身体活動・運動を行うことへのモチベーションが高まる情報、また、日常生活の中での身体活動・運動を行う機会への気づきを促す情報を国民へ普及啓発していくことが重要です。さらに、様々な立場の関係者が、それぞれの現場で、身体活動・運動の支援を行う際には、身体活動・運動の目安や留意点などの情報がわかりやすく簡潔にまとめられたツールがあると便利です。アクティブガイド2023には、身体活動・運動の推奨事項や安全面からのポイントなど、身体活動・運動への理解を深める情報や、生活時間帯別(朝、午前中など)や生活場面別(地域、家庭、職場)に、身体活動・運動を行う機会への気づきを促す情報が盛り込まれています。加えて、アクティブガイド2023は、「+10(プラス・テン)」という、身体活動・運動を行う時間を今より1日10分増やすことを推奨するメッセージや、「SW10(スイッチ・テン)」という、座りっぱなしをやめて+10(プラス・テン)を実践することを推奨するメッセージを前面に打ち出すなど、身体活動・運動を行うことへのモチベーションに配慮した構成となっています。そのため、アクティブガイド2023は、身体活動・運動の実践状況の改善を目指した普及啓発に有益な情報であるうえに、関係者が身体活動・運動の支援を行う際の便利なツールでもあると言えます。

 実際、今回の改訂前のアクティブガイド2013に注目した研究例10)では、この指針を認知することで、身体活動・運動への理解度やモチベーションが高まり、国民の身体活動・運動の実践状況の改善にもつながる可能性があることが示されています。ただし、この研究例10)では、調査対象である、オンライン調査会社に登録している日本人7000名において、アクティブガイド2013の認知率は2割未満に止まっていたことも報告されています。従って、アクティブガイド2023については、認知率が高まるような、より積極的な普及啓発が肝要です。

 以上の点から、日本運動疫学会の取り組みにも資するアクティブガイド2023に賛同し、国民へのアクティブガイド2023の積極的な普及啓発を行うことや、様々な立場の関係者が身体活動・運動を支援する際にアクティブガイド2023を活用することを推奨します。

3.日本運動疫学会の取り組み

 日本運動疫学会は「運動および身体活動と健康に関連する疫学研究を発展させ、研究成果を社会に還元し、人々の健康の保持・増進に寄与する」ことを目的に活動している学会です。上述のアクティブガイド2013に注目した研究例10)は、学会員らによるものです。また、今回の改訂案作成のための厚生労働科学研究には多くの学会員が貢献しました。上述の通り、アクティブガイド2023は、身体活動・運動の推奨事項を、一般国民にわかりやすく伝えることをねらいとしています。今後、より良い身体活動・運動の推奨事項を導く科学的知見を創出できるよう、本学会では、引き続き、運動疫学研究の発展に努めてまいります。

 また、国民へのアクティブガイド2023の普及啓発や、身体活動・運動の支援現場でのアクティブガイド2023活用の一助となり、研究成果の社会還元と人々の健康の保持・増進への寄与を実現できるよう、研修講習会への講師派遣や各種検討会・審議会などへの委員の就任、メディアなどからの取材依頼に対する学会員紹介や情報提供などの対応、および身体活動・運動と健康に関する科学的根拠の情報発信などの活動を積極的に行ってまいります。

4.関連Webサイトと用語説明

1) 厚生労働省Webサイト「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023-(アクティブガイド2023)成人版」 https://www.mhlw.go.jp/content/001361383.pdf

2) 厚生労働省Webサイト「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023-(アクティブガイド2023)高齢者版」 https://www.mhlw.go.jp/content/001361384.pdf

3) 厚生労働省Webサイト「アクティブガイド-健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023-(アクティブガイド2023)こども版」 https://www.mhlw.go.jp/content/001361392.pdf

4) 身体活動:安静にしている状態よりも多くのエネルギーを消費する、骨格筋の収縮を伴う全ての活動(厚生労働省Webサイト「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」3ページ記載)

5) 運動:身体活動の一部で、スポーツやフィットネスなどの、健康・体力の維持・増進を目的として、計画的・定期的に実施する活動(厚生労働省Webサイト「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」3ページ記載)

6) 厚生労働省Webサイト「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001194045.pdf

7) 厚生労働省Webサイト「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf

8) 厚生労働省Webサイト「国民健康・栄養調査」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html

9) COM-Bモデル:人々の行動(Behavior)は、能力(Capability)、機会(Opportunity)、およびモチベーション(Motivation)との相互作用により生じることを提唱するモデル(Michie S, van Stralen MM, West R. The behaviour change wheel: A new method for characterising and designing behaviour change interventions. Implement Sci. 2011;6(7):42. doi:10.1186/1748-5908-6-42)

10) Tajima T, Harada K, Oguma Y, Sawada S. Does health literacy moderate the psychological pathways of physical activity from guideline awareness to behavior? A multi-group structural equation modeling. BMC Public Health. 2023;23: 106. doi:10.1186/s12889-023-15012-3

5.声明に関するお問い合わせ先

日本運動疫学会事務局

〒359-1192 埼玉県所沢市三ヶ島2-579-15 早稲田大学スポーツ科学学術院内

E-mail: jaee.info@gmail.com

ホームページ: https://jaee.jp/

以上

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