~日本老年歯科医学会第36回学術大会にて発表~
サンスター株式会社のプレスリリース
サンスターグループ(以下、サンスター)は、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢機構長・教授らのグループとの共同研究において、オーラルフレイル予防のための具体的な指導内容の検討に役立てるため、地域在住高齢者におけるオーラルフレイルの該当レベルとお口のケア習慣との関連性を解析しました。
その結果、1日2回以上の歯みがき、週1回以上の歯間ブラシの使用による歯間清掃、年1回以上の歯科受診がオーラルフレイルの該当率と関連していることが判明しました。歯科専門職にだけでなく誰でも推奨が可能であり高齢者が自ら日常的に取り組める、歯みがき、歯間清掃、歯科受診のお口のケア習慣が咀嚼機能の維持や歯周病等の歯科疾患の抑制を通じて、オーラルフレイルの予防に繋がった可能性が考えられます。この研究成果は日本老年歯科医学会第36回学術大会にて発表されました。
<研究概要>
◆研究の背景・目的
“オーラルフレイル”は、2024年4月1日に発出された「オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント」において「歯の喪失や食べること、話すことに代表されるさまざまな機能の『軽微な衰え』が重複し、お口の機能低下の危険性が増加しているが、改善も可能な状態である」と定義づけられました。オーラルフレイルは要介護・死亡リスクを高めることが報告されており、その予防対策が急務となっています。
また同ステートメント内で、特別な検査機器がない場合や歯科専門職が不在の場合でも、自身で簡単にオーラルフレイルのチェックが可能な「Oral frailty Five-item Checklist(OF-5)」が発表されました。しかし、その発症や重篤化を予防するための具体的な指導内容はまだ十分ではありません。そこで、誰からでも推奨が行え、高齢者が自ら日常的に取り組めるお口のケア習慣と、オーラルフレイルとの関連を明らかにするため、本研究を実施しました。
◆研究対象者と方法
本研究は、2021年に千葉県柏市在住の65歳以上の健康な高齢者に実施した調査のうち、データに不備のない1,439名を対象とし、OF-5で判定したオーラルフレイルの有無と、お口のケア習慣である歯みがき回数・歯間清掃回数・歯科受診状況との関連性を横断的に解析しました。
◆研究結果
影響するさまざまな因子の調整後の解析により、歯みがき、歯間清掃、歯科受診といったお口のケア習慣の実践の有無とオーラルフレイルの該当・非該当が関連していることがわかりました。
さらに、これら3つのお口のケア習慣をすべて実施している人は、オーラルフレイルの該当率が最も低く、実施項目が少ないほど該当率が高くなることが確認されました。
◆結論
地域在住高齢者において、1日2回以上の歯みがき、週1回以上の歯間ブラシの使用による歯間清掃、年1回以上の歯科受診がオーラルフレイルの該当率と関連していることが判明しました。セルフケアでの歯みがき、歯間清掃用具を使用したお口の健康管理、歯科受診が咀嚼機能の維持や歯周病等の歯科疾患の抑制を通じて、オーラルフレイル予防に繋がった可能性が考えられます。
サンスターは、これからもオーラルフレイルに関する啓発を継続し、オーラルフレイルの認知及び理解を促進することで、お口の健康を通じた健康寿命の延伸に貢献していきます。
<研究結果に関するコメント>
東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長
東京大学 未来ビジョン研究センター 教授
飯島勝矢(いいじま かつや)先生
オーラルフレイルに早期に気づき対策を行うことにより、お口の機能低下を緩やかにし、さらには改善する可能性があります。今回の研究により、専門職以外でも推奨可能な具体的なお口のケア習慣がオーラルフレイルと関連があることが確認されました。これらの行動は高齢者が自ら取り組むことができるため、ご本人にとっては自己効力感が高まり、さらなる健康行動の促進が期待されます。また、行政などのオーラルフレイル予防・対策の推進を担う側にとっては、よりさまざまな場面でのアプローチが可能となります。今回の研究結果がオーラルフレイル概念のさらなる普及につながり、お口の総合的な健康維持が、高齢者の健康における重要なポイントの一つとして認知されることを期待します。
サンスター株式会社 研究開発統括部
歯科衛生士 溝口奈菜(みぞぐち なな)
歯科衛生士の観点から、週1回以上という具体的な歯間清掃の頻度が明らかになったことは非常に意義深いと考えます。歯間ブラシによる歯間清掃は、ハブラシだけでは除去できない歯間部の歯垢を効果的に除去し、歯周病予防に重要な役割を果たします。歯周病の進行は歯の喪失につながり、咀嚼機能の低下を招くため、歯間清掃の習慣化はオーラルフレイル予防の重要な要素です。この研究結果を機に、まだ歯間ブラシを使用したことがない方も、定期的な歯科受診と1日2回以上の歯みがきに加えて歯間清掃を取り入れていただけると嬉しく思います。
<論文タイトルと著者>
・タイトル:オーラルフレイル新5項目(OF-5)で評価したオーラルフレイルと口腔衛生行動との関連:柏スタディ
・発表者:溝口奈菜1)、永谷美幸1)、田子森順子1)、池田健太郎1,2)、前田真理子1)、田中友規2,3)、飯島勝矢2,3)
1)サンスター株式会社、2)東京大学高齢社会総合研究機構、3)東京大学未来ビジョン研究センター
【サンスターグループについて】
サンスターグループは、持株会社サンスターSA(スイス・エトワ)を中心に、オーラルケア、健康食品、化粧品など消費者向けの製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・スイスSA(スイス)と、自動車や建築向けの接着剤・シーリング材、オートバイや自動車向け金属加工部品などの産業向け製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・シンガポールPte.Ltd.(シンガポール)を中核会社とする企業グループです。
100年mouth100年health
人生100年時代、サンスターが目指すのは、お口の健康を起点とした、全身の健康と豊かな人生。毎日習慣として行う歯みがきなどのオーラルケアは、お口の健康を守り、そして全身の健康を守ることにもつながっています。100年食べ、100年しゃべり、笑う。一人ひとり、自分らしく輝いた人生、豊かな人生を送るためにも、お口のケアを大切にしていただきたいと考えています。今後もお口の健康を起点としながら全身の健康に寄与する情報・サービス・製品をお届けすることで、人々の健康寿命の延伸に寄与することを目指していきます。