「脱毛サロン」の倒産、前年比3倍ペース 過去最多を大幅更新へ 推計延べ50万人が「倒産被害」 最大手「ミュゼプラチナム」運営会社が破産

「脱毛サロン・クリニック」の倒産動向(2025年1-7月)

株式会社帝国データバンクのプレスリリース

株式会社帝国データバンクは「脱毛サロン・クリニック業界」ついて調査・分析を行った。                 

SUMMARY

2025年1-7月に倒産した「脱毛サロン(医療クリニックを含む)」が12件に達した。前年比3倍増のペースで、通年でも過去最多を更新する見込み。価格競争の激化に加え、相次ぐ経営破たんで業界に対する利用者の不信感も影響し、「赤字」の事業者は4割を占めた。

なお、8月18日には美容脱毛サロン最大手「ミュゼプラチナム」を運営していたMPH(株)が破産となるなど業界全体で信頼回復が急務であり、ビジネスモデルの見直しが求められる。

                        

[注1] 倒産は集計期間:2000年4月1日~2025年7月31日、負債1000万円以上、法的整理によるもの

[注2] 業績等のデータについては、帝国データバンクが保有する「事業者信用調査報告書(CCR)」を基に分析した


 脱毛サロンの倒産、前年比3倍ペース 最大手「ミュゼ」運営破産 

 

2025年1-7月に判明した「脱毛サロン(医療クリニックを含む)」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は12件発生した。前年同期(4件)から3倍増と急増した。足元では、脱毛サロン最大手の「ミュゼプラチナム」を運営していたMPHが破産となるなど倒産が引き続き発生しており、通年では過去最多を大幅に更新するとみられる。

2023年以降、「銀座カラー」や「アリシアクリニック」、2025年初旬には「トイトイトイクリニック」など知名度の高い事業者が相次ぎ破産し、MPH(未施術の顧客を含めた債権者約20万人超)を含めると、過去2年で推計延べ50万人の利用者、3000人を超える施術スタッフ(従業員)が影響を受けたとみられる。MPHをはじめ、倒産した脱毛サロン・クリニックの多くが、若年層を主なターゲットとして著名なタレントを広告塔として起用し、コースでの契約を主としながら多額の前受金が入ることで事業拡大を進めていた。しかし、集客のため前受金も広告費に支出した事業者も多く、結果的に新規会員からの契約が減少したことで自転車操業に陥り、「契約通り支払ったのに施術が受けられない」利用者の被害が拡大する要因となった。

脱毛業界では、「多額の広告費と前受金ビジネス」「固定費・販管費負担の増大」「価格崩壊による競争激化と消費マインド低下」の三重苦に直面し、経営難に陥る事業者が増えている。脱毛事業を中心に展開する事業者の業績をみると、2024年度は約4割が赤字となり、「減益」を含めた「業績悪化」の割合は56.5%と半数を超えた。6割を超えた前年度(61.2%)に比べると低下したものの、依然として厳しい採算状況に直面した事業者が多かった。出店の多い都市部では賃料が上昇しているほか、円安の影響で輸入品が多い脱毛機器の導入費用が高騰し、1店当たりの出店コストが上昇している。スタッフの離職率の高さや採用難により、研修コストを含めた人件費も高止まりした。他方、昨今の物価高の影響で消費者が美容支出を控える動きが強まったことに加え、近年相次いだ脱毛事業者の経営破たんも背景に、施術の効果や価格、口コミなどを細かく確認するなど、業界に対する利用者の不信感が影響した。そのため、売り上げを下支えする既存客の再来店率や定額会員の継続率が低下、新規顧客の獲得が困難となった事業者もみられた。

足元では、脱毛サロン・ミュゼプラチナムを運営するMPH(株)が8月18日に破産手続き開始決定を受けた。広告宣伝と高価格な施術コースに依存した脱毛業界のビジネスモデルは限界に達しており、業界全体の信頼回復に向けた取り組みが急がれる。

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