アジア最大のAIデジタル慢性疾患管理プラットフォーム:台湾と日本をつなぐヘルスケアの使命

シンクヘルス社のサービス、日本でもユーザー数70万人を突破

比翼加速器股份有限公司のプレスリリース

世界で最も早く超高齢化社会に突入した日本において、糖尿病・高血圧・メタボリックシンドロームといった慢性疾患は、大きな医療負担となっています。統計によれば、日本の糖尿病患者数は1,000万人を超え、関連する医療費は国民皆保険制度における膨大な支出を占めています。さらに看護師や保健指導員の人材不足も加わり、「デジタルツールを活用して慢性疾患管理をいかに強化するか」が、政策・企業・医療現場に共通する課題となっています。

こうした背景のもと、シンクヘルス株式会社は日本最大規模のデジタル慢性疾患管理プラットフォームへと成長しました。世界での利用者約160万人のうち、日本のユーザーは70万人を超えています。

同社は日本の投資家からの支援を得るとともに、複数の大手企業健康保険組合との協業を通じて、従業員がアプリやデータを活用し健康改善に取り組めるよう支援しています。日本に根付いたソリューションとして評価されるこのイノベーションは、台湾発であり、日本市場で大きな成果を挙げています。

日本文化と共鳴する、祖母の「迷惑をかけたくない」という思い

創業者兼CEOの 鄧居義(Ed Deng) 氏が起業の着想を得たのは、家族の実体験でした。

 「私の家族には糖尿病を患う者が多く、家族に医師がいても病状が大きく改善することはありませんでした。しかし、祖母だけは比較的病状をうまくコントロールできていたのです。その理由は、日常生活の中にデータ管理を取り入れていたからだと気づきました。また、祖母が自己管理に努めていたのは、健康のためだけではなく、『家族に迷惑をかけたくない』という思いからでした。」と鄧氏は振り返ります。

こうした家庭での体験を背景に、鄧氏は、日本に根付く「他人に迷惑をかけない」という価値観を一層深く理解するようになりました。これはまさに、デジタルツールが患者の自立的な管理を支え、家庭や医療システムへの負担を軽減するうえで重要であることを示しています。

シンクヘルス社は2013年に設立され、消費者向けの血糖管理アプリから事業を開始し、医師・製薬企業・保険会社・公的保険機関をつなぐ国際的なプラットフォームへと発展してきました。現在では、CVRM(心血管・腎疾患・代謝性疾患)といった幅広い領域へ事業を拡大しています。

「慢性疾患のソリューションは、患者を支援するだけでなく、医師の迅速な意思決定を可能にし、さらに公的・民間保険に対して『効果的な管理がコスト削減につながる』ことを示す必要があります」と鄧氏は強調します。

近年、シンクヘルス社 はAIを導入し、アジア全域に共通する「1人の保健指導員に対し2万5千人の患者」という深刻な人材不足を補完しています。

 「この不足は数十年経っても人手だけでは解決できません。だからこそ、私たちはAIとソフトウェアを活用して効率化を図りたいのです」と鄧氏は述べています。

こうした取り組みにより、同社のプラットフォームは患者と産業の双方から高い評価を得ており、2023年には、Tatler Asia による「アジアで最も影響力のある台湾人」の一人に鄧氏が選出され、デジタル慢性疾患管理分野におけるリーダーシップが評価されました。同年、開発した 「易速胰(Insultrate)」 が台湾TFDAの認可を取得し、台湾初のデジタル治療(DTx)として位置づけられました。

現在、シンクヘルス社のアプリは CGM(持続血糖測定器)・血糖・血圧・体重・ワイヤレスインスリンペン・フィットネスバンド など多様なデバイスと連携可能であり、クラウドケアプラットフォームを通じて医師が患者の日常データを即時に把握できるようになっています。これにより、家庭から臨床、そして台湾から国際市場へと広がる、包括的な慢性疾患ケアを実現しています。

日本展開の鍵:現地チームと文化の理解

2018年、シンクヘルス社は日本に子会社を設立し、台湾で培った経験を日本市場へと展開しました。鄧氏は次のように述べています。「最初の海外市場として日本を選んだのは、高齢化の進行と国民皆保険制度への負担が大きく、デジタル慢性疾患管理の必要性が一層高まっていたからです。」

