– クレストスキンクリニックが世界初の研究成果を発表 –
医療法人社団慶峰会のプレスリリース
医療法人社団慶峰会クレストスキンクリニック(医師:森口 翔)は、医療レーザー脱毛後に「毛が濃くなる」という逆説的な現象「硬毛化(Paradoxical Hypertrichosis:PH)」に、性別によって大きな発症リスクの差があることを世界で初めて明らかにしました。
硬毛化とは、レーザーまたは光脱毛施術の後に、照射部位やその周囲で、それまでの産毛が太く・濃く・密な毛に変化してしまう現象を指します。これまで「まれな副作用」とされてきましたが、本研究により、特に男性では想定以上の頻度で起こっていることが判明しました。
本研究では、男性患者の約3人に1人(33.3%)が硬毛化を経験した一方で、女性では約11人に1人(9.0%)と有意に低く、男性は女性の約3.7倍のリスクがあることが統計的に示されました(p<0.05)。この成果は、国際的な皮膚科学誌「Journal of Cosmetic Dermatology」に、査読付きレター論文として2025年4月30日に掲載されました。
■男性にとって安易な脱毛が「逆効果」になるリスク
近年、メンズ脱毛市場は急速に拡大し、低価格を売りにしたサロンやクリニックが乱立する中で、脱毛クリニックの倒産や予約が取れないなど、継続が難しいというケースも増加しています。クリニック側に正しい知識と確かな技術が必要であり、そのようなリスクを伝えずに安易に不要な部位に脱毛を続けてしまうとかえって「毛が濃く太くなる」リスクがあることが今回の研究で裏付けられました
森口医師は以下のようにコメントしています。
「医療脱毛後の硬毛化は『まれな副作用』と言われてきましたが、男性では想像以上に高頻度で起きることが分かりました。現在、美容目的で脱毛を希望する男性は増えています。患者様にはこのリスクを正しく知った上で施術を選択していただきたいですし、我々医療従事者も男性患者への説明と対策をより一層重視すべきです。硬毛化自体は適切な追加治療で改善し得る現象ですので、リスクと向き合いつつ安全で効果的な脱毛治療を提供していきたいと考えています。」
■医療脱毛という選択を、もっと慎重に
脱毛市場は急拡大し、価格競争の中で技術水準や医療管理のばらつきが問題視されています。
脱毛はもはや「美容」の範疇ではなく、専門的な知識と継続的なフォローが不可欠な「医療行為」であるという認識が求められます。
クレストスキンクリニックでは今後も、脱毛における副反応の発生メカニズムや予防策の研究を進め、より安全で確実な医療脱毛の普及に貢献していく方針です。
補足資料
【研究の背景と目的】
医療用レーザーによる脱毛は安全性の高い治療ですが、「硬毛化」と呼ばれる予期せぬ体毛の増加という副作用がまれに報告されています。従来、硬毛化の発生率は0.6%程度から最大10%未満とされてきましたが、主に女性のデータに基づく推計であり、男女差は十分に検証されていませんでした。本研究の目的は、硬毛化リスクに性差があるかを調査し、患者への適切な情報提供に役立てることでした。
【研究方法と主な結果】
当院では2022年3月~2024年1月に医療脱毛を受けた患者318名(男性63名、女性255名)のカルテを後ろ向きに調査しました。使用レーザーはGentleMax Pro(アレキサンドライト755nm/ヤグ1064nm, Candela社)で、国内標準的な設定で施術を行いました。その結果、硬毛化の発生率は男性33.3%(21/63人)と女性9.0%(23/255人)で、男性患者で著しく高いことが判明しました(統計的有意差あり, p<0.05:図1)。さらに硬毛化が複数の部位に及ぶケースも、男性17.4%に対し女性1.6%と男性で顕著でした。部位別では、男性は背中(15.9%)・上腕(二の腕, 11.1%)・肩(7.9%)での硬毛化が多く、女性では顔(3.5%)・首(3.1%)・上腕(2.0%)に多い傾向が見られました。従来「硬毛化は顔周辺で起きやすい」と言われていましたが、本研究により男性では背中・肩など体幹部にも生じやすいことが示唆されます。 硬毛化の原因について確立した説はありませんが、男性は体毛密度やホルモンの影響により、レーザー刺激への反応が女性と異なる可能性があります。また、最近の研究では日焼け止めの習慣使用が硬毛化リスクを下げるとの報告もあり、紫外線防御など予防策の検討も必要です。
【考察と提言】
本研究は、男性の医療脱毛患者における硬毛化リスクが女性より顕著に高いことを示した世界で初の報告です。これにより、各クリニックが硬毛化リスクを説明する際の情報ばらつきを是正し、患者が性別に応じたリスクを認識した上で意思決定できるようになることが期待されます。現在、医療脱毛は市場が拡大し玉石混交の状況にありますが、科学的データに基づくリスク情報の開示が安全な医療提供には不可欠です。特に男性でリスクが高いと分かった以上、医療現場では男性患者への事前説明を徹底するとともに、背中・肩など硬毛化が起きやすい部位ではレーザー出力の最適化や代替施術(医療針脱毛など)の併用も視野に入れるべきでしょう。硬毛化が発生した場合でも照射パラメータを調整し治療を継続することで、最終的には毛量の減少が得られる可能性も報告されています。今後、さらなる症例収集と研究を通じて、硬毛化のメカニズム解明とリスク低減策の確立を目指します。
論文情報:
論文タイトル: “Gender Disparities in Paradoxical Hypertrichosis After Laser Hair Removal”
掲載誌: Journal of Cosmetic Dermatology(国際学術誌、Wiley出版)
責任著者: 森口 翔(医療法人社団慶峰会 クレストスキンクリニック)
公開日: 2025年4月30日(オンライン掲載)
DOI: 10.1111/jocd.70194
取材・お問い合わせ先:
医療法人社団 慶峰会
星野舞花
TEL: 047-406-3754
E-mail: contact@crestskin.clinic
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