症状コントロールが不十分な慢性特発性じんましん患者さんを対象とした「慢性特発性じんましんの治療実態調査」結果発表

かゆみがつらく、10年以上症状が続く人も多い「いつまで続くのか分からない大変な病気」。9割超の患者さんは「分子標的薬」という新しい治療選択肢を知らない

サノフィ株式会社のプレスリリース

サノフィ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:岩屋孝彦)は、慢性特発性じんましん患者さんの疾患認識、治療実態、および分子標的薬を含む治療に対する認知や考えについて理解を深めることを目的とした「慢性特発性じんましんの治療実態調査」を実施しました。本調査は、症状コントロールが不十分(UCTスコア12点未満)な20代から50代の男女277名を対象としました。

慢性特発性じんましん(CSU:Chronic Spontaneous Urticaria)は、原因が特定できず(=「特発性」)、強いかゆみをともなう赤い膨らみ(膨疹)が現れては消える状態が6週間以上続く(=「慢性」)疾患です。「じんましん」という言葉自体は広く一般に知られているものの、実は原因が不明であることが多く、じんましんのうち約8割がこの原因が特定できない特発性のものと報告されています。※

またほとんどのじんましんは症状が出てから24時間以内に消失することが多いため軽視されがちですが、なかには症状が現れては消える状態を10年以上繰り返しているケースもあります。実際に今回の調査結果から、罹病期間が長期化している患者さんがいらっしゃること、患者さんは慣れや諦めから症状がある状態を当たり前と受け入れてしまっていること、さらに患者さんは治療によって症状が改善されることを知らないこと、といった実態が見えてきました。慢性特発性じんましんの治療は、2024年2月に慢性特発性じんましんに保険適用となる新たな「分子標的薬」も加わり、治療選択肢は広がってきています。しかしながら、本調査によれば93.1%の患者さんは治療選択肢として「分子標的薬」があることを認知していませんでした。

慢性特発性じんましんには症状を抑えるための治療法があります。そして最終的には治療をしなくても症状が現れない状態を目指せる時代となっています。一人ひとりの患者さんがそれぞれ最適な治療方法に巡り合い、ご自身の目指す状態になれるよう、サノフィ株式会社ではこれからもアレルギー疾患関連の総合情報サイト「アレルギーi」を通じ、慢性特発性じんましんの最新の診療情報を交えた疾患啓発に努めてまいります。

※出典:Saito R, et al. J Dermatol. 2022; 49(12): 1255-1262(2種類以上のじんましんを合併した患者では、主たる病型のみを集計)

<調査トピックス>

  1. 慢性特発性じんましん患者さんのうち、約4割が人生で最初に症状が出てから現在までの期間が「10年以上」と回答。4人に1人は「ほぼ毎日症状が出続けている」

  2. 慢性特発性じんましん患者さんの目指す治療ゴールの最多は「まったく症状が出なくなり、治療薬も必要なくなること」 で66.8%

  3. 慢性特発性じんましんについて「特に対策を行っていない」と回答した人は5.8%。9割以上の患者さんが様々な対策を行っている

  4. 慢性特発性じんましんは「いつまで続くのか分からない大変な病気」と思っている人が最多回答で、
    約95%は「治療で完治を目指せる病気」と思っていない

  5. 9割超の患者さんが慢性特発性じんましんの治療に「分子標的薬」という新しい治療選択肢があることを知らない

  6. 慢性特発性じんましんが「つらい」と思っている人は9割超。つらさの度合いは「まあまあつらいと思う」と回答している人が多く、症状への慣れから「つらさ」を過小評価している可能性がある

■調査結果を受けて、専門医からのコメント

千貫祐子(ちぬきゆうこ)先生

島根大学医学部 皮膚科学講座 准教授

島根大学医学部附属病院アレルギーセンター 

センター長

1996年島根医科大学医学部医学科卒業、同年島根医科大学医学部附属病院皮膚科 医員(研修医)、 1997年島根医科大学医学部附属病院皮膚科 助手、2002年平田市立病院(現出雲市立総合医療センター) 皮膚科 医師、2009年島根大学医学部皮膚科 助教、2013年島根大学医学部大学院(博士課程)卒業、同年島根大学医学部皮膚科 講師、2020年島根大学医学部皮膚科 准教授、2023年島根大学病院アレルギーセンター 副センター長兼任、2025年島根大学病院アレルギーセンター センター長兼任

