日本版「物語の処方箋ブックリスト」を作成し「社会的処方」としての有効性を検証
大日本印刷株式会社のプレスリリース
大日本印刷株式会社(DNP)と鎌倉女子大学は、2025年4月に共同研究契約を締結し、文学作品等の「物語」が読者に与える心理的効果を可視化する「物語の処方箋ブックリスト」の作成に向けた研究を実施しています。2025年8月から、この研究対象を生活者に拡げ、2025年9月末までオンライン調査を実施します。さらに、2026年9月末にかけ、このリストについて、書店や図書館等の関連機関からの評価を得るなど、“読書”が心身の健康に与える効果を調査し、生活の質(QOL:Quality Of Life)の向上につながる「社会的処方(social prescribing)」*1としての有用性を検証する研究を加速させていきます。
共同研究のポイント
○DNPは、読書が心理に与える影響を研究する第一人者である鎌倉女子大学 児童学部子ども心理学科の初澤宣子(のりこ)講師との共同研究を推進しています。両者は、主に日本文学を対象とした「物語の処方箋ブックリスト」の開発とその有用性を検証していきます。これにより、読書のさらなる可能性を引き出し、文化活動と心身の健康増進をつなぐ新たなアプローチの確立を目指します。
○読書には、認知機能の維持・向上、ストレス軽減、語彙力や理解力の向上など、心身に良い多面的な効果があると言われています。特に文学作品・物語は、登場人物への共感を通じて、読者に多様な感情体験を提供します。こうした読書の効用を「社会的処方」として活用する取り組みも国内外で進められています。イギリスの「Reading Well」*2という先行事例では、医師が図書館と連携し、健康に関する課題の解決に向けて、書籍を薬のように「処方」する仕組みが導入されています。
○この研究は、これまでその価値を可視化することが難しかった読書とウェルビーイングの関係を探求し、その成果を広く社会に役立てることを目指しています。読書がもたらす影響を体系的に分析し、社会全体の健康促進に貢献する新しいモデルである「社会的処方」の仕組みを事業として広げることを目指し、この研究を鎌倉女子大学との連携によって加速させていきます。
「物語の処方箋ブックリスト」の作成・有用性検証に向けた調査研究について
○研究期間 : 2025年4月1日~2026年9月30日
○研究方法 :
(1)「物語の処方箋ブックリスト」の作成
20代および60代の成人を対象にしたオンライン調査
(調査期間 : 2025年8月1日~2025年9月30日)
(2)「物語の処方箋ブックリスト」の有用性検証
図書館員・書店員を対象としたオンライン調査
○研究の目的 :
(1)「物語の処方箋ブックリスト」の作成
調査対象の生活者から文学作品・物語を読んだ際の感情体験を収集し、それに基づいて「物語の処方箋ブックリスト」を作成します。このリストは、作品ごとに読者が得る感情や心理的効果を明示することを目的としており、「社会的処方」の際の効果的な作品選定に活用していきます。
(2)「物語の処方箋ブックリスト」の有用性検証
(1)で作成したブックリストについて、図書館員や書店員からの評価を得ることで、その有用性を検証します。専門的な視点を取り入れて、このブックリストが実際の読書活動にどのように役立つかを評価し、必要に応じて改善・アップデートして信頼性を高めていきます。
*1 社会的処方:従来の医学的治療に加えて、地域の社会的リソースや活動への参加を推奨する取り組みを指します。孤立感、生きがい不足など、医学的治療だけでは対処しにくい健康の社会的決定要因にアプローチして、QOLやウェルビーイングを向上することを目的としています。
*2 「Reading Well」について → https://readingagency.org.uk/get-reading/our-programmes-and-campaigns/reading-well/
※記載内容は発表日現在のものです。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。