【ファンケル】メイク汚れの可視化と保湿剤を選定して新たな水性クレンジング料の開発に成功

洗浄性能と安全性を両立させた開発に生かす

株式会社ファンケルのプレスリリース

株式会社ファンケルは、分子シミュレーション技術※1と小角X線散乱法※2を用いてメイク汚れの落ちる過程を可視化し、保湿剤を選定することで新規水性クレンジング料の開発に成功しましたのでお知らせします。メイク汚れを落とす性能を解明することで、肌に影響を与えやすい界面活性剤が低濃度でもしっかりとメイク落としができ、高い安全性を有したクレンジング料です。本研究は、慶應義塾大学(塾長 伊藤公平)、日光ケミカルズ株式会社(本社:東京都/代表取締役 社長執行役員 中原秀之)の協力を得ています。

※1 分子シミュレーション技術 : コンピューター内の仮想空間で原子・分子の動きを再現し、物理現象を分子レベルで解析する手法。

※2 小角X線散乱法 : 物質にX線を照射したときに生じる散乱像から物質の構造を分析する手法。

【クレンジング料の成分を可視化して保湿剤の違いが洗浄性能に寄与することを確認】

クレンジング料の洗浄性能には、界面活性剤の種類と配合量、配合成分の集合構造が影響します。この集合構造を小角X線散乱法と分子シミュレーション技術を用いて可視化しました。その結果、保湿剤の種類によって集合構造と洗浄性能が大きく異なることを見いだしました。

界面活性剤の濃度を4%と低くし、図1の左は、保湿剤としてシクロヘキシルグリセリン※3を配合した処方A、右はグリセリン※4を配合した処方Bの分子シミュレーション結果となります。処方Aは洗浄性能が高く、処方Bは洗浄性能が低い処方です。どちらも同じ球状の集合構造となっていますが、球の内部に着目すると、左は保湿剤であるシクロヘキシルグリセリン(図中の青色で表示)が球の内部に取り込まれており、右は保湿剤であるグリセリン(図中の青色で表示)が球の外部に存在していました。また、処方Aは界面活性剤がモザイク状に分散した構造となったのに対し、処方Bは界面活性剤がタマネギのような層状の構造となっており、界面活性剤の間に保湿剤であるシクロヘキシルグリセリンが入って界面活性剤の分散性が高まり、メイク汚れへの吸着を促進した結果、洗浄性能が向上したと考えられます。これらより、保湿剤の種類と集合構造の内部構造の違いが、洗浄性能に寄与することを確認しました。

※3 シクロヘキシルグリセリン : 保湿効果が高いにもかかわらずベタつき感の少ない、肌になじみの良い保湿成分

※4 グリセリン : 保湿性に優れた化粧品に最も頻繫に使用される保湿成分

【メイク汚れの吸着状態を可視化して洗浄メカニズムを考察】

さらに、洗浄性能の違いが生じるメカニズムを明らかにするため、クレンジング料中の配合成分が形成する集合構造がメイク汚れにどのように吸着するのか調査しました。分子シミュレーションでメイク汚れへの吸着の様子を可視化した結果、保湿剤としてシクロヘキシルグリセリンを配合した処方Aは、直ちに図下部のメイク汚れに吸着したのに対し(図2上)、保湿剤としてグリセリンを配合した処方Bは、図下部のメイク汚れに対して球状の集合構造が直ちに吸着していないことが明らかになりました(図2下)。

また、実際に機器を用いてメイク汚れへの吸着量を評価した結果、保湿剤としてシクロヘキシルグリセリンを配合した処方Aは、処方Bと比べて吸着量が多いことが明らかになりました(図3)。

この結果より、保湿剤の種類によってメイク汚れの吸着速度と量が異なることが分かりました。これは、洗浄性能を高めるために重要な要素であることが示唆されました。

【保湿剤を選定することで、水性クレンジング料でも高い洗浄性能が有せることを確認】

前述の検討結果を基に、簡易な処方で水性クレンジング料を作成してウォータープルーフタイプのアイライナーに対する実際の洗浄性能を評価しました(図4)。その結果、保湿剤としてシクロへキシルグリセリンを配合した処方Aは、高いメイク洗浄性能を有していることが分かりました。

このことから、保湿剤の種類を選定することにより、界面活性剤が低濃度でも高いメイク落ちを有した水性クレンジング料を開発できることが確認できました。

【研究背景・目的】

当社はオイルクレンジングの処方技術に強みを持っていますが、中にはオイルの使用感を好まない方や、世界を見るとオイルクレンジングを使用しない文化を持つ国も多数あります。そのようなニーズに沿えるよう、メイクが水性クレンジング料でもすっきり落とせるよう、本研究に着手しました。

一般的に水性クレンジング料の洗浄性能を高めるためには、界面活性剤の濃度を高める必要があります。しかし、そのようなアプローチでは肌刺激や乾燥を生じさせてしまいます。本研究では、界面活性剤の濃度を低く抑えながら、効率良くメイク汚れを落とす水性クレンジング料を開発するために、ミクロで洗浄メカニズムを可視化し、洗浄性能と安全性を両立したクレンジング料の開発を行いました。

総合研究所 化粧品研究所 洗浄剤開発グループ  課長 三譯 秀樹

【担当者のコメント】

本研究は、オイルクレンジングの技術を水性クレンジング料に応用することで、水性クレンジング料のすっきりした使用感はそのままに、メイクをしっかりと落とせる新たなクレンジング料の開発を考えたのがきっかけです。

オイルクレンジングと水性クレンジングでは洗浄メカニズムがまったく異なります。そのため、水性クレンジング料の洗浄メカニズムを可視化することで、新しいアプローチで洗浄性能の向上を試みました。本研究で見いだした処方骨格を活用し、今後グローバル展開に生かせる水性クレンジング料の製品開発へ応用していきたいと思っています。

Follow Twitter Facebook Feedly
SHARE
このページのURLとタイトルをコピー
お使いの端末ではこの機能に対応していません。
下のテキストボックスからコピーしてください。