クリルオイルを“分子種”で捉え直す:「第11回クリルオイル研究会 講演会」開催レポート(2025年11月)

― 製剤設計から、睡眠、ヘルススパン、腸内細菌まで、クリルオイル研究の最前線を紹介 —

クリルオイル研究会のプレスリリース

● クリルオイル研究会は、2025年11月28日、東京ビッグサイトにて「第11回 クリルオイル研究会 講演会」を開催しました。テーマは「クリルオイルの新機能、有用性の最前線 ~ホスファチジルコリンやリン脂質の観点から~」です。本講演会の要点は次の3点です。

リン脂質・ホスファチジルコリン(PC)という“分子種”の視点から、吸収・体内動態・機能性を整理したこと

製剤設計、脂質代謝×睡眠、ヘルススパン(健康寿命)、腸内細菌代謝物研究まで、領域横断で最新知見を共有したこと

研究と社会実装をつなぐ論点を俯瞰し、今後の検証課題も含めて議論したこと

● 今回の講演会は、クリルオイルを「オメガ3素材」として一括りにするのではなく、“素材としての魅力”を基礎から応用(製剤設計・健康課題)まで一気通貫で捉え直す機会となりました。

■ 開催概要

【名 称】第11回 クリルオイル研究会 講演会

【テーマ】クリルオイルの新機能、有用性の最前線 ~ホスファチジルコリンやリン脂質の観点から~

【日 時】2025年11月28日(金)13:00–17:00

【会 場】東京ビッグサイト(リアル)/オンライン(配信)

【主 催】クリルオイル研究会

【構 成】会長挨拶+講演4題+閉会挨拶

【参加者】約50名(研究者/企業関係者/その他)

■ 講演会の総括

本講演会では、クリルオイルをドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を含む「オメガ3素材」として一括りにするのではなく、リン脂質やホスファチジルコリン(PC)といった“分子種(脂質の形)”の観点から、基礎から応用までの最新知見を整理しました。

まず、尾上教授(静岡県立大学)による、クリルオイルの特性を活かした高吸収性の製剤設計(届け方)の議論からスタートし、続いて大久保教授(仙台白百合女子大学)が、PC結合型n-3という“脂質の形”に着目して、脂質代謝から睡眠までをつなぐ研究の捉え方を提示しました。

さらに、Line Johnsen氏(Aker BioMarine)からは、ヘルススパン(健康寿命)の観点で、筋量維持や炎症指標などに関する臨床研究の最新動向が紹介され、最後に内藤教授(京都府立医科大学)が、腸内細菌代謝物研究を含む生活習慣全体の視点から、食品機能性理解の広がりと今後の論点を整理しました。

これら4講演を通じて、領域を横断して知見をつなぎ直し、研究と社会実装を見据えた論点を参加者の皆さまと共有できたことが、本講演会の大きな成果となりました。

■ 各発表サマリー(当日プログラム順)

1. 「クリルオイルを用いた高吸収性製剤設計」

  静岡県立大学 薬学部 薬剤学分野 教授 尾上 誠良

クリルオイルはリン脂質を多く含み、消化管内で自己乳化しやすい特性から、難水溶性成分の分散性・溶出性を高める素材として注目されています。本講演では、脂溶性成分をナノサイズで安定分散させ、経口吸収性を向上させる自己乳化能を活用した製剤設計が紹介されました。

また、ラット試験において、リン脂質に結合したEPAの体内移行が高まり、脂質代謝指標にも好ましい変化が示唆されました。さらに、ショウガエキスやMCT×セサミンの組み合わせを例に、形態変化に伴う保存安定性や溶出性、体内利用性の改善と機能性評価の結果が報告され、健康食品の製剤技術としての可能性が議論されました。

2. 「n-3系脂肪酸結合型ホスファチジルコリンの機能性について ~脂質代謝から睡眠まで~」

  仙台白百合女子大学 人間学部健康栄養学科 教授 大久保 剛

水産由来油脂は「油」として一括りに捉えがちですが、リン脂質は親水部と親油部の両方を併せ持ち、分子種の違いが体内動態や作用に影響する可能性があります。講演では、同じn-3系脂肪酸であるDHAやEPAがPCに結合した形態に着目し、トリグリセリド型のDHA、EPAとの相違が整理されました。

動物試験の知見として、PC-DHA摂取が内臓脂肪や肝臓脂質、血清脂質や血糖関連指標に与える影響、脂肪酸合成系の抑制と分解系の亢進といった作用機序の示唆が概説されました。また、PCの構成成分であるコリンの栄養学的意義と摂取状況にも触れたうえで、ヒト試験の例としてPC-DHA摂取と睡眠指標(レム睡眠や質問票指標)との関連が報告された研究が紹介され、脂質分子種の観点から“脂質代謝—脳・睡眠”をつなぐ可能性が議論されました。

3. 「Krill Oil: a natural complex of Omega-3, Phospholipids, Choline, and Astaxanthin – recent research insights」(逐語通訳)