「治療をすればすぐに治る」は患者さんの思い込み

慢性特発性じんましんは、治療に時間がかかる疾患

慢性特発性じんましんは、症状が現れたり消えたりするため、今のかゆみさえ止めてもらえればすぐに治ると期待される患者さんが多いのですが、今回の調査結果にもある通り、最初に症状が現れてから10年以上継続している患者さんも珍しくない疾患です。じんましんの場合、慢性疾患という意識が希薄で、特に発症したばかりの時期は“じんましんの治療には時間がかかる”ということを知らずに、「2週間も治療しているのに治らないなんて、この治療を続けているだけで本当に大丈夫なのだろうか」と感じてしまう患者さんもいます。それが発症から1年以上継続してくると、「この先ずっと良くならないのかも」と感じ始めるようになってきます。

「まあまあつらい」も1年、5年、10年続けば、これがいつまで続くのかと不安

調査では、約9割が「つらいと思う」と回答しながらも「まあまあつらい」と回答した患者さんが多いという結果でしたが、恐らく本人が自覚している以上に「つらさ」を感じていると思います。症状が長く続くと慣れてくるので、今の状態が当たり前、こんなものだと思うようになって、控えめに「まあまあ」と回答してしまっているのではないでしょうか。しかし「まあまあつらい」でもそれが1年、5年、10年と続けば、これがいつまで続くのだろうと不安に思うのは容易に想像できます。

慢性特発性じんましんは、症状が現れない状態を維持する治療の時代

かゆくなったら薬を飲めばよいと考えている方が結構いらっしゃいますが、「症状が出たら薬で治療をする」ではなく、「症状が出ていないときも薬で治療をして、症状が現れない状態を維持する」ことが重要です。普段の診療で患者さんとお話ししていると、慢性特発性じんましんは、疾患・治療ともにまだ十分に知られていないと感じています。そのため、93.1%の患者さんが「分子標的薬」が慢性特発性じんましんの治療に使えることをご存知ないのも当然だと思います。以前、私の診療を受けに来た患者さんも分子標的薬のことを知らなかったため、「私は12年も苦しんだ、もっと早く次の一手があることを知りたかった」と話していたのがとても印象的でした。今は病気の原因にピンポイントにアプローチする「分子標的薬」の登場で、きちんと先手必勝で治療を行い、症状が現れない状態を維持できるようになってきています。いつまでも続くじんましんを不安に思う患者さんも多いと思いますが、諦めずにご自身に合う治療方法を医師と共に探ってほしいと思います。

調査概要

<実施時期>      

2025年3月28日(金)~2025年4月4日(金)

<調査対象>      

20歳から59歳の男女277名

<調査条件>      

①医療機関(診療科)を受診中の慢性特発性じんましん患者さん

「慢性特発性じんましん/CSU」と診断されていなくても「原因不明のじんましん」、「慢性じんましん」と診断された人で、症状が6週間以上継続している人は対象

②UCTスコア12点未満

UCTスコアとは

患者さん自身が過去4週間のじんましんの状態を評価するツールで、4つの質問にそれぞれ5段階で点数をつけて、最終的に合計点で評価します。16 点満点で点数が 高いほど、じんましんのコントロール状態が良いことを示しています。

<調査エリア>     

全国

<調査方法>      

インターネット調査

<調査委託先>     

イプソス株式会社

調査結果詳細

1.慢性特発性じんましん患者さんのうち、約4割が人生で最初に症状が出てから現在までの期間が「10年以上」と回答。4人に1人は「ほぼ毎日症状が出続けている」

人生で最初に慢性特発性じんましんの症状が出てから、現在までの期間をお聞きしたところ、「10年以上」と回答した人が39.0%でした。「1年以上」となると82.7%の人が該当し、慢性特発性じんましんは、すぐに治る疾患ではなく、数年にわたり症状を抱えている患者さんが多いことが分かります。継続した治療の重要性がうかがわれます。症状が出る頻度をお聞きした設問では、10年以上続いている人の27.8%は「ほぼ毎日症状が出続けている」と回答しており、決して“たいしたことない病気”ではないことが浮き彫りとなりました。

2.慢性特発性じんましん患者さんの目指す治療ゴールの最多は「まったく症状が出なくなり、治療薬も必要なくなること」 で66.8%

ご自身の慢性特発性じんましんの症状について、治療ゴールとして最も希望する状態をお聞きしたところ、66.8%の患者さんが「まったく症状が出なくなり、治療薬も必要なくなること」と回答しました。約7割の人が「蕁麻疹診療ガイドライン2018」で治療ゴールの最終目標と明記されている「無治療で症状が現れない状態」を目指しているにも関わらず、約8割の人に1年以上、症状の継続がみられており(Q1-1の結果)、治療ゴールの最終目標まで改善できていない実態が見受けられます。

