睡眠不足は“働き盛り世代”の心房細動リスクを高める

国立大学法人熊本大学のプレスリリース

【本研究成果のポイント】

心房細動と睡眠時間の関係は、働き盛り世代(50歳代)と退職後世代(70歳代)で異なることが分かりました。長時間心電計に内蔵された加速度センサーを用い、自己申告に頼らない正確な睡眠時間評価を行いました。50歳代では睡眠時間が長いほど心房細動のリスクが低下する可能性が示唆されましたが、70歳代では明確な関連は認められませんでした。

【概要説明】

熊本大学(熊本県熊本市、小川久雄学長)循環器内科の星山禎特任講師、辻田賢一教授、医療情報経営企画部の石井正将講師、小川久雄学長、および国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、大津欣也理事長)心臓血管内科の井上優子特任部長、中島健三郎医師、草野研吾副院長、健診部の小久保喜弘医長 脳血管内科の古賀政利部長、研究所細胞生物学部の望月直樹部長、福岡山王病院(福岡県福岡市、横井宏佳病院長)ハートリズムセンターの熊谷浩一郎センター長、香川大学(香川県高松市、上田夏生学長)循環器内科野間貴久准教授らの研究チームは、不整脈の一種である心房細動と睡眠時間の関係が、現役世代(50 歳代)と退職後世代(70 歳代)で異なることを明らかにしました。
これまで睡眠時間の研究は自己申告による評価が主流で、「実際の睡眠時間とのずれ」や「曜日によるばらつき」が課題とされてきました。本研究では、JSR社(現在オムロンヘルスケア社へ承継)製の長時間心電計に内蔵された加速度センサーを用いて、日常生活の中での睡眠時間を客観的かつ連続的に評価しました。
その結果、50 歳代では睡眠時間が長いほど心房細動のリスクが低い一方、70歳代では睡眠時間と心房細動の明確な関連は認められませんでした。このことから、特に働き盛り世代では、十分な睡眠を確保することが心房細動予防につながる可能性が示されました。本研究成果は、2025年12月24日に医学雑誌「Circulation Reports」オンライン版に掲載されました。

(説明)

[背景]

心房細動*1 は、生活習慣と深く関わることが知られている不整脈です。これまで、睡眠時間との関連も指摘されてきましたが、仕事や生活リズムが大きく異なる現役世代と退職後世代で同じ影響があるのかは明らかではありませんでした。
[研究の内容]本研究では、1~2 週間にわたり心電図を連続記録できる長時間心電計*2を使用しました。この装置には加速度センサーが内蔵されており、体の動きから実際の睡眠時間を推定することが可能です。このデータを用いて、50 歳代(現役世代)と70 歳代(退職後世代)、それぞれについて、睡眠時間と心房細動の関係を詳しく解析しました。

 [成果]〇 50 歳代の平均睡眠時間は、70 歳代より有意に短いことが分かりました。
〇 現役世代の50 歳代では、睡眠時間が長い人ほど心房細動のリスクが低下していました。
〇 一方、退職後世代の70 歳代では睡眠時間と心房細動リスクとの明確な関係は認められませんでした。
これらの結果から、睡眠不足が特に現役世代において心房細動のリスク要因となる可能性が示されました。

[研究の内容]

熊本大学病院循環器内科に入院し,心臓カテーテル検査が施行された患者771名 (抗凝固薬使用:169名 / 抗凝固薬未使用:593名)を対象としました。

組織因子 (TF: Tissue factor※4) 経路とFⅧa/FⅨa経路※5のそれぞれから生成される初期トロンビンを独立して測定しました。

 

[展開]

本研究は、働き盛り世代における「睡眠」の重要性を医学的に裏付ける結果です。仕事や生活の忙しさから睡眠時間が短くなりがちな現役世代において、適切な睡眠時間を確保することが、心房細動の予防につながる可能性が期待されます。
今後は、睡眠の質や勤務形態なども含めた、より実践的な予防戦略の確立が望まれます。

 

[用語解説]

*1心房細動:心臓のリズムが乱れる不整脈の一種で、臨床現場で最も多くみられます。脳梗塞や心不全など重篤な合併症を引き起こすことがあり、生活習慣との関係も指摘されています。

*2長時間心電計:1~2 週間にわたり心電図を記録できる装置。シール状で体に貼り付けて使用し、日常生活中の心臓の状態を評価できます。

 

(論文情報)

論文名:From Working to Retirement-Age—How Sleep Duration Is Related to Atrial Fibrillation Using 1-Week Holter-lectrocardiogram With Accelerometry—
著者:Tadashi Hoshiyama, Kenichi Tsujita, Yuko Inoue, Masanobu Ishii,Koichiro Kumagai, Takahisa Noma, Kenzaburo Nakajima, Yoshihiro Kokubo,Masatoshi Koga, Naoki Mochizuki, Hisao Ogawa, Kengo Kusano.
掲載誌:Circulation Reports
DOI:10.1253/circrep.CR-25-0310
URL:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/circrep/advpub/0/_contents

お問い合わせ

熊本大学大学院生命科学研究部
循環器内科
担当:特任講師 星山 禎
電話:096-373-5175
e-mail:tadashi@kumamoto-u.ac.jp

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