  Aker BioMarine Human Ingredients AS(ノルウェー)
  Senior Vice President, Human Health Ingredients R&D
  Line Johnsen(リナ・ジョンソン)

クリルオイルは、オメガ3脂肪酸(EPA/DHA)に加えて、リン脂質、コリン、アスタキサンチンを含む“天然の複合体”であり、このリン脂質結合型オメガ3が細胞膜への取り込みや分配に関与する可能性が議論されています。講演では、臨床試験から得られたダイエット(減量)時の除脂肪量(筋肉量)維持の知見を中心に、最近の研究が紹介されました。

具体的には、過体重・肥満者を対象に隔日断食を実施し、クリルオイル4g/日を摂取した群で、プラセボ群に比べて除脂肪量(筋肉量)の低下が小さく、握力や椅子立ち上がりテスト等の機能指標、収縮期血圧、炎症関連指標(TNF-α、CRP)、オメガ3指数などに良好な結果がみられた報告が紹介されました。また、高齢者を対象とした介入試験における筋機能・筋肉量指標への影響や、健常者試験での皮膚バリア機能(TEWL)、保湿・弾力指標、関連分子メカニズムの示唆など複数領域の研究が概説され、今後の課題として対象集団や食事・運動条件の違い、長期アウトカムの検証の重要性が提示されました。

4. 「腸内細菌代謝物研究の最前線:食品機能性の理解」

  京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学 教授 内藤 裕二

日本は長寿国である一方、健康寿命の延伸や高齢期のQOL向上が課題となっています。講演では、ヘルシーエイジングを目指す栄養学を、栄養素の充足にとどめず、食を介した社会的つながり(絆:Kizuna)を健康資源として捉え直す視点も含めて整理し、共食やコミュニケーションの価値を科学的に捉える重要性が示されました。

また、地中海食、DASH食、MIND食、健康的な植物ベース食など、複数の食事パターンが健康な老化と関連するという大規模追跡研究の報告が紹介され、高齢期の筋量維持に向けたたんぱく質設計の考え方が共有されました。運動についても、日常の歩行(1日7,000歩程度)に加え、筋力強化や座位時間の短縮を組み合わせる重要性が示されました。さらに腸内細菌代謝物研究が、食品機能性の理解や個別化栄養の可能性を広げる点が概説され、研究と社会実装をつなぐ視点の必要性が提言されました。

■ 関係者コメント

クリルオイル研究会 会長 矢澤 一良

(早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所 ヘルスフード科学部門 部門長 / 農学博士)

「今回の講演会は、クリルオイルを『オメガ3素材』として一括りにするのではなく、リン脂質やホスファチジルコリン(PC)といった“分子種”の違いから、その魅力と可能性を捉え直す機会となりました。クリルオイルはEPA・DHAに加え、こうした分子形の特徴を手がかりに、吸収・体内動態、さらには「どう働くのか」という理解をより深めていける素材だと考えています。

本講演会では、製剤設計から睡眠、筋量維持や炎症、腸内細菌代謝物研究まで、研究領域を横断して知見を整理しました。クリルオイル研究会は今後も、研究知見の収集・整理と情報交換を継続し、研究と産業を橋渡しするハブとして、社会実装につながる議論と発信を一層強化してまいります。」

■ 本件に関するお問い合わせ先

クリルオイルに関する情報提供や、クリルオイルを活用した製品開発・共同研究にご関心のある方は、下記までお気軽にお問い合わせください。

クリルオイル研究会

事務局 広報担当 藤作(ふじさく)

Email: kenichi.fujisaku@sunsho.co.jp

■ クリルオイルについて

クリルオイル(オキアミ油)は、南極海に生息するナンキョクオキアミ由来の海洋性油脂であり、その健康機能が注目を集めています。

オメガ3系脂肪酸(EPA/DHA)をリン脂質型で豊富に含み、さらに天然の抗酸化成分アスタキサンチンを有することが特長です。

現在はサプリメント原料として世界的に普及しており、心血管・代謝・脳機能・筋肉・女性の健康など、多様な領域での有用性が研究されています。これまでの研究では、生体に対するさまざまな機能性が報告されている一方で、基礎・臨床・応用の各研究はまだ十分とはいえず、今後さらなる科学的検証と応用展開が期待されています。

■ クリルオイル研究会について

クリルオイル研究会は、クリルオイルの科学的エビデンスを整理し、健康と予防医学の発展に寄与することを目的に、2013年に設立された産学連携組織です。

早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構をはじめ、国内外の大学・企業が参画し、基礎から臨床まで多角的な研究を推進。共同研究を通じて、国際的に評価される成果の創出と社会実装を目指しています。

クリルオイルの正しい理解と応用拡大を進めるため、研究者・企業からの入会や共同研究の相談も受け付けています。

  • 名 称: クリルオイル研究会(Krill Association)

  • 所在地: 東京都品川区大井1-47-1 NTビル7階

  • 設 立: 2013年12月

  • 公式HP: https://www.krill-oil.jp/

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