日本メナード化粧品株式会社のプレスリリース
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、藤田医科大学医学部(愛知県豊明市沓掛町田楽ケ窪1番地98)応用細胞再生医学講座(教授:赤松 浩彦)及び皮膚科学講座(教授:杉浦 一充)と共同で、顔と身体(体幹と四肢)の皮膚の弾力の違いについて研究を行いました。顔、腹部、臀部、大腿部において遺伝子発現の違いを解析した結果、身体(腹部、臀部、大腿部)ではHOXA9と呼ばれる遺伝子が特異的に発現していることを発見しました。また、HOXA9遺伝子は、真皮線維芽細胞の増殖やコラーゲン、エラスチンの産生を促進することも確認しました。これらの結果から、HOXA9遺伝子が、顔と身体の皮膚弾力の部位差を生み出していると考えられました。これらの研究成果は、今後の皮膚科学研究や、ボディケア製品の開発への応用が期待されます。
私たちの皮膚は、部位によって構造や性状が異なります。これまでの研究から、顔に比べて、腹部や臀部、大腿部等の身体の部位では、皮膚が厚く、弾力が高いことがわかっています。しかし、このような顔と身体の皮膚性状の違いが何故生じるのかについては明らかになっていませんでした。
そこで本研究では、皮膚の弾力の部位差に着目し、皮膚性状の違いが生み出される要因を明らかにするために、顔と身体の各部位で特異的に発現する遺伝子の解析を行いました。その結果、HOXA9と呼ばれる遺伝子が、腹部や臀部、大腿部で特異的に発現していることを発見しました。また、HOXA9遺伝子が真皮線維芽細胞の増殖やコラーゲン、エラスチンの産生を促進することも確認しました。
これらの結果から、身体では特異的にHOXA9遺伝子が発現していることで、顔に比べてコラーゲン、エラスチンの産生が促進され、皮膚の弾力を高めていると考えられました。
本研究の成果は、皮膚性状の理解を深めるとともに、ボディケア製品の開発への応用が期待されます。
なお、本研究成果は、国際学術誌「Journal of Investigative Dermatology」(オンライン版)に掲載されました。
< 参考資料 >
1.顔と身体の皮膚弾力の部位差
皮膚の詳細な構造や性状は、部位によって差があることが知られています。20代の女性被験者を対象に顔と身体(腹部・大腿部)の皮膚弾力を測定したところ、顔と比較して、腹部と大腿部の弾力が高いことを確認しました(図1)。
2.皮膚弾力の部位差を生み出す遺伝子の探索
2-1. HOX遺伝子について
HOX遺伝子は個体の胚発生の初期において身体の構造(頭、胸、腹など)を決定する重要な遺伝子群です。これまでにヒトでは39種類のHOX遺伝子が同定されています(図2)。HOX遺伝子は胚の前後軸に沿った特定の領域で発現し、身体の各部位の形成を決定しています。近年では、胚発生段階だけでなく、成体においてもHOX遺伝子が機能を有することが報告されています。本研究では、HOX遺伝子が皮膚弾力の部位差にも影響を及ぼすと考え、研究を進めました。
2-2. 身体ではHOXA9遺伝子が特異的に発現していることを発見
30~60代(男女)の顔と身体(腹部、臀部、大腿部)の皮膚から採取した真皮線維芽細胞について、遺伝子発現の違いを詳細に解析した結果、HOX遺伝子の一つであるHOXA9遺伝子が身体で特異的に高発現していることが明らかとなりました(図3)。
2-3. HOXA9遺伝子は真皮線維芽細胞の増殖やコラーゲン、エラスチンの産生を促進する
HOXA9遺伝子の役割を明らかにするために、HOXA9遺伝子の機能を抑制した真皮線維芽細胞を作製し、皮膚弾力に関わる要素との関連を調べました。その結果、HOXA9遺伝子の機能が抑制された線維芽細胞では細胞の増殖能とコラーゲン、エラスチンの産生能が低下することが明らかとなりました(図4)。これらの結果から、HOXA9遺伝子は皮膚において弾力に大きく関係するコラーゲンやエラスチンなどの発現を高める役割があると考えられました。また、HOXA9遺伝子は、身体に特異的に発現していることから、顔と身体の皮膚弾力の部位差の要因となっていると推察されました。
3.掲載雑誌・タイトル・著者について
雑誌名: Journal of Investigative Dermatology
論文タイトル: Site-specific expression of HOXA genes in skin and its effect on skin elasticity
掲載アドレス: https://doi.org/10.1016/j.jid.2025.04.005
著者: 奥野 凌輔1, 2, 長谷川 靖司1, 2, 3, 長谷部 祐一1, 2, 堀田 美佳1, 2, 4, 山田 貴亮1, 3, 4, 石井 佳江1, 4, 有馬 豪3, 岩田 洋平3, 杉浦 一充3, 赤松 浩彦4
所属: 1 日本メナード化粧品株式会社 総合研究所
2 名古屋大学大学院 医学系研究科 名古屋大学メナード協同研究講座
3 藤田医科大学 医学部 皮膚科学講座
4 藤田医科大学 医学部 応用細胞再生医学講座