弾力を保ち、壊れても自己再生する膜技術を確立

健やかな角層環境を保つため、水分を保持し続ける化粧膜を開発

株式会社ポーラ・オルビスホールディングスのプレスリリース

 ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、壊れても自己再生する化粧膜の技術により、従来では難しかった化粧膜中へ水分を長時間保持することに成功しました。

保水環境を長時間保つために、肌表面に水分保持膜を形成  

 健やかな肌を保つためには、角層をうるおった状態に保つことが必要です。そのため、スキンケアの技術開発では、角層からの水分蒸発を防ぐことに加えて、スキンケア製剤が形成する化粧膜に水分を保持し、肌へ補給することがなされてきました。しかし、手でこすったり、服が触れたりすると、化粧膜が崩壊してしまい、機能を維持することができなくなります。

              
 崩壊しにくい化粧膜を実現するためには、膜に適度な柔軟性を与えることが効果的ですが、行き過ぎると流動性が増し、膜は液状化してしまいます。これにより、肌の上で流れてしまい、本来の化粧膜としての役割を果たせなくなります。また、水分量が増えることでも膜は液状化します。そこで、水を多く抱えながらも流動せず、かつ崩壊しても元に戻る(自己再生する)化粧膜を設計しました(図1)。

性質の異なるポリマーを組み合わせることで、水分保持と自己再生を両立 

 はじめに、流動しない膜を形成できるポリマーを探すこととしました。流動しない膜は弾力が高くなることから、この実験では弾力を測定しました。次に、力が加わって膜が崩れた後、膜が再生するかを弾力の戻り率で調べました。その結果、再生力は弱いが弾力のある膜を作るポリマーと、膜に弾力はないが再生力が高いポリマーを見出しました。これらを最適な比率で組み合わせることで、弾力もあり、かつ再生力も高い化粧膜となる構成を見出すことに成功しました(図2)。さらに、この構成のポリマーに水分を添加したところ、汎用的なポリマーに比べ、1.4倍の水分を抱えられることが分かりました。

水分保持力を実現 

 本研究で設計した化粧膜の水分保持機能を確認するため、32℃の環境で化粧膜から水分が蒸発しきるまでの時間を測定しました。その結果、汎用的なポリマーを用いた化粧膜に比べて水分保持力に優れていることが示されました(補足資料1)。さらに膜自体の弾力も高いことが示されました(補足資料2)。本研究により、復元力と保水効果の両方に優れた化粧膜の技術を確立しました。本技術は、クリームをはじめとしたスキンケア品やメーク品に応用可能です。

                  

 ポーラ化成工業では今後も、お客様のニーズに応える新技術の開発を行っていきます。


【補足資料1】 化粧膜の水分保持力

  化粧膜サンプルを強制的に乾燥させ、水が蒸発して重量変化がなくなるまでの時間を測定しました。その結果、汎用的なポリマーで作製した化粧膜に比べ、本研究で設計した化粧膜は、水が蒸発しきるまでの時間がおよそ1.2倍に長くなりました(図3)。 

 このことから、本研究で設計した膜は、水分を維持する力が強いことが示唆されました。

 【補足資料2】 化粧膜の弾力測定

 化粧膜の弾力測定にはレオメーターを用いました。この測定では、サンプルに力をかけることで、サンプルの弾力(硬さ)と粘性(やわらかさ)を調べることができます。

本研究で設計した化粧膜は、汎用的なポリマーの化粧膜に比べ、弾力を示す指標の値が高いことが判明しました(図4)。

 また、化粧膜に壊れるまで力を加えた後、力を緩め、その過程の弾力の変化を測定しました。力を緩めた際に弾力が戻ることで、化粧膜の復元力が高いことが示されます。実験の結果、汎用的なポリマーの化粧膜に比べ、本研究で設計した化粧膜は、戻り率が93.5%と高い復元力を示しました(図5)。

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