一方で、彼は率直にこう指摘します。

「多くの海外企業が日本市場に参入を試みていますが、文化を十分に理解できていないケースが少なくありません。私たちの現地チームは、日本語での対応と、日本独自のビジネスの進め方に沿って業務を遂行できる。これこそが、日本への参入を実現できた最大の要因です。』

現在、シンクヘルス社は大手企業に対し糖尿病やメタボリックシンドローム管理の導入を支援し、リアルワールドエビデンス(RWE)を通じて『質に基づく診療報酬』への政策転換に対応できる体制を整えています。

日本大手企業との共創:現地に適した協力基盤

シンクヘルス社は、日本の大手企業や金融機関との協業を通じて、現地における確かな信頼を築いてきました。代表例が Sompoホールディングス であり、同社はシンクヘルス社への投資であるだけでなく、糖尿病専用保険の共同開発にも参画しています。

また、シンクヘルス社は Abbott、Dexcom、Sanofi、Novo Nordisk、AstraZeneca といった多国籍製薬企業とも連携し、現在では800を超える医療機関・健康関連機関に導入され、大規模な臨床ネットワークを形成しています。さらに、複数の大手企業健康保険組合と協力し、デジタル慢性疾患管理ソリューションを従業員の健康管理に直接導入することで、地域社会との結びつきを一層強化しています。

こうした現地に根差した取り組みにより、シンクヘルス社は日本市場において確固たる基盤を築いています。

BE Health:創業初期からの伴走支援、そして国際展開へ

慢性疾患の管理には長期的な取り組みと臨床的な支援が不可欠であり、スタートアップにとっては大きな挑戦となります。鄧氏はこう振り返ります。「2013年当時、台湾のデジタルヘルス分野は、まだ発展途上にありました。BE Healthは、数少ないデジタル治療を支援する組織の一つであり、私たちと同じように困難な課題に挑んでいました。」

BE Healthは『病院 × ベンチャーキャピタル × アクセラレーター』の支援体制を強みに、スタートアップへの投資と臨床導入支援を両輪で展開しています。

シンクヘルス社への投資を決定した理由については、その技術の成熟度と臨床的な可能性が「患者に確かな価値をもたらし、病院に受け入れられること」という二重の基準を満たしていたためです。

同時に、BE Health は秀傳医療グループとの連携を通じて、シンクヘルス社の臨床現場での導入をさらに推進しました。

秀傳医療グループは、傘下にある低侵襲手術トレーニングセンター IRCAD Taiwan の国際的な医師交流および臨床検証における強みを活かし、シンクヘルス社に第一線からのフィードバックと日本の医師ネットワークを提供することで、信頼基盤の確立に貢献しました。

BE Health マネージングパートナーの陳彥諭氏は、次のように述べています。

「私たちは短期的なリターンの追求ではなく、長期的な伴走を重視しています。その先に、シンクヘルス社のようなスタートアップが患者に寄り添い、慢性疾患ケアの在り方を変革していく未来があります。」

東京拠点から、次なるシンクヘルスの物語を

BE Health 東京オフィスは、2025年10月2日に東京のGLOBAL LIFESCIENCE HUB にて正式に開設され、その記念イベントとして『Beyond Borders: Taiwan–Japan Medtech Innovation Night』を開催します。

BE Health マネージングパートナーの 陳彥諭氏 は次のように述べています。

「私たちは今後も、シンクヘルスのような成功事例をさらに生み出し、日本の医師や患者に貢献するとともに、アジア発のイノベーションと協働し、真に臨床ニーズに即したソリューションを設計してまいります。」

東京拠点の開設を契機に、シンクヘルス社の事例は単なる一つの成功例にとどまらず、国境を越えた医療イノベーションの出発点となり、より多くの患者に新たな価値を届けていくことを期待しています。

BE Healthについて

BE Healthは、メドテック分野におけるイノベーションの推進に注力しています。

当社には、「BE Accelerator」と「BE Health Ventures」という2つのビジネスモデルがあり、メドテック領域のスタートアップの開発から市場開拓まで包括的に支援しています。

「BE Accelerator」は台湾最大のメドテックスタートアップアクセラレーターであり、2018年の設立以来、台湾の3つの大手医療機関と連携し、約100名のメンターと共に150社以上のスタートアップへを指導してきました。また、総額200億ドルを超える資金調達を実現しました。

「BE Health Ventures」は、スタートアップへの投資を行い、持続可能な成長を支援しています。

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