3.慢性特発性じんましんについて「特に対策を行っていない」と回答した人は5.8%。9割以上の患者さんが様々な対策を行っている

慢性特発性じんましんの対策として行っていることをお聞きしたところ、「1年以上、医療機関への通院を継続している」が62.1%で最多回答でした。「特に対策を行っていない」と回答した人は5.8%しかおらず、今、症状が出ていなくても症状を抑えるための対策など、9割以上の患者さんが慢性特発性じんましんに対して何かしらの対策を行っていますが、1年以上、症状が継続している人が多く、長期的な症状の改善につながっていないようです。

4.慢性特発性じんましんは「いつまで続くのか分からない大変な病気」と思っている人が最多回答で、約95%は「治療で完治を目指せる病気」と思っていない

慢性特発性じんましんをどのような疾患だと思うかをお聞きしたところ、「いつまで続くのか分からない大変な病気」と回答した人が56.3%で最多でした。強いかゆみをともなう疾患なので「かゆみがつらい大変な病気」と回答した人も44.0%で上位の回答となっています。また罹病期間が長期化している人が多いからか、「無治療で症状が現れない状態」を目指しているものの、約95%の患者さんが「治療で完治を目指せる病気」とは思っていないことも分かりました。

5.9割超の患者さんが慢性特発性じんましんの治療に「分子標的薬」という新しい治療選択肢があることを知らない

慢性特発性じんましんの治療に「分子標的薬」という新しい治療選択肢があることを知っているかお聞きしたところ、93.1%の患者さんが「いいえ」と回答しました。今回の調査では、人生で最初に症状が出てから現在までの期間が10年以上という患者さんが4割近くいますが、10年以上の人も含めほとんどの慢性特発性じんましん患者さんが新しい治療法があることを知らないことが明らかになりました。

6.慢性特発性じんましんが「つらい」と思っている人は9割超。つらさの度合いは「まあまあつらいと思う」と回答している人が多く、症状への慣れから「つらさ」を過小評価している可能性がある

慢性特発性じんましんについて「つらい」と思うかをお聞きしたところ、「つらいと思う」と回答した患者さんは92.4%でした。つらさの度合いを見ると「まあまあつらいと思う」が45.8%で多数回答となりました。この結果は、千貫祐子先生によると「罹病期間が長期化していることで症状への“慣れ”が生じ、つらいとは思いつつも、ご自身のつらさを過小評価してしまっているためではないか」ということでした。

慢性特発性じんましん(CSU)について

慢性特発性じんましん(CSU:Chronic Spontaneous Urticaria) は、膨疹が突然現れ、かゆみが持続する慢性炎症性皮膚疾患で、2 型炎症が関与しています。慢性特発性じんましん(CSU)の治療では主に、じんましんの症状改善を目的とするH1抗ヒスタミン薬(細胞表面のH1受容体を標的とする薬剤)が用いられます。抗ヒスタミン薬で十分な改善が得られない患者さんは多く、生活の質(QOL)に大きく影響するつらい症状に悩まされています。これまで一部の患者さんでは治療選択肢が限られていましたが、現在では分子標的薬が登場し、抗ヒスタミン薬以外の治療選択肢が広がってきています。

アレルギーiについて

日本国内のアレルギー疾患患者さんおよびそのご家族を対象とした、サノフィが運営するアレルギーを含む2型炎症に関する情報サイトです。慢性特発性じんましんをはじめ、アトピー性皮膚炎や気管支喘息、副鼻腔炎などの疾患と上手に付き合うために、お役立ち情報を提供しています。

 サイトURL:https://www.allergy-i.jp/kayumi/


サノフィについて

サノフィは、研究開発型の AI を活用したバイオ医薬品企業であり、人々の暮らしをより良くし、力強い成長をもたらすことに尽力し ています。免疫科学領域の深い知見を活かし、世界中の何百万人もの人々の治療と予防を行う医薬品やワクチンを提供し、さら なる貢献のために革新的なパイプラインの構築にも注力しています。「人々の暮らしをより良くするため、科学のもたらす奇跡を追 求する」という使命のもと、医療・環境・社会が抱える課題に真摯に向き合い、社員と国や地域社会にとって前向きな変化を生み 出すことを目指しています。

 日本法人であるサノフィ株式会社の詳細は、http://www.sanofi.co.jp をご参照ください。

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