複雑な凹凸のすみずみまで行きわたり、うるおいがとどまり続ける化粧水の実現へ
株式会社ポーラ・オルビスホールディングスのプレスリリース
ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、シワのある肌に特有の凹凸構造に着目し、化粧水のうるおいを肌全体に行きわたらせ、安定してとどめる「凹凸フィットベール技術」を開発しました。さらっとした化粧水は凹凸の底に溜まりやすく、とろみのある化粧水は凹凸内部に入り込みにくいという課題に対し、自社独自に確立した肌なじみが良いナノエマルション技術等を応用することで、シワ溝の側面にまで密着する“うるおいベール”の形成を目指しました。
シワの凹凸は“保湿の死角”になりやすい
シワ形成の一因として、乾燥により皮膚の柔軟性が失われることが知られており、シワのケアにおいて保湿は重要な要素の一つです。一方で、高保湿タイプの化粧水を使用していても、「シワが気になる部位では、乾燥感が残る」と感じるケースも少なくありません。背景には、シワのある肌では表面の凹凸が複雑に入り組み、化粧水が「広がりにくい・入り込みにくい・とどまりにくい」という特性が挙げられます。粘性が低いさらっとした化粧水は、塗布後すぐに凹凸の底へ流れ落ちるため、肌表面全体に均一に広がりにくく、シワ溝の底に溜まりやすい(=側面にとどまりにくい)など、部分的な“うるおいの抜け”が生じやすくなります。一方、とろみのある化粧水は肌表面では広がりやすいものの、凹凸の内部にまでは入り込みにくいという課題があります(図1)。
凹凸のすみずみまで届けるための処方設計
そこで本研究では、シワのある肌の複雑な凹凸にも化粧水がすみずみまで行きわたり、うるおいがとどまり続ける「凹凸フィットベール技術」の実現を目指し、とろみのある化粧水をベースにしながら表面での広がりやすさ・凹凸への入り込みやすさ・側面への密着が両立する処方設計に取り組みました。
ナノエマルション×高分子で凹凸に入り込み側面まで密着
本技術では、油剤を微細化したナノエマルション技術(補足資料1)を搭載することで肌なじみを高め、とろみがありながらも凹凸の奥まで入り込む設計としました。さらに、親油基(※1)を持つ高分子を組み合わせることで、シワ溝の側面にも密着し、うるおいのベールを保持する構成としています(図2)。これにより、従来は凹凸のある部位で生じやすかった保湿の偏りに対し、化粧水をまんべんなく行きわたらせ、うるおいをとどめることが期待されます。
※1 親油基: 油になじみやすい部分
凹凸形状に「広がる・入り込む・密着する」挙動を確認
モデル素材を用いた検証の結果、「凹凸フィットベール技術」を組み込んだ化粧水は、表面での広がりに加えて、凹凸の内部に入り込み、側面にも密着することが確認されました(補足資料2)。ポーラ化成工業は本技術を、シワのある肌の保湿課題に向けた処方設計の選択肢として、今後の研究開発に活用していきます。
【補足資料1】 ナノエマルションについて
ナノエマルションとは、20~200nm程度の微細な粒子径をもつエマルションのことです。水系処方の中に油剤を微細に分散させることで、化粧水らしいみずみずしい感触を保ちながら、油剤由来のエモリエント効果(肌をやわらかく整え、しっとり感を与える効果)や、機能性油剤を角層へ届けやすくする働きなどが期待できます。そのため、水溶性の保湿剤を主体とする化粧水と比べて、高いうるおい感や、肌のふっくら感、なめらかな手触りといった実感価値を設計しやすい技術として活用されます。
一方で、ナノエマルションは製法によって状態が大きく変わることが知られています。同一組成であっても、作製条件の違いにより安定性や粒子状態が変化します(図3)。本研究には、これまでポーラ化成で確立した「界面活性剤の溶存状態をコントロールする特殊なナノエマルション製法(※2)」を応用しました。」
※2 「油分を極小サイズ化 水への安定配合に成功 特殊なナノエマルション製法の確立で機能性油剤の浸透性アップ」(2024年3月13日発行) https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20240313_2.pdf
【補足資料2】 ナノエマルション×高分子による肌なじみ・凹凸フィット効果
ナノエマルションの配合による肌なじみ効果を評価するため、肌なじみの指標として人工皮革に滴下した際の接触角を測定し、なじみやすさが向上したことが確認できました(図4)。
また、凹凸へのフィットを溝側面モデルおよび微細凹凸モデルで評価しました。その結果、ナノエマルションと親油基をもつ高分子を組み合わせた凹凸フィットベール技術の化粧水は、側面(勾配面)へ密着しながら下方まで到達すること(図5)、シワのある肌に見立てた凹凸内部へと入り込みとどまることが確認されました(図6)。これらの結果から、本組み合わせは凹凸形状に対して「広がる・入り込む・密着してとどまる」挙動を示すことが示唆されます。