― 知見や成果はカロリミットシリーズなどの開発に応用 ―
株式会社ファンケルのプレスリリース
株式会社ファンケルは、「日本薬剤学会第40年会」において、当社の製剤開発に関連する4演題をポスター発表しました。より飲み込みやすく効果を実感できるサプリメント製品づくりや、お客様への製品の安定供給に向けた技術研究について新たな知見が得られましたのでお知らせします。
【発表演題の紹介】
1.サプリメント錠剤の飲み込みやすさを検討
お客様アンケート調査では、約7割のお客様が「飲み込みやすさ」を製品選びの重要な基準にしていることが分かりました(下左グラフ)。当社ではこれまでも小粒化や粒数の低減に取り組み、錠剤の「大きさ」や「粒数」が飲みにくさの要因になっていることを確認しています。今回はそれに続く要因として「形状」や「舌触り」の解明に取り組みました(下右グラフ)。
<形状について>
一般的な錠剤は上下がなだらかな曲面になっています。今回、この曲面の丸みの度合い(=曲率半径、以下Rと表記)を変えることで、飲みやすさがどう変わるかを評価しました。同じ重さの錠剤でも、Rを小さくすると見た目はより丸く、球体に近くなり、厚みはやや増えます。それでも、Rが小さい、いわゆるより丸みが強い錠剤の方が、総合的に「飲みやすい」という結果が得られました(下図)。
<舌触りについて>
錠剤の表面にコーティング膜を設けることで錠剤の苦みを軽減することは、一般的に用いられる手法として知られています。本研究では、このコーティング膜の厚さによって飲みやすさが変化するかどうかを確認しました。コーティング剤の錠剤重量に占める割合を0%から1.25%まで変化させて評価した結果、コーティング量が増えるほど飲みやすさが高まることを明らかにしました(下図)。
これらの知見は、当社の「プレミアムカロリミット」の開発に生かしてRの小さい錠剤形状を採用し、コーティング量も1.0%以上にすることで、飲みやすさを向上させています(下写真)。
2.酸性環境に対応したキトサン配合錠の錠剤設計
通常、サプリメントの錠剤は「崩壊試験」という試験で、水を使ってどれくらい早く錠剤が崩れるかを確認し、体でしっかりと働くように設計しています。今回の研究では、より実際に体の中での溶け方に近い形で評価を行うため、胃の中の環境を再現した酸性の液体(日本薬局方第1液※1)を使い、キトサン※2を含む錠剤の溶け方を調べました。
その結果、水の中では問題なく溶けるキトサン配合錠は、酸性の環境では表面にゲル層※3ができ、中の成分が溶けにくく、消化管の中で働きにくくなる可能性が分かりました。そこで、キトサンの加工方法や、酸性を打ち消す性質を持つ素材との組み合わせなど、処方上の工夫をしました。その結果、酸性の環境でも安定して崩壊する錠剤の設計に成功しました(下グラフ)。
これらの工夫は、当社の「カロリミットシリーズ」に採用し、錠剤が胃の中で崩壊して成分がスムーズに働く品質を実現しています。
3.製品の安定供給に向けた2つの技術研究
前述の演題のほか、製品の安定供給に向けた技術研究についても新たな知見が得られ、同じく発表しました。製品化までのスピードアップ、コスト削減、そして安定した製品品質の実現に貢献することが期待できる2つの技術です。
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「サプリメント製造における難打錠性成分の圧縮特性評価」
(錠剤の製造において発生する製造障害を事前予測する技術)
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「ソフトカプセルの製造性に関するレオメーターを用いた評価法の検討」
(ソフトカプセルの製造において発生する製造障害を事前予測する技術)
【担当者のコメント】
当社では、「どんなに優れた有効成分を配合しても、適切な製剤設計がなければ、お客様にその効果を実感していただくことはできない」という考えのもと、製造性・ユーザビリティ・吸収性といった多面的な視点から、製剤設計の最適化に取り組んでいます。今回の研究成果もその一環であり、こうした基礎的な検証と処方設計の積み重ねが、効果実感につながる高品質なサプリメント開発を支えています。
今後も、お客様の体の中で成分がしっかり働くことまで見据え、より実用的な品質評価を行うことで、さらに高品質な製品づくりを目指していきます。
【用語説明】
1) 日本薬局方第1液 : 日本薬局方に準拠した酸性の試験液で、胃内環境を模したpH 1.2の溶出試験用液。医薬品の溶出性評価に使われる。
2) キトサン : カニやエビなどの甲殻類に含まれるキチンを加工して得られる多糖類。
3) ゲル層 : 高分子成分が水分と反応してゼリー状や膜状に膨潤した層。溶出性や崩壊性に大きく影響する。