アジアがんフォーラム、マレーシアNCD会議公式サイドイベント「Aging: Perspectives from the Land of the Rising Sun」公式報告書を発表
一般社団法人アジアがんフォーラムのプレスリリース
クアラルンプール発 2025年10月24日(現地時間) – 一般社団法人アジアがんフォーラム(Asia Cancer Forum、以下 ACF)は、2025年9月13日にマレーシア・クアラルンプールのテイラーズ大学で開催された非感染性疾患マレーシア会議(NCD Malaysia Conference 2025)の公式サイドイベント「Aging: Perspectives from the Land of the Rising Sun」に関する公式報告書をリリースしました。このイベントはACFとマレーシア対がん協会(National Cancer Society Malaysia、以下 NCSM)が共催し、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)の協賛により実現したものです。テーマは“From Challenge to Opportunity: Creating a Flourishing Aging Asia”(挑戦から機会へ:アジアの高齢化を繁栄につなげる)であり、日本とマレーシアが直面する高齢化社会とNCD(非感染性疾患)の課題を新たな機会へと転換することを目指した試みとなりました。
NCD Malaysia会議公式サイドイベントとして開催 – 本イベントはNCD Malaysia Conference 2025の公式サイドイベントとして位置づけられ、9月13日14時30分から16時30分までテイラーズ大学にて実施されました。サウンダリー・サマスンダラムNCSM会長(Dato’ Dr. Saunthari Somasundaram)と河原ノリエACF代表理事(Dr. Norie Kawahara)が基調講演に立ち、高齢社会におけるNCDの課題と展望、そして活力あるエイジング・アジアへの日本の取り組みについてそれぞれ講演しました。本サイドイベントは、日本とマレーシアの官民学および市民社会の幅広い関係者が一堂に会し、課題解決へのビジョンと経験を共有する場となりました。
「挑戦から機会へ」のテーマ:日馬が高齢化とNCD課題を共に克服 – “From Challenge to Opportunity: Creating a Flourishing Aging Asia”というテーマには、高齢化とNCDという共通課題に直面する日本とマレーシアが協力し合うことで、これらの課題を新たな機会へと昇華しようという願いが込められています。背景には、日本とマレーシアという医療制度も社会構造も異なる二国間が互いに学び合うことで、一方向的な支援ではなく真の共創関係を築けるとの信念があります。会議では、医療・介護体制やコミュニティ支援の分野で両国が培ってきた知見の相互活用を図り、高齢化時代における健康長寿社会づくりの可能性が議論されました。
東京大学「Cross-boundary Cancer Studies」を軸とした産官学市民連携 – 本イベントの企画・実現には、東京大学大学院の講義シリーズ「Cross-boundary Cancer Studies」が大きな役割を果たしました。東京大学で2011年からUICC-AROの後援により継続しているこの講義シリーズでは、地域に根ざしたがん対策とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)実現に向け、日本とマレーシアの協働モデルが探究されてきました。こうした学術的取り組みを通じて、行政・企業・学術機関・市民社会(産官学市民)それぞれの知見を結集し、がんという共有課題を軸に国境やセクターを超えた連携が深まったことが本イベントの開催につながっています。本講義に参加した学生たちは政策提言レポートを作成し、優秀な成果は本会議で表彰される機会が設けられました。これにより次世代のリーダーが国際会議の場で声を上げ、斬新なアイデアを提示するなど、日馬協働の裾野が次世代まで広がっています。
