日本メナード化粧品株式会社のプレスリリース
日本メナード化粧品株式会社(愛知県名古屋市中区丸の内3-18-15、代表取締役社長:野々川 純一)は、藤田医科大学 ばんたね病院 総合アレルギー科(愛知県名古屋市中川区尾頭橋3-6-10、教授:矢上 晶子)との共同研究で、顔の赤み、刺激感、ほてり感などの症状を引き起こす炎症性疾患「酒さ」と皮膚常在菌との関係を調べました。その結果、酒さ患者の皮膚常在菌叢は健常人と異なり、レンサ球菌※1の割合が多くなっていることがわかりました。つまり、皮膚常在菌叢の乱れが酒さに関与していることが示唆されました。
酒さとは、額や鼻、頬といった顔面部に赤みや刺激感、ほてりなどが生じる慢性的な炎症性疾患で、重症でない場合は“赤ら顔”とも呼ばれます。酒さの発症や慢性化には皮膚常在菌が関与していると考えられてきましたが、その関係性には不明な点が多く残されています。そこで今回、酒さと皮膚常在菌との関わりを明らかにすることを目的とし、酒さ患者と健常人における皮膚常在菌叢の解析を行いました。
遺伝子を網羅的に解析できる次世代シーケンサーを用いた解析の結果から、酒さ患者では健常人と比較してレンサ球菌※1と呼ばれる菌の割合が多くなっていることがわかりました。レンサ球菌は一般的に、健常な皮膚常在菌叢における割合が低いことから、酒さ患者では皮膚常在菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)が起きている可能性が示唆されました。
今後も酒さと皮膚常在菌との関係性の研究を進め、酒さが慢性化するメカニズムの解明や顔の赤みを改善する新たなアプローチの開発を目指していきます。なお、本ニュースリリースの内容は、2025年7月4日から5日にかけて東京で開催された第50回日本香粧品学会学術大会における発表内容の一部です。
※1 レンサ球菌:咽頭や皮膚などでみられる細菌。皮膚常在菌として一般的な菌だが、健常な皮膚では検出頻度が低いことが知られている。
〈参考資料〉
1.酒さ患者における皮膚常在菌の解析
酒さ患者女性19名(23~70歳)と健常女性12名(34~60歳)の頬を対象とし、綿棒を用いた拭き取り法によって皮膚常在菌のサンプリングを行い、次世代シーケンサー※2を用いて皮膚常在菌の菌叢解析を実施しました。その結果、酒さ患者の皮膚常在菌叢ではレンサ球菌の割合が多くなっていました。このことから、酒さ患者の皮膚常在菌叢は健常人と異なっており、酒さ患者では皮膚常在菌の乱れ(ディスバイオーシス)が起きている可能性が示唆されました。
※2 DNAやRNAの塩基配列を従来よりも高速かつ大量に読み取る装置。
また、同被験者から同様にサンプリングした皮膚常在菌のDNAを用いて、PCR法※3による皮膚常在菌数の測定を実施しました。その結果、統計的な有意差は認められなかったものの、健常人ではレンサ球菌がほとんど検出されなかったのに対し、酒さ患者ではレンサ球菌の数が多く確認されました。
※3 Polymerase Chain Reaction法。菌からDNAを抽出して酵素(ポリメラーゼ)を用いた増幅反応を行い、増幅速度から元の菌数を推定する方法。