~発汗でシルクセリシン(保湿成分)を皮膚にデリバリーする、岐阜大学発ベンチャーのナノ多孔ファイバー~
FiberCraze株式会社のプレスリリース
FiberCraze株式会社(本社:岐阜市、以下ファイバークレーズ)は、同社の開発したナノ多孔ファイバーCraze-tex®にシルクセリシン(以下、セリシン)を内包し、着用時の汗によりセリシンが皮膚表面に徐放、移動することを実証しました。これは、明星大学、株式会社クリメイト(本社:岐阜県関市)、新潟県工業技術総合研究所と共同研究によるもので、成果は2025年11月15日「第89回日本皮膚科学会東京支部学術大会」にて発表しました。その要点をご紹介いたします。
※本リリースは研究結果に基づく技術的可能性の提示であり、医薬的効能を標榜するものではありません。
要約
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弱酸性人工汗液(pH5.6想定)でセリシンをオンデマンドに放出。日常着装用時に穏やかに機能することを想定。
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皮膚表面に残留したセリシン特有の赤外吸収バンド(1398cm⁻¹付近)を検出し、皮膚へ徐放・残留したセリシンを定量。
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貼布直後の相対指標「皮膚残留性比率」は、3.28(N=14)。
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成分を表面コーティング加工した生地に比べて内包量は4倍以上。“内に貯めて、少しずつ出す”設計で成分の徐放性制御が可能。
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セラミド、アミノ酸、抗酸化・抗炎症成分、メントール等の清涼成分など多成分への展開に対応予定。
研究の背景・目的
従来の「機能性テキスタイル」は、表面塗工やマイクロカプセルで有効成分を生地表面へ付与するため、初期バースト放出や洗濯耐久性の課題、そして皮膚へ本当にセリシン成分が移行したのかという定量根拠の不足が指摘されてきました。
ファイバークレーズが開発した独自のナノ多孔ファイバー「Craze-tex®」は、直径ナノ~サブミクロンの無数の孔(ナノポア)をもつ独自構造により、有効成分を繊維内部に“貯蔵”し、汗の浸入作用によるトリガーに穏やかに徐放させる設計が可能です。本研究の皮膚残留性試験法により衣服→皮膚への有効成分の徐放効果を分光学的なエビデンスで示すことを目的に行いました。
研究方法
上腕皮膚を整えた後、30mm角のCraze-tex®生地を酸性人工汗液(pH5.6、1000µL)で湿潤して2分間貼布しました。貼布直後から経時にて皮膚部位のATR-FTIRスペクトルを取得し、アミドI/II並びに水分を差引処理後、1398cm⁻¹付近のセリシン由来バンドを定量指標として評価しました。並行して、角層水分・皮膚温・皮膚pHの変化も短時間モニタリングしています。
結果の要点
渡邉幸夫教授の発表資料より抜粋
皮膚上でのセリシン同定:貼付直後から1398cm⁻¹バンドにセリシン特有のピークを検出。
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皮膚残留性比率:3.28(N=14)を算出し、衣服→ヒトの汗による皮膚への徐放と残留性比率を数値で裏付け。
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肌状態の短時間安全性:角層水分・皮膚温度・皮膚pHは大きな変化なし。ただ貼布5分後以降にpHの変動を注視。
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設計自由度:繊維の孔制御・後処理により保持量や放出プロファイルの調整が可能。
今後の展望
Craze-tex®は成分プラットフォームとして拡張可能です。
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成分ラインアップ:セラミド、アミノ酸、ヒアルロン酸誘導体、ビタミンE、アスタキサンチン、メントールなど油性/両親媒性の成分を中心に最適化。
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用途設計:就寝用(持続型)/デイリー(バランス型)/スポーツ(発汗応答型)の3系統で放出プロファイルを設計。
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実装試験:長期装用・洗濯耐久・動的摩擦・皮脂共存など実生活条件での検証を推進。
※本リリースは研究結果に基づく技術的可能性の提示であり、医薬的効能を標榜するものではありません。表示・訴求は各国規制に準拠して運用します。
発表概要
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学会名:第89回日本皮膚科学会 東京支部学術大会
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発表日:2025年11月15日
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演題:新素材Craze-tex®生地のセリシン徐放による皮膚残留性に関する研究
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共同研究:FiberCraze株式会社/明星大学/株式会社クリメイト
協力:新潟県工業技術総合研究所
■ファイバークレーズについて
「世界が誇る素材を創る」をミッションに掲げる岐阜大学発スタートアップです。学術研究から生まれたケミカルフリー技術で、繊維・フィルムに後加工でナノレベルの”あな”を空ける多孔化加工をコアにしています。既存のプロセスにナノテクノロジーを組み込み、感染症を防ぐ防虫素材や環境負荷の低い素材を開発し、世界の社会課題を解決していきます。ナノ多孔ファイバーCraze-tex®の可能性を追求し、ファッション業界から医療、美容、高機能性衣類、機能性部品、産業資材など、さまざまな領域に向けて製品化・ブランド展開を進め、生活や産業の発展を担うインフラとなる素材の確立を目指します。
■ 会社情報
FiberCraze株式会社
所在地:岐阜県岐阜市柳戸1-1 国立大学法人 東海国立大学機構 岐阜大学 学術研究・産学官連携推進本部内
設立:2021年9月
代表者:代表取締役社長 長曽我部 竣也
HP:https://www.fibercraze.com/ja
本件に関するお問い合わせ先
FiberCraze株式会社 事業開発本部
E-mail:info@fibercraze.com
TEL:058-293-3357
詳細スライド・技術資料の提供、評価試験・共同研究の打ち合わせが可能です。
ファイバークレーズでは、機能性繊維開発、成分評価等のご相談を随時受け付けています。材料設計→成分含有→機能評価までワンストップでご提案いたします。