日本企業の社会的インパクト:BEAUTYプログラムによる予防医療モデル – イベントでは、日本企業による革新的ソリューション事例が紹介され、高齢化×NCD克服への具体策が示されました。中でも注目を集めたのが、「BEAUTY (Bringing Education And Understanding To You)」プログラムです。これはACFとNCSMが2022年に立ち上げた共同プロジェクトで、地元の理髪店や美容院を健康啓発の拠点とすることで地域住民のヘルスリテラシー向上とがん検診受診促進を図るコミュニティ密着型・デジタル活用の予防医療モデルです。本イベントでは、アステラス製薬、ヤクルト本社、住友商事、ディー・エヌ・エー(DeNA)などの日本企業がこのBEAUTYプログラム等を通じて連携して実践している健康リテラシー啓発や予防医療への貢献事例が共有されました。例えば、アステラス製薬は「BEAUTY for Sustainability: 予防医療を支える持続可能なケア」の取り組みを紹介し、ヤクルト本社は地域コミュニティでの信頼醸成を通じた健康づくり(「Sharing What’s Good」)、DeNAは日本のヘルスケアシステムにおける予防的健診の知見共有など、それぞれの視点で企業の社会的責任(CSR)と事業戦略を融合させた取り組みを報告しました。これらの事例は、高齢化社会における疾病予防と健康増進に企業が果たし得る役割の大きさを示すものであり、参加者からも大きな関心が寄せられました。
主要登壇者からの声:日馬協働への期待と展望 – 報告書では、イベントを主導した日本・マレーシア双方のキーパーソンによる発言も紹介されています。河原ノリエACF代表理事は「アジアの超高齢社会という未曾有の挑戦に対してこそ、国境やセクターを越えた知恵の結集が必要です。日本とマレーシアが互いの強みを持ち寄り、人を中心に据えたイノベーションを創出することで、高齢化の課題をアジアの新たな繁栄の機会へと転換できると信じています」とコメントし、産官学市民の協働による共創の重要性を強調しました。またサウンダリー・サマスンダラムNCSM会長は「本取組は、マレーシアと日本が手を携えて高齢化とNCDという共通課題に挑む画期的なモデルです。地域社会に根差した予防と啓発の活動を通じて、コミュニティ自らが健康長寿への道を切り拓いていくことを期待しています」と述べ、住民主体のヘルスリテラシー向上施策への期待を表明しました。さらに、四方敬之在マレーシア日本国大使からは「日本とマレーシアの連携は、1982年に発足した『ルック・イースト政策(Look East Policy)』のもとで築かれた強固な協力関係にその礎があります。今後は、相互理解と共創を重視する“Look at Each Other”の理念のもと、こうした戦略的協力をさらに深化・拡大していきたいと考えています。本セッションが、両国の信頼と協働をより一層強め、医療分野における革新的な知見とアイデアを共有する契機となることを期待しています」との祝辞が寄せられました。これらの言葉は、日馬協働による社会的インパクトへの確かな手応えと、更なる展開への意欲を示すものです。
次世代への継承:学生政策提言と優秀レポート表彰 – 本イベントでは、次世代リーダー育成の取り組みとして、東京大学の講義シリーズを通じて募られた東京大学と岐阜大学の大学院生の政策レポートの中から優秀作が選出され、表彰されました。医療アクセス格差の是正や地域包括ケア強化など、高齢化とNCD対策に関する斬新なアイデアが学生ならではの視点でまとめられました。主催者の一人は「次世代がこの課題に創意工夫で挑み、解決策を示してくれたことは非常に心強い。彼らこそ将来の変革の原動力」と語っており、今回のイベントが若い世代へのエンパワーメントにもつながったことが強調されています。
河原ノリエACF代表理事は、「本会議がアジア各国の政策立案者や企業・団体にとって有益な示唆となり、地域横断的な協力体制構築の加速につながれば幸いであります。またこの報告書を学びとして、東京大学におけるアジア・ウェルビーング研究及び、来期の学際講義にもつなげていきたい」と述べ、今後も産官学連携をしながら、アジアの高齢化とがん・NCD対策に向けたプラットフォーム作りと提言発信を続けていく考えです。
一般社団法人アジアがんフォーラム(ACF)について
アジアがんフォーラムは、がん制圧に向けた国際協力と知見共有を推進するために2004年に発足し、2011年より一般社団法人として活動しています。日本を含むアジア各国の研究者・医療者・政策立案者・市民らを結ぶプラットフォームとして、国際会議「アジアがんフォーラム」の開催や大学における教育プログラムの展開、コミュニティに根ざしたがん予防啓発プロジェクト(BEAUTYプロジェクト等)を実施してきました。産官学市民の垣根を越えたネットワークを構築し、「誰ひとり取り残さない」持続可能ながん医療の実現と、アジアにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に資することを使命としています。
本件に関するお問い合わせ先
一般社団法人アジアがんフォーラム(ACF)事務局
info@asiacancerforum.com